5.ツンデレは二次元だけにしてください。
結局、王様に謁見することはなかった。当然だろう流民は狂人として良い伝わっているのだ。殺される危険の方がはるかに高い。そんな危険人物に会うメリットはない。
とは言え献上品の包丁や100均のアイテムは大層気に入ってもらったようで俺は少尉の位をもらった。
この国は貴族の位が面白いことに軍隊の階級を採用している。
通常平民は軍曹までしか成れないのだが、流民とは言え平民扱いの俺が少尉なのは破格待遇なのだ。まあ、まだ部下は一人もいないんだけどね。
流民の部下に好んで成るやつはいない。何をされるか分かったものじゃないからだイルハに聞いたところによるとあらゆる犯罪をし、奪いたいものは奪い、犯したいものは犯す。それが流民なのだとか。
……ろくな人間が流れてこないな。
大体包丁が伝説の武器って、そもそもそいつなんで包丁持ってたのって話になるよね。俺のように宅配ドライバーとかなら分かるけどそれだったらもっと流民の品が流れていてもおかしくない。それがないと言うことは悪名から考えても誰かを刺し殺した犯人とかかもしれない。
そんなことを考えていると部屋がノックされた。
「どうぞ」
「こんにちはアキト。あ、アキト少尉」
イルハが笑顔で入ってきて挨拶をするがいつもの名前呼びではなく少尉と言ってくる。イルハの後ろには赤い髪の少女がいた。イルハが人を連れてくるのは珍しい。初日以来気を許してくれたのか、いつも一人で来るのに今日は護衛つきである。なにか不振な行動を執ってしまったか?
「どうしたんですかイルハさん護衛なんかつれてきて」
「護衛じゃありませんよ? あなたの部下です」
そう言うとイルハは赤髪の少女に挨拶を促した。
「不本意ですが今日から流民様の部下になります。クズハと言います。あ、よろしくしてくれなくて良いですから」
「クズハ! ちゃんと挨拶をなさい」
「なんでよ、私は嫌だって言ったでしょお姉ちゃん! 何で流民の部下にならなきゃいけないのよ。私はまだ生娘なのよ、夜の相手なんかしたくないわよ」
「ええと? 夜の相手って?」
「ふん、あんたが性欲に負けて王公貴族の子弟に手を出さないように私があてがわれたのよ」
えええ、何でそんなことになってるんだよ。別に手なんかだしませんよ。大体こんなツンツンしてる娘はちょっとおっさんの趣味じゃないですよ。こちらがお断りです。仮に今後デレることがあってもリアルツンデレとか普通に精神的にきついからね?
「ええと、チェンジで」
「な! あたしのどこが不満なわけ!」
いや、君今よろしくしなくて良いって言ったよね。
『正直、平穏な生活を乱したくないからツンデレはらないのさ』と言うのを噛み砕いていったら。大層お怒りになってそのまま居座られてしまった。
なんかすごい睨んでるし。正直イルハさんが俺の部下になってよ。
「大体なんであんたみたいな平民のおっさんが少尉なのよ!」
「はぁ。まあ、でもクズハちゃんは軍曹だから俺より下だからね?」
「私は元々と少尉よ! それに将軍の血筋なのよ! あなたなんかパパに言えば首が飛ぶわよ!」
いや、飛ぶわけないだろ。一応流民だぞ。怒らせたら面倒だし兵力として期待もしているんだから。
とは言え何でこんな娘を俺にあてがったんだ? 顔は良いけど性格最悪だぞ。俺が機嫌を悪くするとは考えなかったんだろうか?
「大体あんたみたいなおじさん私より弱いに決まってるんだから」
流民を知ってるのに流民の強さを知らないのか? 少しお灸を据えてやるか。正直うるさいし。
「うーん、じゃあクズハちゃんが勝ったら俺は永遠に君の言うことを聞くって言うことでどう?」
クズハはいやらしくニヤリと笑う。まるで自分の作戦が成功したと言わんばかりに。
「乗ったわ。負けてからやっぱり無しは聞かないからね」
「ははは、大丈夫だよ。それでクズハちゃんが負けたらどうしてくれるのかな?」
「あなたの言うことは何でも聞くわよ。抱くなりなんなりしたら良いわ」
抱くとか正直この性格の女は地雷だ。こちらがごめん被りたい。とは言え上からお前の部下だと言われて。性格が会わないので交換してくださいでわ、俺の能力不足が疑われる。
そして、なぜか大事になった。闘技場で戦うと言うことになり、貴族やら兵士たちが会場を埋め尽くした。どうやらクズハは王国でもかなりの強者らしい。そしてその美しさからかなりのファンがいるのだとか。あれ、やばい勝てるかな。
同時期に設定がかぶった作品が出たのでそちらが終わるまで休止します