悪役令嬢・チャンネル・ショッピング
悪役令嬢・チャンネル・ショッピング!
さて今回はどんな商品が出てくるのでしょうか?
「さて、今回ご紹介するのは仲が悪くなった相手がいる方におすすめな商品のご紹介です」
「うわ、私にぴったりですね! 私も仲が悪くなった彼氏がいるから、そういう商品が欲しかったんですよ」
「今回は私、男爵令嬢のネルカが取材に行ってきました。VTRをどうぞ」
◆
「どうもこんにちは。私は今、大手学園のディアモンド魔法学園に来ております! 今回は悪役令嬢のフリーダさんと、とっておきな商品をご紹介します!」
「よろしくお願いいたしますわ」
「さて、フリーダさん。その商品とはいったい何なんでしょうか?」
「この商品は悪役令嬢を数々ヒットさせてきた私の所属するマーシャル家とディアモンド魔法学園が自信を持ってご紹介するコラボ商品ですわ」
「それはいったい……」
と、その時。突如二人の前にイケメン王子様が近づいてきました!
「あら、ダーメイド王子。いったい何の用ですの?」
「……貴様。ネルカをずっといじめていたようだな」
「何のことですの? 私、何も存じ上げませんわ」
「嘘を付け! 貴様の弟から聞いた。証拠もきちんとこちらにあるぞ!」
「そ、そんな」
「今日をもって、婚約を破棄させてもらう! もうネルカに近寄るな!」
そう言って、イケメン王子様は立ち去っていきました。
「フリーダさん、今のはいったい……」
「はい。これが我々が自信を持ってお勧めする商品、『婚約破棄』ですわ」
「婚約破棄!?」
「はい、今までは悪役令嬢にしか入手できなかった貴重な商品だったのですが、今回は特別に皆様にお手ごろな価格で入手できるよう我々が交渉に交渉を重ね実現しました」
「うわぁ……。私、ずっと婚約破棄に憧れていたんですよね! 王子は別に嫌いじゃないんですが、一度やってみたいと言うか!」
「こちらの商品はですね、婚約者や注文者本人の環境によって一つ一つオーダーメイドで調達する特別な商品なんですの」
「オーダーメイド! これまたそそられる要素ですね!」
「弟がいる方なら先ほどのように弟に悪事をばらされたり、本人が屑ならば性格の不一致で婚約破棄されたり。それぞれの人にそれぞれの婚約破棄をご用意いたしますわ」
「へぇー! でもそれってすごい手間じゃないですか?」
「はい、そのため今までは悪役令嬢のみの受注販売でした。ですが今回は特別に、皆様にもご注文ができるようスタッフを増員して対応いたしますわ!」
「うわー、すごい!」
「更に本来はコストがかかってしまう物なんですが、今回はマーシャル家とディアモンド魔法学園の企業努力により、ギリギリのギリギリまでコストカットに成功いたしましたわ!」
「そうなんですか! で、肝心のお値段は……?」
「はい、こちらの商品、送料と消費税込みでなんと、なんと! ……57万8800円ですわ!」
「えっ、嘘!? そんなにお買い得でいいんですか!?」
「いいんです! 今回だけの特別価格ですわ!」
「うわ~、うわ~。これはもう私も明日から婚約破棄ライフが堪能できますね~」
「存分に堪能してくださいませ。さぁ! これで貴方も悪役令嬢ですわ!」
……と会話していると、再びイケメン王子様がやってきました。
「あら、ダーメイド王子。今度はいったい何の用ですの?」
「先ほど、学園長に相談したところ、今回の件を重く受け止めた。貴様は今日からこの学園の生徒ではなくなった!」
「な、なんですって!?」
「今日中に荷物をまとめ、この学園から出ていけ! いいな!?」
そう言って、イケメン王子様は再び立ち去っていきました。
「フリーダさん、今のはいったい……」
「はい、こちらは悪役令嬢に販売している商品の一つ。『学園追放』ですわ」
「あぁ! あのお馴染みの!」
「こちらの商品もすべてオーダーメイドで、皆さんが通ってらっしゃる学園に合わせて制作しておりますわ」
「凄いですねー!」
「マーシャル家とディアモンド魔法学園の総力を駆使し、確実かつ大胆に学校から追放される特別商品ですわ。まぁ悪役令嬢にしか販売しておりませんので、一般の方には入手できませんけどね」
「……フリーダさん。一つお願いしたいことがあるんですが」
「あら、なんですの? 私悪役令嬢ですから聞くとは限りませんわよ?」
「こちらの『学園追放』も、セットで入手できるようにしてくれませんかね……?」
「まぁずうずうしい! 『婚約破棄』でお買い得とか言ったそばから、更に限定商品を追加しようとするだなんて!」
「ご、ごめんなさ~い。でも、学園追放とか皆さんも憧れてると思うんですよ~……」
「……分かりましたわ! 今回、私が一肌脱ぎますわ!」
「え!? と言う事はまさか……」
「はい。『婚約破棄』に更に『学園追放』をセットに致しますわ! そしてお値段は……なんとそのまま! 57万8800円ですわ!」
「す、スゴイスゴイ! ここまでしてくれるなんて夢のようです!」
「悪役令嬢にしか手に入らない商品2つが、今回だけ手に入りますわ! さぁ、皆さんガンガンお買いになって!」
しかしネルカ令嬢のずうずうしさはさらにヒートアップ!
