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ゴーレムの核ができました

 ゴーレム工房に戻ってきた俺はゼロフの部屋の戸を叩く。……が返事はない。


「ゼロフ兄さん、いますかー?」


 声をかけるが返事もなし。

 ついて来たレンと顔を見合わせる。


「いないのかな?」

「多分寝てるだけだろう……入りますよー」


 そう言って俺は扉を開く。

 中に入るとデータを書き殴った紙や食器類などが乱雑に積み上げられていた。

 レンがあまりの汚さに眉を顰める。

 奥に進むとベッドがあり、ゼロフが半分ずり落ちながらぐうぐうと寝息を立てていた。


「……うわぁ、こんな格好でよく寝られるね。相当疲れてたのかな?」

「毎日遅くまでやってるらしい。よほど楽しいんだろうな」


 俺も研究に勤しんでいる時はつい夜更かししてしまうからな。

 新しいことをやってる時は楽しいものだ。

 そして新発見の喜びは、またひとしおである。


「ゼロフ兄さん、起きてください」


 肩を揺すると、ゼロフは目を開けて身体を起こす。


「んあ……なんだロイドか。くああああ……」


 大きく伸びをすると、メガネを掛けて目を細める。

 まだ眠いのか、不機嫌そうだ。


「一体どうしたのだ?」

「この合金、ゴーレムの核に使えないかと思いまして」

「なんだと? 先日お前が言ってたやつだな。だが昨日の今日で何が変わると……」


 俺の渡した金属板を手に取った瞬間、ゼロフの表情が変わる。


「貸せっ!」


 ゼロフは慌てて俺から金属板を奪い取ると、両手で持って力を込めたり、ベッドの角にぶつけ始める。

 そうしてひとしきり感触を確かめた後、俺をじっと見る。


「……ちょっと待っていろ」


 そう言い残し、部屋を出ていくゼロフ。

 どうやらお気に召したようである。

 しばらく待っていると、ゼロフはアルベルトとディアンを連れ戻ってきた。


「待たせたな。今さっきロイドの持ってきた合金の強度測定を行ってみたが、カタコント合金の6.7倍の硬度があった。……正直言って驚いた。こんなものは見たことがない」


 どうやらゼロフが強度測定をしている最中に途中に二人を見つけ、連れてきたのだろう。


「全く驚いたな。新たな合金を探してくるとは言ってたが、本当に手に入れてるとは思わなかったよ。大したものだ。流石は僕の弟と言ったところかな?」

「おいおいアル兄、ロイドは俺の自慢の弟でもあるんだぜ? まぁともあれ、これなら文句はねぇよな。ゼロ兄」

「……あぁもちろんだ。やってみる価値はあるだろう」

「よしきた! それじゃあ早速これを使って核を作るぜ! ……ってそういやロディ坊、そもそもこいつはどこで手に入れてきたんだ?」

「あー……」


 ディアンに問われて言い淀む。

 しまったな。俺が作ったと言うと無駄に目立ってしまう。

 俺がやりたいのはあくまで魔術の研究。

 合成やら何やらが出来ると知られると、そちらを手伝わされてしまうかもしれない。

 だから出来るだけ目立たないようにしているのだが、ちょっと油断していた。

 どうしたものか……そうだ。


「えーとですね。実はその合金、レンが作ったんですよ」

「ええっ!? ぼ、ボクがっ!? んぐっ!」


 抗議の声を上げようとするレンの口を塞ぐ。


「えぇ、レンの能力でやってみたら出来たんですよ。びっくりしました。はは、ははは……」


 以前、レンの能力についてはアルベルトと共有している。

 もちろんざっくりとだ。

 アルベルトには後々言い訳に使えるよう、レンは色んなものを生成する能力を持っていると言っておいた。……嘘ではない。


「ほう、そうなのか。まだ小せぇのに大したもんだぜ」

「あ、あははは……そうでしょう。自慢のメイドですよ」

「ロイドぉー……?」


 レンがすごい目で見てくる。

 すまない、悪いが話を合わせてくれ。

 あとで美味しいスイーツ食わせてやるから。そう小声で言うとレンは渋々と言った顔で頷いた。


「それよりディアン兄さん、早速作業に入りませんか!?」

「あぁ、大手柄だぜ嬢ちゃん。後は俺に任せときな!」


 自信満々に胸を叩くディアン。

 ふぅ、どうやら誤魔化せたようである。


「俺も手伝いますよ」

「おうっ! ついてこいロディ坊!」


 手伝う名目で抜け出そうとディアンについて行こうとすると、


「待つんだロイド」


 アルベルトに呼び止められた。

 くっ、そう易々と見逃してはくれないか。


「……どうかしましたか? アルベルト兄さん」

「ふふふ、下手な言い訳だね。僕にはわかっているんだぞ?」

「えーと、何のことでしょう?」


 ごまかし笑いを浮かべる俺の耳元でアルベルトが囁く。


「とぼけるなって。ロイド、お前がレンちゃんに入れ知恵したんだろう? そんな能力があったとしても、何の知識もなく狙った金属を生成出来ると思えない。有力な組み合わせを何種類か見繕い、作らせたんじゃないか?」

「……あはは、バレてます?」

「ま、お前の兄だからね。それくらいわかるさ」


 ぱちんとウインクをするアルベルト。

 ふぅ、バレてないようだ。ひやひやしたぜ。

 入れ知恵どころか合成まで俺がやったんだけどな。


「もういいかよアル兄、行こうぜロイド。さっさと作業を進めてぇ!」

「おい、吾輩も行くぞ。またヘマをされてはかなわん。今度は設計段階から口を出させてもらうからな!」

「なにおう!」

「なんだ!?」


 ディアンとゼロフがまた喧嘩を始めている。

 ……ん、なんかこのやり取り最近間近でよく見ていた気がする。


「言われてるぜ、クソ天使」

「お前のことだろうバカ魔人」


 あ、ここだった。

 喧嘩するほど仲がいい、という言葉を聞いたこともあるし気にするほどでもないか。


「ふふふ、カタコント合金を超える金属を生み出すとは、やるなロイド。ふむ、しかしこの新たな合金には名が必要だろう。……そうだな、ロイドとレンの名を取って、ロディレント合金ではどうだろうか。うむ、いい名じゃないか。後で錬金協会に登録しておいてやろう」


 何やらアルベルトがブツブツ言ってる。

 ともあれ俺は、ディアンらと核の生成に取り掛かるのだった。


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