読者への挑戦状
本日2話更新、これは2話目です。前話読み飛ばしにご注意ください。
――私は読者へ挑戦状を提示する。
これまでにミステリー小説をあまり読んだことがない読者は、この言葉に面食らうかもしれない。
あるいは、怒り出すかもしれない。
しかし私はこの作品の作者として読者諸賢の頭脳に対して挑戦したいという欲望を抑えることができそうにない。
この作品は本格ミステリーのように、トリックを論理的に推理するためのヒントのみから構成されているわけではない。
当然、トリックには関係のない伏線もこれまでの話の中には大量に含まれている。
しかし、そこからトリックに関係のある情報を抽出し、直感と論理を元に再構成することで、切り裂き魔事件の、まだ解決されていない部分の真実へと到達することは、十分に可能であると考える。
私はこの作品が本格ミステリーではないことを鑑み、論理的に必要とされる以上のヒントを作品中にばら撒いた。実のところ、少しヒントをばら撒きすぎたのではないかとも思っている。
これだけ潤沢なヒントが揃っていれば、読者諸賢が我らが探偵と同じ正解に至ることは、容易いとは言わないまでも至難とも言えないであろう。
本来ならば、事件がもっと錯綜している段階でこの挑戦状を提示することも可能だった。
しかし、読者諸賢が中核となる問題に考えを集中できるよう、時期を見計らった上で、この挑戦状を提示することとした。
既にエドガー・キュレベルは真の切り裂き魔が誰であったかを知っているし、転生者である杵崎亨によって為された模倣事件についても解明されている。
すなわち、第一、第二、第三、第七の事件は真の切り裂き魔によって、第六、第八の事件は杵崎亨によって為されたことが判明している。
残るは第四と第五――一夜にして起きた二重殺人、デヴィッド・ザフラーン・キュレベルが言うところの「不可能犯罪」のみである。
読者諸賢には、次の話へのリンクを辿る前に、ぜひ以下の問題について、自身の考えを整理してみてほしい。
――二重殺人の犯人は誰であり、いかにして一夜のうちに新旧両市街に跨る事件を起こすことができたのか?
そして、能うことなら、その犯人の動機についても推理してみてほしい。
さらに、その人物が犯人であることを証立てる物的証拠となりそうなものは何かまで推理していただければ、作者冥利に尽きるというものだ。
最後に、ひとつだけ。
この犯人は、極めて狡猾な人物である。
読者諸賢におかれては、その罠にかからぬよう、十分に注意されたい。
それでは、読者諸賢の名推理を期待する。
2015年11月20日
天宮暁
追記:
この推理ゲームに参加するか否かは、当然ながら、完全に読者の自由に委ねられている。
この物語を楽しむにあたって、推理は必要不可欠な要素ではなく、あくまでも余興のひとつにすぎない。
謎解きが好みでない読者の方は、この挑戦状を頭のゴミ箱へと放り込み、作者の見えすいた挑発に罵りの言葉を浴びせながら、そのまま続きへと進んでいただければ幸いである。
ごめんなさい、ちょっと調子乗りました。
これがやりたかったもので……。
わかった方も、感想欄でのネタバレは避けていただけると有り難いです。
次話はちょっと間をあけて5日後(25日)を目処とさせてください(謎解きの整合性チェックのため)。
王都編は思いの外延びてしまいまして、9月から11月にかけてはかなりのデスマーチ進行だったんですよね……。足の指を骨折したりもして、かなりヤバい3ヶ月でした。急いだつもりではあるのですが、それでも読者の皆様をおまたせしてしまって申し訳なかったと思っています。
さて、本日、いよいよ『NO FATIGUE』書籍版第2巻が発売となっています。
それに合わせて、発売記念SSを外伝置き場『NO FATIGUE ~REPOSE~』に上げております。〈八咫烏〉首領ガゼイン・ミュンツァーの若かりし頃の話ですので興味のある方はぜひご覧になってください。
外伝置き場『NO FATIGUE ~REPOSE~』はこちら→http://ncode.syosetu.com/n9866ct/
また、一昨日より活動報告の方で2巻のキャラデザ第3弾を公開しています。今回はドンナです。かわいらしく仕上がっているのでまだの方は併せて見ていただければさいわいです。
http://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/1281907/
至らぬところの多い作者ではありますが、今後とも『NO FATIGUE 24時間戦える男の転生譚』をよろしくお願い申し上げます。
それでは。
2015年11月20日
天宮暁