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513 侵略開始 1

「皆さん、ありがとうございました!」

 ティルス王国の王都に戻り、お馴染み、レニーちゃんの宿屋で夕食を摂っている『赤き誓い』一行。

 少し張り込んで、豪華な食事にしているようである。


「これで、この国と周辺国の王都の孤児院に、新たな収入源を与えることが……、じゃない、情報網を形成することができました」

 マイルの言葉に、動じた様子もないレーナ達。

 マイルの孤児院テコ入れ計画が、『情報の収集のため』というのは建前であり……その役割が全くないというわけではなく、嘘だということはないが……、本当は孤児院の支援が目的であることなど、皆には最初からお見通しであった。


 運営が厳しかった孤児院に、マイルがかなりの支援をしていた。

 それで食生活が大きく向上した孤児院であるが、もしここでマイルが仕事に失敗し(いなくなっ)たら……。

 その日がいつ来るか分からない。

 普通の魔物相手には無双できても、人間相手だと思わぬ不覚を取ることもあるし、圧倒的な戦力差や、からめ手とかもある。古竜であっても、仔竜が人間に殺されたことがあるのだ。数千の兵力と多数の大型弩砲バリスタを用意されて……。

 そして、正体不明(異次元世界)の敵とかも……。

 万一の場合に備えた、マイルの先行措置。

 それくらいが分からない仲間達ではなかった。


「まあ、全ての街の孤児院に、なんてのは到底不可能でしたけど、各国の王都の孤児院だけでも何とかできれば、それを見た他の街の孤児院も、何か似たようなことを考えてくれるかもしれませんし……。

 一応、私が手を出した孤児院ところには、他の孤児院が相談に来たら、揚げ物屋関連のノウハウを教えてあげるように、って言っておきましたし……」

 孤児院は、営利団体ではない。なので、他の孤児院は決してライバル企業とかではなく『子供達のために頑張る、同志』として力を合わせてくれるに違いない。

 そう信じている、マイルであった。


「これで、あとは今まで通り普通のCランクハンターとして頑張って、レーナさんとメーヴィスさんの目標であるAランクを目指すだけですよね」

 マイルは、自分が諸国を廻ってもあまり意味がないということを自覚したようであった。

 確かに、開いている時間が短い次元の裂け目にたまたま出くわす確率は限りなく低いし、古竜の目的も分かった。そして先史文明の遺跡もゴーレムとスカベンジャー以外は何も残ってはいないらしいということも……。

 なので、異世界からの小規模な偵察らしきものが行われていることは知っているが、今はまだ小康状態を保っているし、自分達にはどうしようもない状況であると判断しているわけである。

 そしてレーナ達は……。


(マイルはああ言っているけれど、『アイツら』が近々襲撃してくる確率はかなり高い……、いえ、ほぼ確実ね……)

(来ますね、奴らが……)

(来襲に備えておかないと……)

(((絶対に来る! アイツら、『ワンダースリー』がマイルを狙って!!)))


 かなりの危機感を抱いているようであった……。


     *     *


『赤き誓い』が孤児院テコ入れの旅を終えてから、数カ月が経過した。

 その間、マイルは5日以上の長期休暇には各地の孤児院の様子を見て廻り、指導や問題点の改善に努め、もう孤児院はマイルの助けがなくとも子供達に腹一杯食べさせてやる程度のことは充分にできるようになっていた。

 マイルひとりだけであれば、重力魔法ケイバーライトによって『水平方向に落下する』という荒技を使い、短時間での移動が可能であるため、各地の孤児院のフォローができたのである。


 マイルが直接関わってはいないその他の孤児院も、揚げ物屋や、他の『人件費と家賃がゼロ』という利点が最大限に活かせる業種……つまり、手間がかかって人件費が高くつくやつ……に手を出して、少しずつ収益を上げていった。


(もう、私に何があってもこのあたりの孤児院は大丈夫だ。これで、私がこの世界に転生した意味は充分あったと言えるだろう。私が死んで、またあの『神様モドキ(オーバーロード)』に会ったとしても、胸を張って報告できる……。

 あとは、悔いのない人生を送ろう。自分のための人生を。

 そしてこの世界で、愉快に遊ぶんだ!!)

