105話 武闘会-予選
ジュラの大森林に住む魔物種族代表達の謁見に続き、ジュラの大森林周辺国家の代表団の挨拶も滞りなく終了した。
昨夜は各国の代表団が一同に会し、慣れない形式であっただろうが、無事に宴会を開催する事も出来た。
重畳である。
各国の代表からは、本当に挨拶しか受けてはいない。
実務レベルでの協議や要望は、リグルドやミョルマイルが話しを聞いて纏めてくれている。
俺に直接物事を言う事は、暗黙の内に禁止したようだ。
流石だ。
出来る男達である。
ぶっちゃけ、支援だなんだと頼まれた所で、ああそう? としか答えようも無い。
今後上手く付き合っていけるなら、可能な限り支援するのは吝かでは無いのだが、俺がそういう態度に出るのを見越して直接対応をさせないようにしたのだと思う。
何でもかんでも安請け合いするな! という事か。
確かに、出来る出来ないはおいておいても、それを調整し実行させる行政府の手が足りない。
勝手に仕事を増やされても処理仕切れないのだろう。
俺が思う以上に、全ての物事を上手く処理しているようだから、ついつい甘えてしまっていた。
そんな訳で、実際に会話したのは、ブルムンド国王とドワーフ王の二人だけである。
昨日、到着と同時にブルムンド国王は面会を申し出て来て、エルフ達の一件で俺に謝罪を行なったのだ。
謝罪と言っても大げさなものでは無い。
今後の管理を強化するという約束と、協定は必ず守るという確認を行う事で、暗に先日の件を謝罪した形である。
小国とは言え、わざわざ王その人が招待に応じてやって来たのだ。
その事をもって、謝罪としては十分だろう。
ドワーフ王は、昨日の昼間に到着している。
どうやら、昼間は町の開発具合を見て回っていたようだ。
下水処理の施設等を熱心に観察していたらしい。
他にも、思いつくまま造らせた施設や、建設中の軌道を食い入るように眺めていたのだとか。
そんな感じで、昼間は会う機会は無かったのだ。
しかし、昨夜の酒宴の席で置物だった俺の元にやって来て、
「久しぶりだな、リムル……いや、リムル殿。
この酒は旨いな。是非とも、作り方を教えて貰いたいものだ!」
流石に人の姿をして一同を観察していたのだが、そんな俺に麦酒片手にやって来て開口一番に言い放ったのだ。
だが、目的は酒だけでは無さそうだった。
大分飲んでいるようだったが、目が酔ってはいない。他国の耳目があるので公に言わなかっただけだろう。
俺に話しかけるのを牽制しあっているのか、どの国の者も話しかけては来なかったので、良い話し相手にはなったけど。
各国の代表は大臣クラス。
大国の王が話しかけている間に割り込むのは、流石に出来ない話だ。
また、俺への恐怖が抜けきってはいないというのも理由としてあるのだろう。
ファルムス軍を皆殺しにした話は、今ではどの国家も事実として認識しているのだから。
そういう中で、俺に話しかけるのは勇気がいる。
また、招待客は豪商とは言え、平民。もしくは、実力はあるが、位は低い貴族達。
代表団を差し置いて話しかける事は流石に出来ないのだろう。
結局、俺に声を掛けて来たのは、ドワーフ王だけだった。
ドワーフ王とは当たり障りの無い話しをして、会話を終えた。
ドワーフ王の目的は、俺達が友好的だという間柄を見せつける事だろう。
その結果、利に聡い者達は、俺の評価を単なる魔王から商売や取引相手としての価値を見出す事になる。
ドワーフ王なりの援護射撃なのだ。
まあ、魔物の国が発展したら、その分ドワーフ王国にも富が流れるという計算はあるのだろうが、それでも有難い話なのは間違いない。
昨夜は重要な会話を行う事は無かったが、楽しい時を過ごせたのだった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
そして現在。
一晩明けて、空は快晴。
雨でも雲を吹き飛ばして快晴にする予定だったけど。
場所は完成したての闘技場。
一万人がゆったりと観戦出来る、円形になっている。
客席には、張り出した屋根が設えられていて、直射日光を遮る仕組みになっていた。
