48-08 アヴァロン案内
顔合わせも一通り済んだので、そのまま昼食会となった。
自動人形である礼子とエレナ、レイ、花子、ゴーレムのホープとウラガンを除いた全員の前に、『アヴァロン』標準の定食が並べられていた。
仁とシオンが、『アヴァロン』の食事水準を知りたいと言い出したためである。
「来賓の方にはもう少しよいものをお出しするのですが」
と言い訳めいたことを口にする最高管理官トマックス・バートマンであるが、仁とシオンは満足している。
「いえ、これで十分ですよ」
因みにこの定食は日替わりで、基本的に『職員』は皆同じものを食べることになる。給与の一部ということなのだ。
もちろん、自分でお金を出し、食堂で好きなものを注文することもできる。
給食のようなものと思えばよいだろう。
この日の昼は、『ハンバーグ定食』であった。
コッペパン、野菜スープ、ハンバーグ、フライドトポポ、葉野菜のサラダ、フルーツジュース。
食後には紅茶かコーヒーを選べる。
仁としては、どこのファミリーレストランだ、と言いたかったようだ。
「お、美味い」
「美味しいわね」
「美味しいです」
仁、シオン、マリッカは素直に美味い、と思った。
「うむ、なかなか」
デウス・エクス・マキナ3世も食べながら感想を言っている。
もっとも彼は老君の配下『導師』が操る自動人形なのだが、その正体を悟られないためにこうして食事をしているわけだ。
ただ、仁はパンでなくライスがほしかった、と思ったのであった。
* * *
食事後、仁は紅茶をチョイスしてゆっくりと味わっていた。
「午後はどうなさいますか?」
トマックスが仁に尋ねる。仁は少し悩むように考え込んだ。
「そうですね……見学をしてみたいですね」
視察ではなく、と付け加える。そんな上から目線ではなく、純粋に今の『アヴァロン』を見てみたい仁であった。
「でしたら私どもも」
ロードトスが申し出た。
「あ、それでは私も」
エレナも同様。
結局、マキナ3世を除く全員が『アヴァロン』の見学を申し出たのであった。
「でも、昨日から来ていた方々はかなり見て回っているのでは?」
仁が疑問を口にすると、
「いえ、視察していたのはマキナ殿だけですので」
と、トマックス・バートマンが答えた。
「私も、このような方々とでしたら、もう一度回ってみたいですね」
マキナ3世もそう言いだしたので、結局全員が『アヴァロン』見学をすることになったのであった。
* * *
今回の移動はゴーレム自動車だ。全員が乗ることはできないので、4台に分乗する。
仁、礼子、ホープで1台。ロードトス、シオン、マリッカ、ウラガン、花子で1台。エレナ、アリエッタ、ワッテス、で1台。マキナ3世、レイで1台だ。
仁の車にはトマックス・バートマンが同乗し、他の3台にも『アヴァロン』の幹部クラスが同乗することになる。
迎賓館を出た一行は、緑地を抜けていく。
「左手にありますのが『世界会議』の本部です」
『世界会議』本部は『アヴァロン』の中心部にある直径300メートルの開口部の北端に建っている。
「開口部は海まで続いておりまして、波が穏やかなので水泳訓練や船の試験航行などに使われています」
トマックスが説明した。
因みに、魔素通信機に似た魔導具が各車に備え付けられており、移動中でも会話が可能だ。
『世界会議』本部から『アヴァロン』外周部へ向けて北上する大通りを、一行を乗せたゴーレム自動車は進んでいった。
「一旦外周部に出ます。この『アヴァロン』は直径2キロメートルのメガフロートでして、外周部を1周するように道路が設けられております」
(そのあたりは変わっていないな……)
仁は説明を聞きながら懐かしい風景を眺めていた。
ゴーレム自動車は外周道路を反時計回りに回っていく。
「このあたりが第1居住区ですね。主に学生が住んでいます」
「懐かしいわね」
「そうですね」
ロードトスとマリッカは目を細めた。
2人とも、一時この居住区に住み、教鞭を取っていたことがあるからだ。
そしてゴーレム自動車は飛行場に着いた。
「こちらは一般用の飛行場です。『アヴァロン』のちょうど真西に当たります。因みにジン殿が着陸された飛行場は真東にあり、向こうは『空港』と呼びまして、公的なお客様用です」
さらに左回りに道路を移動していくと、小さな緑地を抜け、また居住区になった。
「一般人用、第2居住区です」
『アヴァロン』の一般業務に従事する人々用だと説明された。
「あ、それから工場勤務も含みます」
一行は大きな工場区に差し掛かった。
「地下も含めた、『アヴァロン』最大の工場区です。『世界警備隊』の武装から、事務用のメモ用紙に至るまで、このエリアで製造されています」
「あ、北側に見える緑地は何ですか?」
仁が質問をした。
「ああ、あそこは畑です。自給自足は無理ですが、少しでも新鮮な野菜を手に入れられるようにということで」
これは400年前にはなかったものだった。
「果樹もありますね?」
目のいい礼子が確認するように質問した。
「ええ。暖かい気候を好むシトランとラモン、それにペルシカを少々」
そして着いたのは円形が一部切り取られたようになった部分だ。
「ここは『アヴァロン』唯一の港です」
巡洋艦以上の船舶はここを使うのだという。
それ以下の大きさの船は、メガフロートである『アヴァロン』の側壁に幾つかある桟橋を使うのだ。
因みに『アヴァロン』でいう巡洋艦は全長50メートルの木造船である。
外周を巡る道路は、この部分で港を避けるようにカギ型に曲がり、港以降はまた円弧を描いて、仁が着陸した東側の飛行場、通称『空港』へと続いていた。
一行を乗せたゴーレム自動車は、『世界警備隊』本部前で停車した。
ほぼ外周部を1周してきたことになる。
「以上、駆け足で『アヴァロン』の地上部をご案内致しました。何か疑問点はございますでしょうか?」
少し間があり、誰も口を開かない。そこで仁が発言を行う。
「概略はわかりました。できましたら『学園』を見てみたいのですが」
マリッカやロードトスが一時講師を務めていた『学園』。仁はそこを自分の目で見たかったのである。
「なるほど。ですが、今は冬期休暇中なので、学生はおりませんが、それでもよろしいですか?」
「ええ、構いません」
ここでロードトスが合いの手を入れた。
「一部の研究室には学生や教授がいるのでは?」
講師として在籍していた彼ならではだ。
「ええ、確かに。ではまいりましょうか」
ゴーレム自動車は再び動き出し、一行は『学園』を目指したのである。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20180131 修正
(誤)そして着いたのは円形が一部切り取られたように部分だ。
(正)そして着いたのは円形が一部切り取られたようになった部分だ。
(誤)自動人形である礼子とエレナ、レイ、
(正)自動人形である礼子とエレナ、レイ、花子、
(誤)ロードトス、シオン、マリッカ、ウラガンで1台。
(正)ロードトス、シオン、マリッカ、ウラガン、花子で1台。
(旧)メガフロートである『アヴァロン』の側壁に幾つかある桟橋を使えるのだ。
(新)メガフロートである『アヴァロン』の側壁に幾つかある桟橋を使うのだ。