 そんなことを考えているマイルであるが……。


     *     *


「『赤き誓い』のマイル様に、お届け物です」

 いつものように、宿のマイル達の部屋にハンターギルドからの定期便が届いた。

 届けてくれたのは、いつもギルドでたむろしている小遣い稼ぎ目的の子供達のひとりである。

 小銀貨3枚での王都内配達の仕事は、彼らにとっては非常に美味しい仕事なのである。

 届けられたのは、マイルが事業立ち上げ支援の代償として各地の孤児院に依頼している、街の情報の定期報告である。

 この報告依頼と報告書送料の孤児院側負担が、あの事業に関するマイルの取り分の全てである。


「えーと、マーレイン王国の分か……。低ランクハンターを雇ったり早馬の特別便を使ったりすることなく、普通のギルド便だということは、大した報告じゃない、ということだよね……」

 そう言いながら、手紙の封を切るマイル。

「何々、『新種の魔物が増え、軍とハンターギルドに加え傭兵ギルドも駆除に奔走。森の中の危険度が増し新米ハンターは及び腰なれど、一般庶民の生活には支障なし。

 新種の肉は脂身が少なくて甘みは弱いけれど、噛み応えがあり旨味は上々。すじ肉がいい感じで、軟骨部分のコリコリとした食感がなかなか……』って、残り全部、新種の魔物の料理批評ですかっ!

 ……というか、新種が市場に出回り始めているとか、大丈夫なのかな……。

 他の国からの報告も、似たようなものだし……」


「この前来た、トリスト王国の孤児院からのには、新種のオークの煮込み料理について書いてありましたよね」

「『煮たような』じゃありませんよっ!」

 ポーリンからの茶々入れに、ムキになって怒鳴るマイル。

 各地の孤児院からの報告はマイルにとっては重要なことなので、それに関する茶々入れには不寛容なマイルであった……。


「しかし、どこかで突然大事件が、というならばともかく、各地でじわじわと脅威度が上がっていくというのでは、どうしようもないよね? まあ、大事件が起こったとしても、どうしようもないけど……」

 メーヴィスが言う通り、『赤き誓い』は、いくら売り出し中の名物パーティとはいえ、たかがCランクの少女4人のパーティに過ぎない。それでどうこうできる程度のことであれば、古竜一頭で何とでもなる。もしくは、どこかの国の王都軍とか、領主軍とかでも。

 それに、『赤き誓い』は4人、ひとつのパーティに過ぎない。各地で同時多発する事象には対処できない。


「各国の対処に任せるしかないわよねぇ。ま、マイルが情報網云々(うんぬん)とか言ってた時にも言ったけど、あんたひとりがいち早く情報を入手しても、何の意味もないわよねぇ」

「……しょぼ~ん、スプレー……」

 メーヴィスの突っ込みに続くレーナの駄目押しに、がっくりと肩を落とすマイル。

 そしてやはり、前世の自分と少し似た悩みを抱えていたらしきキャラに愛着があったのか……。


     *     *


【マイル様、アポなしの来客ですが、如何なさいますか?】


「え?」


「ん? どうかしたの?」

「あ、いえ、何でもありません! えへへ……」

 思わず声に出してしまい、慌てて誤魔化すマイル。


(な、何? どうしてナノちゃんが来客の取次ぎをするのよ! それは、レニーちゃんの仕事でしょうが!)

 脳内で、至極尤もな主張をするマイルであるが……。


【ハイ、普通の来客……ヒト種とか魔族とか獣人とか……であればそうなのでしょうが、訪問者が少し変わっておりまして、私達に仲介を求めてきましたもので……】

(あ~、何か、まともじゃないやつか……。それなら、私だけで会う方がいいよね?)

