玉兎VSルーミア
初めての戦闘描写。うまくかけてるかなぁ。
拙すぎる初めてな戦闘描写などが含まれます。
大丈夫な方はゆっくりしていってくださいね!
鉄臭い血の匂いがどこかから立ち込め始める。
夢で見た格好を自分がしている上、よく見れば場所まで夢とそっくりであるのを気付き、頬を冷や汗が流れる。
「あなたは、食べてもいい妖怪?」
夢で何度も聞いた言葉が背後から投げかけられ、振り返る。
僕の通ってきた道とは違う場所の茂みから宵闇の妖怪は姿を表す。
「わははー!あなた、とっても美味しそうなのかー!」
「やっぱり、夢通りなのかっ!」
赤色に白い刺繍入りのリボンを使って金色の髪の一部をくくった短髪の少女。 星一つ無い夜空を切り取ったような真っ黒なワンピースのような服を振り乱す子供の様な小さな姿に似合わない獰猛な笑顔を浮かべたその妖怪。
東方プロジェクトの作品、win版と呼ばれるシリーズの第一作品、その一面ボス。宵闇の妖怪、ルーミアだ。悪夢をよく思い出せばそれらしき姿が闇の球体に変化していたのが思い返せる。
彼女は口に咥えてしゃぶっていた女性らしき細い足をボギリと硬質な音をたててかみ砕きソレを腹に収めると、ホオズキのように真っ赤な目をこちらに向けてくる。ヘビに睨まれたカエルを人間で図に表したらこんなになるんじゃないか、と教科書にかけそうな状況だ。
ここまで夢とそっくりであると、夢通りに逃げてしまうとそれこそ夢通りの結果しか産まないような気しかしない。
だからこそ、腰の紐に吊っていたリボルバーを引き抜いて撃鉄を起こし、ルーミアへと突きつける。逃げれないなら打ち倒すだけだ。
「弾幕ごっこ、するのかー?」
血で汚れた口元を下で舐め取りながらルーミアはそう聞き返す。
『東方』のwin版以降の世界で広まった賭け事の混ざった遊び。『弾幕ごっこ』をする気の様だ。スペルカードと言われるカードをかざして宣言し、それに対応した自分の得意技の弾幕を展開する。そして、お互いで決めただけの被弾をした方が負ける。
簡単なルールだが、スペルカードに使う技は美しくあらなければならない。クリア不能であってはならない。と言った条件も存在する。
だが、土地勘のない場所で追いかけっこをしてそこを狩場とする狩人から逃げ切るよりは勝算がある。
「ああ、やってやろうじゃないですか!」
逃げるのを選択せず、普通にただ戦おうとすればこの慣れない体では負けるのはほぼ確実であるしとても都合のいい申し出だ。
スペルカードルールがここにあるのなら、生きるのに必要なもの、として持たされた物の何かしらの物が反応する筈。
足に力を溜め、
腐葉土を蹴散らして飛び上がり、
近くにある樹を蹴って滞空する。
「体が軽い!?」
元々、運動が好きでも得意ではない自分でもとても凄い、と分かるほどにこのからだは惚れ惚れする力を持っているようで、本気で飛べば身長の2倍の高さまで飛び上がる事が出来るし、木の上で腕力だけで身長の高さ位までは飛ぶ事が出来る。
これなら弾幕を回避しながら攻撃し返すなんて芸当もできそうだ。
「夜符 ナイトバード なのかー」
僕が体のスペックの確認をしている内にルーミアはいきなりスペル宣言をしてこちらを叩き潰しにかかってくる。鳥ににた薄光の弾幕がいくつもルーミアから飛翔し、朱雀の尻尾みたいに後ろから付いてくる小さな光弾の塊が逃げ場を狭める。
せめてもうちょい待って欲しかったっ!