半球形に客席事覆うその屋根は、骨の様な骨格に貼られた薄い膜のような形状をしている。
言ってみれば、不気味な雰囲気になるようにと凝った趣向をこらしてみたのだ。
目的は、単純に日よけなのだけど、誰もそうだとは思うまい。
口々に驚きの声を上げ、不気味そうに見上げている。
中には大興奮している変人もいるようだけど。
客席は満員。
全ての席が埋まっている。
ミョルマイルが手配し、観客を招待している。抜かり無しだった。
戦闘が早く終わったなら、出来立ての地下迷宮見学ツアーも企画しているらしい。
一万人を上手く誘導出来るのかは心配だが、魔物の国の手の空いた者総出で誘導を行うのだとか。
任せよう。
俺の知らない所で、色々と頑張ってくれているようだった。
闘技場の外には出店まである。
串焼きや、焼きそばといった、定番メニューも売り出している。
かき氷まであるのだ。
どれだけ準備していたのか、驚きを通りこして呆れてしまった。
ああ、焼きそば食いたい。そんな事を思った記憶はあるし、どのようなモノかシュナに問われた思い出もある。
だけど、なあ。あの会話の時に、記憶を思念伝達で伝えはしたけど、味の再現は難しいハズ。
いや、ユニークスキルの解析を駆使し、気合で再現したのだろう。粉物は小麦があるので、案外再現しやすかったのかも知れない。
寿司さえも再現出来たのだ、恐るものは無いかも知れない。
客席に囲まれた、平地部分が戦いの場である。
ここには、巨大な石を加工して埋め込んであった。
2m四方に加工された、硬岩である。
それを碁盤のように、丁寧に並べているのだ。
隙間には接着効果のある緩衝材を敷き詰めてあり、まるで一枚の岩盤のように見えるだろう。
魔力を練って皮膜状に覆って馴染ませているので、より強度を増している。
通常の硬岩でさえ、コンクリートの300倍以上の硬さを持つ。
この床に敷き詰められたモノは、コンクリートの1万倍の強度を有しているだろう。
それが厚み2mもあるのだ。核シェルターもビックリの頑丈さである。
実際に実験した訳では無いが、核撃魔法なら直撃を受けても問題無いだろう。
物理的に頑丈にしているので、魔法の補助を受けた現状では、破壊困難な建造物になっている。
その床に描かれた魔法陣部分が、戦闘区域となる。
今後の戦闘訓練にも使用するので、かなり広大な広さにしてあった。
客席の足元にまで魔法陣は描かれている、大規模魔法陣なのだ。
その円の内側に、一回り小さく直径500m程度の円が描かれている。
それが今回の武闘会の舞台であった。
二重結界(実際はもっと複数)にて覆った内部で、戦闘を行うのである。
今回は、聖騎士の皆さんに協力をお願いして、聖結界も張って貰っている。
客席に被弾しないように配慮しているのだ。
通過防止結界なので、能力制限は発動しない。
魔素を封じていないので、高出力の魔法では揺らぐ恐れもあるのだが、そこは別の結界で抑えている。
俺の究極能力『誓約之王』による、絶対防壁だ。
本当はこれだけでいいのだが、滅多に見せたくないので、聖結界を隠れ蓑に発動する事にしたのだ。
これに気付く者は居ないと思う。
発動は一瞬なので、聖結界を破る威力の攻撃が出た時だけ、発動する予定だった。
これだけ念を入れておけば問題無いだろう。
完全に予測不能だった、聖属性攻撃もある程度予想付くようになっているし、まあ問題あるまい。
会場は熱気に包まれている。
それはそうだろう。
この世界にも武闘会は存在するらしいが、ここまでの規模の物では無い。
イングラシア王国で年毎に開催されているそうで、冒険者のランク別で優勝者を決めるものなのだそうだ。
俺が滞在していた頃は時期が合わずにその存在に気づかなかった。
とは言え、王都の訓練場を利用したもので、一種のお祭り騒ぎである。
この闘技場のように、段差椅子を設けての見世物としての性質を持たないので、一般客は屋根の上や柱の上、高い地点から遠目で見るしか出来ないそうだ。
今回は、四方に貼られたスクリーンに、戦闘状況を拡大して実況出来るようにしている。
光学魔法の応用で、拡大投影など簡単な事なのだ。
