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異世界にて13

「お、お前! 魔王討伐パーティの知り合いなんだってな!?」


森の中で突然、背後から声が飛んできた。


振り返ろうとした瞬間、背中に鋭い刺激を感じる。


「動くな! 背中にナイフを当ててある! 許可なく動いたら、このまま刺すからな!」


明らかに動揺した口調の男の声。

とりあえず、こちらに抵抗の意思がないことを伝えるため、「分かりました」とだけ応じる。


「よ、よし! それで!? どうなんだ!?」


「どう、と言いますと?」


「さっきの質問だ! お前は今、魔王を倒しに行ってるパーティの知り合いなのか!?」


「……街で話を聞いた限りでは、そうみたいですね」


「そ、そうか……! よし、お前! 俺についてこい!」


「理由を聞いてもよろしいですか? できれば、お断りしたいのですが」


「そんなの決まってるだろ! 魔王を倒させないためだ!」


……ん?

魔王を“倒させない”ため?


「魔王討伐だなんて、ホント何してくれてんだよ……! 俺はこの世界が気に入ってるんだ! 帰りたくなんてないんだよ!」


なるほど。帰りたくない、か。

一番たち以外に勇者と接触したのは二人だけで、どちらも帰還を望んでいた。

確かに、それとは逆の考え方は盲点だったかもしれない。


「はぁ、そうですか。でも、それと僕があなたについていくことと、何の関係があるんでしょう?」


「は、はは! なんだお前、頭悪いな! そんなの決まってるだろ! お前を人質にして、魔王の討伐をやめさせるんだよ!」


……なるほど。お世辞にも賢いとは言えないが、そう明言されると少し腹が立つ。


「一応申し上げておきますが、僕を人質にしても魔王討伐は止まらないと思いますよ」


「はぁ!? なんでだよ!? そんなわけないだろうが!」


何を根拠に“ない”と断言したのかはわからないが、男の声には明らかな動揺が滲んでいた。


「一言で言うなら……あの人は、そういう性格ですので」


「は、はあ!? ふざけんなよ! だったらお前がなんとかしろよ! 俺が帰らなくて済むように考えろ!」


ぐい、と肩を掴まれ、無理やり振り向かされる。

その瞬間、指輪から取り出していたナイフを男の腹部に突き立てた。


「ひっ!? ひぐぅあ!? な、何するんだおまえぇえ!」


パニックに陥った男がナイフを振り回す。それを一歩下がって避ける。


「こんな……こんなことって……いぃ、痛いぃ……!」


男は血の滴る腹を押さえて青ざめていた。

そこまで深くは刺していない。致命傷ではないはずだ。


「ひ、ひどい……人を刺すなんて! 死んだらどうするんだよ……!」


涙ながらに訴えてくる男。見た目は三十代後半といったところで、ぼさぼさの髪に黒縁メガネという典型的な風貌だった。


「刺されたくらいで文句を言わないでください。死んでませんよね?」


そう言いながら、改めてナイフを構えて構える。


こちらが戦う気でいると察したのか、男は小さく悲鳴をあげた。


そして――


二人デ居ルト劣等感(はれもの)!」と叫んだ。

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