「フリーダさん。これだけでも夢のようにお得ですが、それでも買わない層ってのも出ると思うんですよ」
「あら、失礼ね。でも確かにいらない人にいらないかもしれませんわねぇ」
「ですからそういう人たちのために……もう一品! 追加してください!」
「あなた図々しいにもほどがありますわねー。合計3品このお得な値段で売れと言うんですの?」
「……はい」
「正直でよろしいですわ。ですがこれは私の一存では決められませんので、上司と交渉してきますわ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
……その後、フリーダ令嬢は5分間の交渉を重ね……
「交渉が終わりましたわ」
「……ゴクリ」
「今回は本当の本当に特別に……3品目もセットでご用意いたしますわ!」
「やったー! で、その商品ってなんですか!?」
「それは……」
……と会話していると、またまたイケメン王子様がやってきました。
「あら、ダーメイド王子。今度はいったい何の用ですの?」
「ゼェ、ゼェ。きゅ、急にこれをやらねばと言う思考が脳裏によぎってな。走ってこちらに来た」
「で、やらねばと思ったことってなんですの?」
「き、貴様らマーシャル家は今日から爵位はく奪だ! 王家に無礼を働いたのだから、当然だろう!」
「ワァオ!」
「くっ。私はいったいどうしたのだろうか。こんな頻繁にお前に会いに来るなんて……」
そう言って、イケメン王子様は再び立ち去っていきました。
「フリーダさん。今のってまさか……」
「はい。今のが3品目の商品、『爵位はく奪』ですわ」
「えぇっ!? これが3品目なんですか!?」
「えぇ。人間だれしも、自分の爵位を放棄したい時ってありますわよね? 本来なら悪役令嬢しか爵位はく奪されませんが、今回は特別に特別を重ね、一般の方にも爵位はく奪してくださるよう交渉に成功いたしましたわ!」
「すっごーい! 私も爵位、正直いらなかったんですよー!」
「こちらの『爵位はく奪』、『婚約破棄』に更に『学園追放』。これら全てセットにして! ……やはりお値段そのまま!57万8900円ですわ!」
「……! っ! っ! っっっ!!!!!!」
「あらあら。衝撃で言葉も出ませんか」
「素敵! フリーダさん大好き! これはもう買うしかないです!」
「おほほ。と言う訳で皆さん、ガンガンご注文お願いいたしますわ!」
◆
「と言う訳でこちらの3商品、実際に私も使ってみました!」
「えぇ~、ずるい! で、で? どうだったんですか?」
「はい。使って早々、王子が荒い呼吸たててやってきて『え、えーっと……な、なんとなくお前を婚約破棄、学園追放、爵位はく奪する!』って言ってきてくれました。こちらの商品の威力、その身をもって体験しました」
「へー! オーダーメイドだからきっちりできないと思ったんですが、きちんと効果が発揮するんですねー!」
「……そして、それだけじゃないんです。私、実はVTRの後に更に交渉を重ねました!」
「えっ!?」
「その結果! この3商品に更に更に……『王子の王籍はく奪』もセットでご提供いたします!」
「マジですか!?」
「マジです! かく言うダーメイド王子も、きっちり王籍はく奪されました! 王子もこれには『私が何をしたと言うんだ!?』と大喜びです!」
「すっごーい! みんな幸せですね!」
「『婚約破棄』に『学園追放』、更に『爵位はく奪』。そして『王子の王籍はく奪』もセットにして、お値段そのまま! 570万8800円です!」
「ありがとうございます! さぁ、皆さんも今すぐご注文を!」