魔道具で行うので、然程の手間も掛からない。いい宣伝になるだろう。
こうした地道な所でも、営業を怠らないのが、元サラリーマンの性と言えた。
さて、そろそろである。
俺は立ち上がり、拡声器を手に持った。
「初めまして、俺、いや余が魔王リムルです、である。
………………。
もういいや、面倒臭い。
俺が魔王リムルだ、宜しく。
ええ、本日は、我が国の招きに応じてくれて嬉しく思う。
今後、この国で様々な催しを開催する予定なので、その第一弾として皆さんに楽しんで頂ければ幸いだ。
俺は、人とも仲良く暮らして行きたいと考えている。
俺達が人と魔物と争うよりも、手を取り合い協力する方がより良い未来が待っていると思うからだ。
中には、俺が魔王だからと警戒する者も居ると思うけど、国には素直に思うまま感じたままを伝えて欲しい。
貴卿等に俺の考えを押し付ける意思は無い。
協力出来ると思うなら、嬉しい。しかし、俺が信じられないなら、それは仕方ない。
それは、貴方方の国の判断だろう。
別に、手を取り合わない国を攻めるとか、そういう事は断じてしない。
ただし、俺達が魔物だからと、不平等を押し付けて来たり、討伐という名目で戦争を仕掛けて来るようなら、一切容赦はしない。
この言葉もまた、俺の思うままである。
脅しと受け取られるかも知れないが、正直な気持ちなのだ。
戦争は嫌いだが、仕掛けられたら躊躇はしない。
今日から始まる武闘会にて、我が国の戦力の一端が理解出来ると思う。
俺の言葉と同時に、それぞれの主に伝えて欲しい。
貴卿等が、賢明な判断を下す事を祈りつつ、開会の挨拶とさせて貰う」
正直過ぎるか?
だが、まあいい。
所詮、成り上がりの俺に、王侯貴族らしい挨拶など出来るわけ無いのだから。
しかし、それでも。
会場のあちこちで、まばらな拍手が起きている。
俺の配下だけでは無く、一部の国の重鎮や、豪商、付き合いの無い者の中にも拍手してくれた者がいた。
今はそれで満足だ。
最初から信じられると、その方が不気味だしな。
俺達の意図は伝えた。
後は、それがどういう反応を示すか、それだけである。
こうして、盛大とは決して言え無いながらも、会場を覆う拍手によって武闘会の予選が開幕したのであった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
さて、今回の大会予選の形式は、バトルロイヤル。
応募者は、それなりに振い落しているので、全員で150名程の参加者が残っている。
本戦には後3名出場者が必要なので、この150名から選出する必要があった。
この人数を50名づつで組分けを行い、各グループで一人づつを本戦出場選手と認定する事にする。
午前に一試合、午後から二試合の予定だった。
試合と言ってもバトルロイヤル。
運が重要になってくるだろう。
登録順で適当に組分けたから、仲間同士で協力も可能なのだが、出場権利は一人しか居ない。
さて、どうなるか。
ワクワクしつつ、早速最初の第一試合開始である。
中央に選手達が入場して来た。
皆、癖の強そうな顔立ちをしている。
この組の中に見覚えのある者が二人居た。牛頭と馬頭である。
どうせ、対抗して出場を申し込み、同じ組になったのだろう。
本戦に二人が上がる事は無くなった。勝った方を30階のボスに採用しよう。なんなら交代制でもいいだけど。
まあ、それもこれもコイツ等の強さを見てからである。
二人はそれぞれ周囲の魔物達を薙ぎ払って、無双状態だった。
何体か"A-"クラスの魔獣が居たが、やはりそこは上位種族。この面子の中では突出していた。
そして、お互いに周りの魔物を一掃し、残るは二人だけになる。
ここまで10分もかかってはいない。
観客も、壮絶な魔物同士の戦闘に興奮しきりである。
何しろ、このレベルの魔物達の戦闘を、こんな至近距離で観戦する機会など滅多にある事では無いのだから。
牛頭と馬頭は中央で睨みあい、罵りあう。
「おう、馬頭よ。最初っから、俺達二人だけで決着をつけるべきだったな。
長い因縁も今日で終わりだ、覚悟しな」
「馬鹿を言うな、牛頭。魔王リムル様の下で働くのは、この俺よ!
