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こういうのでいいんですよ、こういうので

唐突に始まる食レポ回

だがそれがいい

 

 社員寮スペースにはまだまだ部屋が連なっております。


 変わり映えのしない殺風景な廊下など見ているだけではつまらないものでして、どなたかのお部屋に〝突撃! 隣の松茸濃厚チーズ和えご飯!〟でもしない限り進むだけ無駄な気もいたします。


 ここはお一つ、目的を持って進むことにいたしましょう。


 小腹が空いたとは思いましたが、飢えを満たすには松茸胞子をいただく以外には食堂に出るほかありません。


 きっと今頃は外回り夜勤組の方が遅い夕食を召し上がっている頃でしょうし、私もご相伴にあずからせていただきましょう。


 欲望に忠実な私の腹の虫がまだまだかと唸りをあげてしまいます。


 ……正直な話、今日は夕食は勿論のことその後の夜食もしっかりと頂いております。


 今日はこれで数えて3度目の夕餉ですが気にいたしません。


 この身体、ありがたいことに滅多なことをしない限り体型が変わらないのです。


 暴飲暴食に昼夜逆転生活をかけて睡眠不足で割ったとしても、相も変わらず健康体でいられるのは普通にありがたいですし、ちょっと食べ過ぎたとしても毎日の運動でエネルギーを消費しているのですから無問題です。うふふふふふ。



 急ぎ足で廊下を駆け抜けると、薄いレース生地のネグリジェでは風をダイレクトに感じてしまいます。


 少し肌寒いですわね。温かいものをいただきましょう。



 曲がり角を抜け、開けたスペースに出ました。

 向かいにある、今の時代にはやけに古風な暖簾戸をくぐると、ここが食堂エリアとなります。


 社員食堂では、結社に所属する社員は誰であっても皆無料で食事することができます。


 敬愛するご主人様の粋な計らいなのでございます。


 聞いたところによると、娑婆の企業は自社の社食であっても等価か。せいぜい割引が効くくらいのサービスしか無いところが多いらしいですわね。


 ふっふん、貧乏人どもめ。ザマァごらんあそばせですわ。



 大部屋に入った途端、感じたのは鼻いっぱいに広がる香ばしい香りでした。そこに混ざって一日中働いたオスくさい汗の匂いも漂っております。


 誰一人として口を開かない静かな空間がより感覚を研ぎ澄ませて、もう耐えられそうにありません。


 ダブルの匂いが私の脳と鼻腔を適度に刺激いたしますの。


 さきほど嗅いだ栗の花効果も相成って一瞬ムラりと心が揺れましたが、この食堂まで来てしまってはまださすがに食欲の方が優っています。


 壁にかけられたメニュー表を確認いたします。

 今日の献立はですね……ふぅむ。なるほど。


 デンと真ん中に鎮座されたハンバーグに、付け合わせは目玉焼きとポテトフライ、そしてこれは……カレー風味のスパゲティですか。更には白ご飯と汁物までもが付いております。


