317 なかーま
前回のあらすじ!
魔王「君たちは仲間だったんだよ!」
(; ・`д・´) ナ、ナンダッテー !! (`・д´・ (`・д´・ ;)
仲間とは?
苗字の一種です。
うん。間違っちゃいないけど、この場合の意味じゃないな。
仲間とは?
同じことをする間柄。
同じ地位、職業の間柄。
同じ種類の同類。
それぞれちょっとずつ異なるけど、大体その意味は似通っている。
つまり、並ぶものということだ。
私たちは並んでいるのだろうか?
ぶっちゃけ、戦力という意味では並んでいない。
私が飛びぬけてて、他ははるか下にいる。
そういう意味では仲間とは言い難い。
けど、同じものを志すという意味では、確かに私たちは並んでいると言える。
そうなると、ホントに私たちって仲間だったのか。
なんということでしょう。
前世からずっとボッチだと思っていた私に、まさか既に仲間ができていたとは!
えーと。
ええーと?
仲間ってどうやって接すればいいのん?
教えて偉い人!
「白ちゃんがフリーズして帰ってこない。ダメだこりゃ。白ちゃんに友情の概念は早すぎたんだ。努力と勝利は重ねまくってるはずなんだけどなあ」
「あの?」
「ラースくん。白ちゃんはこう見えて情緒はまだまだ未発達なお子様なんだよ。見た目と雰囲気に騙されちゃいけない。白ちゃんが理不尽なことしてくる時は、大抵自分に都合の悪いことを暴力で誤魔化そうとしてるだけだから。ね? そう聞くとお子様っしょ?」
「は、はあ」
「だからこれはダメだって思った時は、意見を言う感じじゃなくて、叱る感じで接しなきゃ。そうでないといつまで経っても改善はされないと思うな」
「叱るんですか? 僕が?」
「ソフィアちゃんはあれだし、君だけが頼りだ。頑張りたまえ」
「ちょっと! あれって何よあれって!?」
なんか騒がしいけど、今はなかーまについて必死に考察してるところなんだから静かにしてほしい。
えーと、私が知ってる仲間は、ゲームのおともくらいだな!
そうか、おともみたいに気が向いたら愛でて、イラっとしたら蹴飛ばせばいいんだな!
それならばと吸血っ子の頭でも撫でて愛でてやろうかと思ったけど、なんかミノムシ状態でギャーギャー騒いでる姿を見たらイラっとしたので蹴っておいた。
「なんで今蹴られたの!? ねえ! なんで!?」
うるさい。
仲間とはそういうものでしょ?
「なんか白ちゃんの中で決定的に間違った認識が確立した気がするけど、まあいいや」
「アリエルさん、そこで投げ出さないでください」
「そんなことより」
「そんなことより!?」
魔王と鬼くんがコントみたいなやり取りをしている。
けど、その片方、魔王のほうは真剣な顔をしている。
ホントに重要な話があるみたいだ。
「白ちゃん、これ見てどう思う?」
魔王はモニターを顎で示しながら聞いてきた。
その真剣な表情で、鬼くんや吸血っ子も真面目な話だとわかったらしい。
気を引き締めて視線をモニターに向ける。
……吸血っ子は未だミノムシ状態のままだけど。
「これのどこが問題なんです?」
しばらくモニターに映された文章を目で追っていた鬼くんだけど、魔王が何を問題視しているのかがわからなかったらしい。
吸血っ子も無駄にプライドが高いせいかわからないと言わないけど、その顔を見る限りわかってなさそうだ。
「問題大ありだよ」
魔王は困惑したようにその文面を眺めている。
そこに書かれていたのは、ポティマスの日記みたいなものだった。
あいつ、まめな性格だったみたいで、一日も欠かさずその日の出来事を日記にして綴っていたらしい。
まあ、事務的にその日あった出来事を端的に記してるだけだから、日記というのか微妙なところな気もするけど。
感想とかあんまないし。
ところどころ研究の所感みたいな感じで書かれてたりするけど、それもごくまれ。
全体的に書き手の感情が伝わってこないから、日記っぽくないのかも。
ただし、魔王が表示している部分は、珍しくポティマスの感情が見える文面になっていた。
そこに含まれるのは、焦り。
そして疑問。
〈突如としてMAエネルギーの総量が大幅に低下した。原因は不明。こちらの機器で同時期に観測した次元震となんらかの関わりがあるだろうが、現時点では何とも言えない。明らかな異常事態だ。このような事例はシステム稼働後からこれまで一度もない。システムに重大な欠陥が発生したのか? この世界にいても安全なのか? 不明だ。ギュリエディストディエスにこの星を離れることを禁じられているが、脱出の準備はしておいたほうがいいかもしれん〉
うん。
あれだ。
例の先々代勇者と先代魔王がやらかした事件。
次元魔法使ってなんか干渉しようとして失敗し、日本の教室が爆発したやつ。
私たち転生者がこの世界に転生するきっかけになった事件の時の日記だね。
この連中がやらかしてくれちゃったおかげで、私たち転生者がこの世界で生まれ、そして余波で消失しちゃったMAエネルギー確保に奔走するために魔王が魔王になったわけだ。
吸血っ子と鬼くんは既にこの事件のあらましは聞いてるから、これを読んでも驚きはない。
だから何を魔王が問題にしているのかわからなくて困惑してるんだろう。
けど、大問題だよ。
だって、これを書いたのはポティマスなんだから。
「どういうこと? 勇者と魔王をそそのかしたのはポティマスじゃない?」
そう。
そうなのだ。
ポティマスがこの先々代勇者と先代魔王が引き起こした事件について、こんだけ驚いているってことは、黒幕は別にいるってことになる。
え?
先々代勇者と先代魔王が勝手にやったんじゃないかって?
システムのシの字も知らないような連中に、そんなことできるわけないじゃん。
そこには必ずそいつらにシステムについて、教えた人物が存在する。
そうでなきゃ、何も知らない人間が、時空を超えてDのいたあの教室にまでたどり着けるはずがない。
ポティマスですら、Dの存在には気づいていなかったようなんだから。
……ここまでくれば、犯人なんてわかりきっている。
魔王だってわかってるはずだ。
ただ認めたくないだけで。
「そうだ。全ては私の責任だ」
私たち以外の、この場にいなかった第三者の声が響く。
空間転移で現れたのは、私の予想通りの人物。
黒い甲冑を纏ったかのような姿の、この世界の管理者。
黒、ギュリエディストディエス、その人だった。