貴様は隠居でもして、精々のんびり暮らすがいいさ」
そして、唐突に二人の戦いが始まった。
最早、前座は終わり、二人の見せ場とも言える舞台となる。
お互いに力型であり、盾と斧、盾と短槍を構えて激しい戦いを見せていた。
妖術を駆使するより、己の肉体で闘うのが似合っている。
力を込め、叩き付けるように振り下ろす大斧を、手に持つ盾で受け止め押し返す。
身体が崩れた所を、すかさず槍の一撃が襲うが、バックステップで難なく躱わす。
二人になるまで10分しか掛からなかったのに、もう20分近く互角の攻防が繰り広げられていた。
100年争ってきただけあり、なかなか勝負がつきそうではない。
観客もその凄まじい戦いに魅入られている。
そりゃまあ、Aランク同士の戦闘なんて、一生見る事が出来ないのが普通なのだから。
見事な戦いぶり、勝負が長引くのも実力伯仲だからだ。
面白い戦い。だが、勝負は唐突に幕引きとなる。
『これで終わりだ!』
二人が勝負に移った。
大斧を力一杯投擲する牛頭。その一撃は岩をも砕く破壊の力を込めて、受け止める武器ごと相手を倒すと思われた。
しかし、馬頭は不敵に嗤う。
瞬刺突の要領で、一瞬で間合いを詰める。
そのまま投擲直後の大斧を左腕で受け止めた。左腕が弾けて宙を舞う。
だが、馬頭は牛頭の懐に潜り込み、回避不能の瞬刺突の体勢。
左腕を犠牲にし、勝利を掴む作戦。この勝負、馬頭の勝ちかと思われたその時、
「甘いわ! 雷撃角」
そう叫び、頭の角で馬頭の頭に頭突きを仕掛けた。
その角は長さが倍以上に伸びており、馬頭の右目と右腕に突き刺さる。
これが勝負の決め手となった。右手に攻撃を受けて、瞬刺突の軌道がそれたのだ。
更に、角による攻撃を受けた際、雷による追加ダメージを受けて血が沸騰した様子。
牛頭の勝利であった。
というか、あれ、生きてるのか? だが……、あんなにあからさまに怪しい角を警戒しないとは、馬頭の自業自得か。
馬頭は当たり前のように生きていたようだ。
次は勝つ! と、息巻いていたらしい。元気なものである。
だが、勝負は終わった。
まず一人、牛頭の勝ち抜きである。
最初を飾るのに相応しい、良い勝負だった。
昼休憩も終わり、次の試合の開始である。
表の屋台も好評だったようで何よりだ。
馬車で町に戻って食べてきた者達も居たようだし、各人様々である。
さて、次の選手が入って来た。
あ! 俺は声を出しそうになる。この試合、一瞬で終わると判ったからだ。
何しろ、見た事のある三人組が見えたのだ。
長身でスリムだが、引き締まった体躯の者。
大柄で筋肉の鎧のような体躯の者。
大柄というより、最早太っていると言える体躯の者。
嘗て、魔王達の宴の会場で出会ったダグリュールの息子達だった。
あいつ等、旧魔王並みの魔素量を有している。
戦闘技術がお粗末だったから、シオンに難なく捻られていたけど、この予備戦に出るならば圧倒的過ぎた。
牛頭と馬頭と比べても圧倒的なのだ。
寧ろ、コイツ等3名が本戦に出た方がいいレベルだった。
鍛えてないなら、いい噛ませになってくれるのだけど、鍛えているなら油断出来ない。かな?