 ほー、いいじゃないですか。

 こういうのでいいんですよ、こういうので。


 なんとも食欲を唆る庶民的なセットで夜食にピッタリです。


 配膳の列に並び、受付のムカデ怪人さんから料理を受けとります。手元にまでくるとより一層美味しい香りが際立ちます。


 早く食べたいのです。近くの席に付いて早速いただくことにしましょう。



「あの、お隣よろしくて?」


「……ん、ああ、構わないよ」


「ありがとうございます」


 私は既に食事をしていらしたカマキリ怪人さんの横に腰掛けます。


 指に該当するものがない彼ですが、その鎌で器用にナイフとフォークを掴んで召し上がっていらっしゃいました。


 あまり喋りたい気分でもないのでしょうか。

 一言お返事をいただいただけで、また黙々と食事にお戻りになられました。


 そうですわよね。美味しいモノが目の前にあったら、周りなんか気にも留めずに集中したいですものね。全面的に同意させていただきますの。



「……いただきますの」


 私も一人手を合わせたのち、彼に習ってメインディッシュのハンバーグにナイフを入れてみます。


 ほんのりと湯気を立てるその身は、実にふっくらとしていて少しもパサついた感じがなく、切れ目を入れた瞬間に肉汁がどっと溢れ出てきます。


 舌に乗せた瞬間、感じるのは肉の旨味と、ちょっぴりかつ絶妙な塩気具合。ケチャップソースの焦げ目の香ばしさが相まって絶妙なハーモニーを奏でております。


 ああ。これですわ。求めていた欲求は。

 今なら静まり返った食堂の理由が分かります。


 騒がしいのもよろしいのですが、集中したいときはいつだってヒトは黙りこくってしまうものです。


 モノを食べる時はですね、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなきゃあダメなんですよ。


 独りで、静かで、豊かで……。


 私も隣のカマキリ怪人さんのように、ただ静かに食を進めさせていただきました。


 思っていたよりもペースは早く、いつの間にかプレートの上は綺麗さっぱり胃に収まってしまっておりましたの。



「はぁ〜、ごちそうさまでした」


 勿論のこと、大満足です。


 ネグリジェの内側でぷっくりと膨れたお腹がそれを(つぶさ)に物語っています。あらやだ、このお腹、中にたくさん出していただいたときみたいでちょっとやらしい。


 さきほどの茜の姿が脳裏に横切ります。


 ……ぅおっほん。


 たった今独りやら静かやらがイイとは言いましたが、こんな男だらけのオスくさい空間の中で呼吸をしていては、どうしてもそれらを意識せずにはいられません。


 また同じく、ただご飯を食べるだけではそっち(・・・)の欲が解消できるわけもございませんし。


 目の前の食事というタスクから意識が離れ、思考に余裕ができればできてしまうほど、周囲に目と意識がいってしまうのも当然なのでございます。



 と、そのときでございました。



「……嬢ちゃん、いい食べっぷりだったな」


「あら、見ていらしたんですか?」


 膨れたお腹を撫でていると、横にいたカマキリ怪人さんがお声をかけてくださったのです。



「ああ、俺たちの目は左右もよく見えるからな。それより……この後は暇か?」



 あらあら? このご質問は……。


 私は怪人さんに流し目を向けさせていただきました。



「ええ、何も無ければ自室に戻るつもりでしたが。用ができれば、そちらにと」


 食欲が満たされた今、今度はお次の欲求に身を任せるだけなのです。



「フッ。嬢ちゃんさえ嫌じゃなかったらなんだが、この後……どうだ?」


 いやぁ、さっきまであんなにクールだったカマキリ怪人さんでしたのに。食べ終わった直後にまったく、コレですか。



「うふふ、そうですわねぇ……♡」


 とはいえ正直なお話、私も彼も似たような者同士なのです。


 冷静になって考えてみれば、怪人だらけの男くさい空間に、こんな薄着の美少女が独り出歩いている状況の方が不自然と言えますでしょう?


 そしてまた、そんな美味しい状況を弊社の怪人の皆様がお見過ごしになるわけもなく、むしろこのように話が進む方が自然の摂理なのでございます。


 人間、食欲満たせば何とやら、とは小耳に挟んだことがありますが、ご主人様にご調整いただいたこの身体には、世の常識など少しも当てはまりませんゆえに。


 上の食欲が満たされたとなれば、今度はまた別の欲が出てきてしまうというのが罪なオンナの(さが)なのです。


 ふふ、うふふふ。少しも期待していなかったかと問われたらもちろん嘘になってしまいますの。


 ですから、結論としてはたったのお一つ。

 お腹いっぱい食べた後では、私がデザートになってしまうわけで。



「うふふ、どうか満足させてくださいまし♡」


 さすがにこの孤独の空間では致せないでしょうから、行為に及ぶとしたらカマキリ怪人さんのお部屋でしょうか。



 持ち帰り! そういうのもあるんです。



 自由に生きる、〝元〟魔法少女の私の。

 勝手気ままで自堕落すぎるこの生活。


 己の欲望に素直に生きるため。

 つまらない人生にはサヨナラを告げました。


 別に今更気にいたしませんの。

 もう堕ちるとこまで堕ちているのですから。


 うふふ、今晩はいい夢見れそうですわね。

 多分朝まで寝かせてはくれないでしょうけれどもっ。

 

  

 

ちなみにカマキリ怪人さんのお部屋での様子は

一切書きませんのであしからず(*´꒳`*)


でも、どんなプレイするんだろう……

少しでも動いたらその身に傷が入るぞと

ギラりと光る鎌で脅されているのに

ダメ、そんなっ、じっとしてなんかいられない

と必死に身を捩り

やがて淡い感覚では満足できず

結局は恐怖よりも快楽を優先してしまい

挙げ句の果てには痛みも忘れ

血と涙を流しながら涎を垂れ流してしまうような……

そんな内容なんでしょうかねぇ

皆様のご想像におまかせします(笑


次ページは全く別の日の朝から始まります。

というよりやっと本筋がスタートなのかな?

引き続きどうぞお楽しみくださいっ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公が性に奔放とは…最高すぎる….
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