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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
48 年末年始アヴァロン騒動篇(3899〜3900年)
1774/4221

48-03 ノルド連邦とアヴァロンと

「ああ、よく寝た」

 充実した時間を過ごした仁は夢も見ずにぐっすりと眠り、おかげで爽やかな目覚めを迎えていた。

御主人様(マイロード)、安全性その他の試験は全部クリアしました』

 顔を洗った仁に、老君が報告してくれた。

「お、そりゃあよかった」

 少々急いで作ったので見落としがあると危険だから、安全性については厳重な試験が必要だった。

 老君が保証してくれるなら大丈夫だろう。

『併せて最高速度での試験も行いました。通常は時速800キロ、非常時はマッハ2まで出せます』

「そ、そうか」

 念の入った試験飛行をしてくれたようだ。

『それから、空いたスペースに『タウベ』を積めるように致しました』

「お、それはいいな」

 『タウベ』は仁が作った『風力式浮揚機(ブローフローター)』。垂直離着陸機(VTOL)としても使えるので、狭い場所でも着陸できるのだ。


 『森羅しんら』の氏族領と蓬莱島の時差は2時間半くらい。

 蓬莱島時間で9時過ぎに、仁は『ハリケーン』で飛び立った。

「おお、これは快適だな」

 『コンロン3』とは視界が違う。また、『タウベ』とは安定度が違う。

「風避けの結界も十分効いているな」

 マッハ3まで対応できる結界なので、時速800キロなら余裕である。


 ホープは『森羅』氏族領に午前9時に到着するよううまく速度を調整しつつ飛んでいった。


*   *   *


「何これ。凄いの作ったわね!」

「ジ、ジン様、凄いでしゅ」

「さすがジンさんですね……」

 『森羅』氏族領では、3人が仁を待っていた。

 『ハリケーン』が空港に着陸すると、大勢の人々が集まってきた。

「ジン様の新型飛行船ですね?」

「……でも、これって飛行船なのかしら?」

風力式浮揚機(ブローフローター)みたいね」

 姦しいのはマリッカの弟子たちだ。

「はあああ……これが最新の『風力式浮揚機(ブローフローター)』ということになりますか……」

 空港関係者も、手が空いている者たちは皆寄ってきて『ハリケーン』を見上げている。

「この発想は、さすがですね!」

 ロードトスが仁を讃えた。

「ええ、これなら『アヴァロン』へ行っても軽く見られることはないでしょうね」

 『魔法工学師マギクラフト・マイスター』を名乗るなら、それ相応の実力を見せないと侮られる、とシオンは言った。

「それだけ2代目が尊敬されているのよ」

「2代目も俺なんだけどな……」

 仁は苦笑いを浮かべた。

「それはわかるけどね。でもわかってるのって私たちだけだからね……」

「ジンしゃまが軽く見られるのは許せないです」

「ジンさんとしては不本意でしょうけれど……」

「……ありがとう」

 シオンたちの心遣いを嬉しく思った仁であった。


*   *   *


 一方、時間は1日戻って『アヴァロン』では。


「デ、デウス・エクス・マキナ3世が来ると!?」

「な、なんで、い、今頃!?」

「この前来たばかりではないか!?」

 デウス・エクス・マキナ3世来訪の報せにより、上を下への大騒ぎ中であった。

 いや、実際にはまだ来訪していない。1時間後に来訪するという連絡が入っただけだ。とはいうものの、重要人物……いや、最重要人物の来訪を迎えるには時間がなさ過ぎる。

 それで『アヴァロン』内はてんてこ舞いしているというわけであった。


「まず間違いなく本物でしょう。なにしろ専用回線での連絡ですから」

 デウス・エクス・マキナ専用回線。本人もしくは従騎士レイ以外には使えない(はずの)回線である。

 100年以上使われていなかったそれを使って連絡が入ったのだ。

 前回の来訪時にはマリッカが事前に教えてくれていたのだが、今回は専用回線での連絡である。

「と、とにかく、手空きの者、非番の者全部に連絡を入れろ!」

 『アヴァロン』最高管理官トマックス・バートマンは、部下たちに命令を下した。

「……そのうち連絡が入るだろうと思ってはいたが」

 そして溜め息をついたのである。


 そしてそこへ、さらなる混沌を呼び寄せる連絡が入った。

「最高管理官、『懐古党(ノスタルギア)』なる組織より連絡です!」

「何だと? こちらへ回せ」

 通信担当は最高管理官へと回線を繋いだ。

「……『アヴァロン』最高管理官トマックス・バートマンだ」

『こちらは『懐古党(ノスタルギア)』名誉顧問エレナと申します』

「何用か、お伺いしたい。……失礼とは思うが、現在こちらは多忙なので、できうるなら後日ご連絡いただきたいのだが」

『お忙しいのは想像付きますわ。……デウス・エクス・マキナ様がおいでになるのでしょう?』

「な、なぜそれを?」

『マキナ様ご本人からご連絡いただきましたの。それで私どももご挨拶に伺いたく、ご連絡差し上げたわけですわ』

「……」

 最高管理官トマックス・バートマンは胃が痛くなる思いであった。

「了解した。マキナ殿はおよそ1時間後に到着するそうだ」

『それでしたら、私どもは5時間後、ということに致したいのですが』

「……了解した。何人で来られる?」

『私エレナと2名ほどで』

「了解した」


 通話を切ったトマックス・バートマンは溜め息をついた。

 そこにまた連絡が入る。

「何だ、いったい!」

『最高管理官、今度は『森羅』のマリッカ様から連絡が入っております!』

「……何! 繋げ!!」

『突然の連絡、失礼します』

「おお、マリッカ先生! お久しぶりでございます!!」

『久しぶりですね、トマックス。元気そうで何より。……忙しいでしょうから単刀直入に言うわね。明日、ショウロ皇国で認証された『3代目魔法工学師マギクラフト・マイスター』、ジン・ニドー殿と共に、そちらへご挨拶に伺います。ロードトスとシオンも一緒に』

 トマックス・バートマンは胃が痛む思いであった。

「は、はい、先生とそのご一行でしたらいつでも歓迎いたします。ですが本日、デウス・エクス・マキナ3世を名乗る方と、『懐古党(ノスタルギア)』のご一行がお見えになる予定でして……」

 できれば日延べしてもらえれば、と思っていたのだが、マリッカの言葉は期待を裏切るものであった。

『ええ、知ってますよ。ですので私たちも伺おうと思ったのです』

「……そうですか」

『今日はいろいろと大変でしょうから、明日そちらの時間で正午に』

「わかりました。お待ち申し上げます」

 通信は切れた。

 『アヴァロン』最高管理官トマックス・バートマンは深く深く溜め息をついたのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20180808 修正

(旧)『今日はいろいろと大変でしょうから、明日そちらの時間で午前10時に』

(新)『今日はいろいろと大変でしょうから、明日そちらの時間で正午に』


 このあと、48-06 で11時50分に到着してます……


 20180829 修正

(旧)『最高速度の時速800キロでアルスを1周してきましたから』

(新)『併せて最高速度での試験も行いました。通常は時速800キロ、非常時はマッハ2まで出せます』

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