こんな短い期間では、そこまでパワーアップはしないだろう。
何しろ、着ている服に
『我等、シオン親衛隊!』
とか、何と言うか馬鹿か? と聞きたくなるような文字が書かれているのだから。
なんか、大丈夫か? と問い詰めたいが、知らなければシオンは知的秘書に見える。
完全に見た目に騙されたパターンなのだろう。
もしくは、殴られて目覚めた変態なのかも知れない。
知りたくない世界である。
結果は思った通り。
5分どころか、一分掛からずに全員倒していた。
長兄が本戦出場するようだ。3人の中で一番強いのだろう。
こうして、二戦目は面白みも無く終わった訳だが……
観客にとってはそうでも無かったらしい。
闘技場は大興奮で、熱気に包まれていた。
Aランクどころか、魔王クラスの戦力なのだ。
要は、商人が知るレベルの凶悪な魔獣が、為す術も無く一瞬で倒されていれば、その強さが予想できずとも理解は出来たと言う事。
口々に興奮して、何やら叫んでいた。
それだけ叫ぶと、今夜もさぞかし麦酒が美味いだろう。
さて、残りは本日の最終戦。
最後の選手達に目を向ける。
珍しい事に、人間も見える。
聖騎士では無いようだし、大丈夫だろうか?
「おい、人間もいるみたいだけど、大丈夫か?」
と傍に控えていたミョルマイルに聞くと、
「ああ、あの方々は有名らしいのですよ。
イングラシア王国のAクラス武闘会での優勝経験もあるそうです。
西の勇者とその御一行様でして、何でも魔王を討伐すると仰ってました」
「その魔王って、俺の事なんじゃあ……?」
「え? そうなのですか?
ともかく、大会で優勝してからじゃないと話にならないと説明したら、ぜひ参加すると仰られたので……
許可しまして、一般参加を認めたのです。
当然、参加料として、一人銀貨20枚頂ました。
実の所、本物かどうかも判明しませんので……
本物ならば、勇者の名の通り、なかなかの強者と聞いております。
聖騎士筆頭に匹敵するらしいですぞ?」
筆頭って、ヒナタに匹敵するってか?
あの若造が? 有り得ないだろ。
金ピカの鎧を身に纏い、全身を純白で統一している。
長い金髪を後ろで束ねて、いかにもモテそうだ。その周囲を5名の者が守っている。
勇者パーティー御一行様、か。
本物なら面白いけど。
試合が始まった。
勇者はパーティなのが幸いして、というよりも圧倒的に有利に働いて、快進撃を見せている。
会場の観客席の彼方此方から、
「おい、あれは西の勇者じゃあ?」
「おお、マサユキ様だ! 西の勇者、マサユキ様だぞ!」
「さすが、流麗な剣と例えられるだけあって、美しい戦いぶり……」
と言った声が聞こえ始める。
え? マサユキ? もしかして、"異世界人"なのか?
言われて注意して観察して見る。カツラだった。
あの金髪、カツラかよ! っと、ツッコンでる場合じゃない。
流麗な剣って、アイツまだ剣持ってるだけで闘ってないじゃねーか。
周囲の仲間が活躍しているが、アイツは何もやっちゃいない。
そうこうしている内に、勝負は終わっていた。
仲間の活躍で、勇者マサユキが何もしない内に……。
仲間達はマサユキに跪き、勇者マサユキが本戦出場である。
大丈夫か? まさか、ハッタリ小僧なんじゃ……
観客の黄色い声援も飛び交っている。
大人気のようで、少し心配になる。
主人公補正で、何もしてないのに評価されているだけなら、本戦はかなりヤバイだろう。
大丈夫だろうな? 俺は少しだけ、勇者マサユキが心配になったのだった。
こうして予選は終わり、本戦出場選手が出揃ったのだ。