僕へと飛びかかる1匹の鳥弾が目に入り、リボルバーを反射的にそちらへ向けて引き金を引く。発射音だけが玩具じみた音を立て、反動も無しに飛び出したバスケットボールほどの火の玉が鳥を撃墜する。
そして、僕──いや、私のスイッチが入る。
火の弾と相殺されお互いに砕けてキラキラと舞い落ちる弾の中を突っ切り突撃。
ルーミアの後ろの木まで飛び移りさっき撃ち出したリボルバーの弾が減っているか確認。
弾は減っていない。
どうやら体の中の力を込めて撃つためのただの変換器なようで、銃の形をしているのはただ『撃つ』というのをイメージさせやすくするためなだけなようだ。
それに私は安心し、少し濁った弾丸へ力を注いで吸い取られる感覚を感じながら元の綺麗な宝石の色へ変化させる。
ルビーみたいに綺麗な色へ戻ったのを見ながらリボルバーの回転弾倉へ押し込んで弾倉を元に戻して一回転させる。
「私の初戦、華々しく華麗に示させていただきますよっ!」
木を利用して弾幕を防御しつつ火の弾をルーミアへ打ち込みスペルカードを続行できなくする『スペルブレイク』を狙う。
「隠れてばっかりで卑怯なのかーっ!」
「これも一つの戦術だよっ!」
癇癪を起こしさらに数が増えていく弾幕を盾として役に立たなくなった木を乗り換えながらやり過ごす。
そして、思いっきり力を込めた炎の弾を放ち、大玉転がしの大玉みたいな大きさになった大玉でルーミアの体勢を崩す。
「くっ……」
衣服が少し焼けたルーミアの手にあるスペルカードが光を失い『スペルブレイク』が起こったのを確認する。
さらに攻め立てようと飛び出したところで腰に付けておいた開かない謎箱が光りだし、それに気を取られる。
「ん?」
「隙ありなのかー!」
そのスキを付け込まれルーミアが通常弾幕を撃ち込んでくる。野球ボール位の大きさで七色の弾幕が射出され、急いで回避するものの一二発がかすってバットで殴られたみたいな痛みが襲って来る。
「くっ……!」
痛みで出る声を噛み殺し木の影に隠れる。
こんなことになった原因の光る謎箱に手を触れると、今まであかなかったのが嘘のようにすんなり開き1枚のカードが手の中に収まり閉じる。
どうやらルーミアのスペルカードをスペルブレイク出来たのをきっかけにこちらもスペルカードを使えるようになったようだ。
──けど、ここに来たばっかりの私のスペルって何なんだろ。
手に収まったスペルを眺めていると、突然イメージが頭に流れ込んで来る。
強烈な異物感とともに頭に流しこまれた知識でその詳細が分からさせられる。足を踏み込み、弾(を持った拳)で打ち込むスペルで、ゲームで見覚えのあるスペルの名前なのに、動きが少し違うような違和感がある。
あと、なんかスペルの最後に極みとか付いてる。
「いつまで隠れ続けてるのかーッ!」
あまりに隠れるので怒ったルーミアがスペルの準備を始めたのが木に空いた穴から見え、取り出す前に一か八かで手の中のスペルを宣言する。
「四天王奥義 三歩必殺 極み ッ!」
発動させたのは地底に潜む鬼で、通称姉御の勇義が使う技だったはずなのにアレンジが加えられ原型があまり残っていなかった。
飛びかかるように体が勝手に動き、それに困惑している内に目下に見える地面が盛り上がり、そこから6角の石柱が足元へ飛び出てきて、足場を形作る。
「一歩おぉっ!」
動かされるままにそれを足場にして1歩踏み込むと、ルーミアの辺りを囲むように電球サイズの小さな弾幕の壁が出来て退路を塞ぐ。
「二歩ぉおっ」
同じように二本目の石柱を足場に2歩目を踏み込むと、弾幕の壁がルーミアを押し込み私の目の前へと強制的に導く。
「そして、三歩ォオオッ!!」
弾幕でグローブのようなものを作り自分の意思で渾身の力を込めてルーミアの腹へと拳をねじ込む。
ぐにゅり、と手に嫌な感触が伝わり、ルーミアは蹴り飛ばされたボールか何かのように空へと吹き飛んでいく。
「なのかぁぁぁぁっ!?」
変な絶叫をドップラー効果マシマシで上げながら飛んでいくルーミアは勢いを落とさず点になり、やがて見えなくなった。