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賢者の孫  作者: 吉岡剛
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竜と戦いました

 オーグからバイブレーションソードによる止めを任された俺たち三人は、会話の流れのまま竜の魔物に向かって飛び出した。


 俺とミランダはバイブレーションソード一本だが、トニーは二刀流だ。


「やっぱ格好いいなそれ」

「シンもやってみるかい?」

「うわ、悩むわ~」

「ちょっと、それ今言うこと!?」


 俺は特に盾とか持ってないので、二刀流にすることは可能だけど、ミッシェルさんから二刀流は教わっていない。


 やったことがないことを実戦でいきなり試すのは怖い。


 けど、二刀流は格好いい。


 だからどうしようか悩んでいると、ミランダからのツッコミが入った。


「あ、ゴメン。真面目にやるわ」

「最初からそうしてよ!」

「ところでさあ、真面目にって言ってるけど」

「ん?」


 俺がミランダに謝っていると、トニーが何か言いたそうにしていた。


「どうした? トニー」

「こういう場合、普通は魔法で先制攻撃するんじゃないのかい?」

「「……」」

「馬鹿者!! いきなり突っ込む奴があるか!!」


 トニーが指摘し、俺とミランダがそのことを思い出した直後、オーグからの叱責の声が響く。


 やっべ。


 魔法で魔物の動きが止まったところを、剣で狙うのが常套手段でした。


 思わずミランダと顔を見合わせるが、残念なことにジェットブーツによる移動はとても素早く、すでに竜の近くまで来てしまった。


「「うおおおおっ!!」」

「おっと」


 魔法によって動きが止められていない竜たちは、当然俺たちに向かって攻撃をしてくる。


 直前まで気付かなかった俺とミランダは大慌てで、あらかじめ予測していたであろうトニーは余裕をもって、突進してきた暴君竜の噛みつきを躱す。


 俺の右手にトニー、左手にミランダが居たため、俺は左右に逃げ場がなく、上空に逃げた。


「あっぶね……うおおおおっ!!」


 暴君竜の噛みつきを躱して一安心かと思いきや、その後方にいた首長竜が俺に向かって噛みつき攻撃を仕掛けてきた。


 もう一度ジェットブーツを起動し、何とか首長竜の噛みつきを躱す。


 くそっ、あの首の長さは面倒だな。


 空中を飛んでも安全地帯にならない。


 首長竜の攻撃を躱して着地すると、再度オーグからの叱責の声が飛んだ。


「この馬鹿者! 止めを刺せと言ったのだ! 先制攻撃をする奴があるか!!」

「悪い!! それよりオーグ! 後ろの首長竜が邪魔だ! あれから先に討伐したいんだけど!」


 必殺、オーグの怒りの矛先をうやむやにしてしまおう作戦だ。


 実際に首長竜が邪魔なのは確かなので、嘘は言っていない。


「まったく……それでは首長竜からやるからな! キチンと止めを刺せよ!!」


 よかった、何とかうやむやにできたみたいだ。


 そしてオーグは、素早く皆に指示を出すと早速魔法による攻撃を開始した。


「それでは……撃て!!」

『はい!!』


 オーグに指示された魔法が、首長竜だけでなく、暴君竜や鎧竜と角竜にも襲い掛かる。


 魔物化し固くなっている竜の皮膚には、すんなり魔法は通らない。


 だが、皆の魔法はすでに単独で災害級の魔物を倒せるだけの力がある。


 そんな魔法をまともに食らっては、流石の魔物竜たちも大きなダメージを受け、動きを止めざるを得なかった。


「チャンス!!」


 そんな中、俺はまず首長竜に止めを刺すべくジェットブーツを起動し飛びあがったのだが、流石は最強の竜と呼ばれるだけのことはある。


 暴君竜は魔法のダメージから早々に回復し、俺に噛みついてきた。


「シン君!!」

「うわっと!!」


 後ろでシシリーの悲鳴が聞こえるが、何とか噛みつきを躱した俺は、そのまま暴君竜の頭を思い切り踏んづけた。


「踏み台にした!?」


 トールが何やら叫んでいるが、丁度いい。


 俺は暴君竜の頭を踏み台にして、そのまま首長竜に向かって飛翔する。


 首長竜は暴君竜程の耐久力を持ち合わせていなかったらしく、相当なダメージを受けている。


 これは、このまま行ける!!


「おおりゃああああああっ!!」


 思い切り降り抜いたバイブレーションソードは、丸太のような首長竜の首を一刀両断にし、首を切断された首長竜は地響きを立てながら地面に倒れ伏した。


 俺は再度ジェットブーツを駆使しながら地面に降り立ち、トニー、ミランダと並び立つ。


「さすがだねえ」

「ホント、こうもアッサリ魔物化した竜を倒すなんてね……」


 一緒に前線で剣を振るっているトニーとミランダの二人は素直に賞賛してくれる。


 けど、さっきから後ろの声も聞こえてるんだよ。


「また首狩りか」

「ホント、シン君首狩り好きだよね!」

「間違いない。ウォルフォード君は首狩り族」

「首狩り族ってなんだ!? 一番効率いいだろうがよ!!」


 オーグ、アリス、リンの非道い批評に対して思わずツッコんでしまう。


 それに、あんなに長くて太い首が目の前にあるんだ。


 普通狩るだろ?


 そんなやり取りをしていると……。


『GYWAAAAAAAAA!!!!』

「おっと」


 仲間? がやられたことに激高したのか、暴君竜をはじめ鎧竜と角竜も咆哮をあげ荒振り始めた。


「おや、魔物にも仲間意識があるのかな?」

「さあ? どうなんだろ?」

「だから二人とも、もうちょっと緊張感を持って!!」


 トニーも俺と同じことが気になったらしいのだが、ミランダはそれどころじゃないみたいだ。


 ともあれ、今回は咆哮によるダメージは受けていないようで安心した。


 さて、ミランダが平常な状態なら残りの竜を片付けて終わりにしようか。


 俺の前には暴君竜、トニーの前には鎧竜、そしてミランダの前には角竜がいる。


「これで一人一体な」

「じゃあ、二刀流にした真価を見せようかな」

「うう……その余裕が羨ましい……」


 何故か半ベソをかいているミランダだが、さっきの動きを見る限りは大丈夫だろう。


 それでは……。


「さあ……残りも片付け……」

「だから突っ込もうとするな!!」


 ……。


 そうでした!



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別作品、始めました


魔法少女と呼ばないで
― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらずシンがカッコよくて気楽で戦っている [気になる点] オーグは相変わらず大嫌いだ。いつもリーダーのように振る舞っていることは大嫌い。シンには常識はないけど、戦闘中にはよっぽどオーグ…
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