【……】

(何よ、その沈黙は!)

【いえ、先々のことを考えますと、他の方々も御一緒の方がよろしいかも、と思いまして……】

(えええええ! だって、相手は人外だよね? しかも、魔族でも獣人でもないヤツ! そんなのとみんなを会わせても大丈夫なの? 主に、私の秘密的な点で……)

【…………】


(私が決めろ、ってことか……。

 でも、ナノちゃんがわざわざそんな言い方をするということは、多分それが『お勧め』ってことなんだろうなぁ……)

 マイルは数秒間考え込み、そして……。

(この部屋へ通してちょうだい)

【御意!】


「皆さん、来客があるそうですので、この部屋へ通します」

「いつ知らせがあったのよ! そして、誰が来るのよ!!」

 当然の疑問を口にするレーナであるが……。

「さあ? 会ってみないと、私にも……」

「そんな怪しい奴、女の子だけの部屋に通すなああぁっ!!」

 怒りの叫びを上げるレーナ。

「まあ、マイルだからね」

「マイルちゃんですから……」

 そして、通常運転のメーヴィスとポーリン。


「……分かったわよ。さっさと呼びなさい!」

 諦めたかのようにレーナがそう言うのと同時に、開けられたままの窓から一羽の小鳥が飛び込んできた。

 そして、テーブルの上に着陸。


「来客って、鳥かああああぁっっ!!」

 レーナ、先程から叫びっぱなしである。このままだと、レニーちゃんが怒鳴り込んでくる。他の客に迷惑だ、と言って……。

 なので、慌てて遮音結界を展開したマイル。

 そして、まじまじと小鳥を見詰めると……。

(……接合部の出っ張り。これって、リベット?

 金属の光沢そのままで、角張ったデザイン。ロボットであることを隠す気、皆無ですよね……。

 というか、まるで、小鳥型サポートロボットの、チカ……)


「あれ? この鳥、何かおかしくないかい? 何だか金属的な……」

 メーヴィスがそう言いかけた時、小鳥が視線を上方45度に向け、その両眼から光を発した。

 そしてその光が空中に映像を結び、その映像がぺこりと頭を下げた。

 そう、本体と同じ、小鳥の姿の映像が……。

『コンニチハ……』

「「「ひいいいぃ、シャベッタアアアアァ~~!!」」」


「スワニーですかっ! そして、映像も本体と同じ姿なら、わざわざ映写する必要がありませんよっ! 本体がそのまま喋りなさいよっっっ!!」


 マイル、なぜだか激おこであった……。



ななな、何と!

『のうきん』、PVページ・ビュー数、4億突破!(^^)/


4億ですよ、4億!

延べ、4億回読んでもらえたわけですよ、各話数の合計で!!


マイル「凄いですっ! 日本人全員が3話ずつ読んでますよっ!!(^^)/」


レーナ「そんなワケないでしょ! 512話あるんだから、ひとりで512PV、しかも何度も読み返してるから、読者数はもっと少ないわよ!」


メーヴィス「でも、何度も読み返してもらえるって、それはそれで凄いことなんじゃないかな?」


レーナ「うっ、そ、それは確かに……」


ポーリン「ありがたいことですよね……」


マイル「次は、5億PVですよっ! 皆さん、頑張りますよっ!」


「「「「お~~!!」」」」

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― 新着の感想 ―
[一言] スワニーって名前で鳥型って・・・キャシャーン?
[一言] 「エンディング前に言いたいことがあるんだけど。」 【そんな、遺言みたいな……。】 「いや、誰も触れてないけど、時空の割れ目から異種古龍が出てきたら普通に詰みだよね。」 【……】 「メカ小鳥が…
[良い点] 数ヶ月経過したって、マイルはそろそろ14歳になってそうな。 でもマイルは幼女のままが良いので、何十年たっても歳とらない、国民的アニメを目指してください。 四次元ホ○ケット持ってますし。
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