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皇帝陛下との謁見

 練習を一日挟んで、謁見だ。


 荘厳なる謁見の間。神殿のような白い柱に、赤い絨毯。

 3段高い段差の上にある金色の玉座に座る銀髪の美中年。ラヴェリオ帝国皇帝、ライオネル・ラヴェリオ。

 そしてその横に立つ若く美しい白の女神……我らがハクさん。

 で、俺達は豪奢な貸衣装を身にまとい、段の下、絨毯の上で(ひざまず)いていた。

 俺を先頭に、左右にワタルとロクコ、後ろにゴゾーとロップとシキナ、さらにその後ろにニクとイチカだ。

 あと、ハクさんや皇帝の護衛として騎士団団長のサリーさんが控えており、他にも何人かの文官がいる。書記係もいるようで、これが公式の謁見というのが伝わってくるな。


(おもて)を上げよ」

「はっ」


 前日にたっぷり練習した通り顔を上げて皇帝を見る。


「ケーマ・ゴレーヌ。お主はフレイムドラゴンを退けた。相違ないか」

「は、相違ありません。……お納めください」


 俺はそう言って、フレイムドラゴンの鱗(鍛冶屋にあげた残り)とツメの欠片(お手入れしてて欠けたらしい)を文官に渡す。文官はそれを銀(たぶんミスリル)のお盆に載せて、ライオネル皇帝に届けた。

 皇帝は鱗と爪の欠片を手に取る。

 しばらく「ほほぉ」とか「これは……ふむ」とか言いつつ興味深そうに見ていたが、ハクさんがこほん、と咳払いをすると「おっと」と盆に爪の欠片を戻した。


「確かに、フレイムドラゴンの鱗と爪であった。……よかろう。では、帝国にてフレイムドラゴンの脅威を取り除いた功績により、男爵(・・)の位を授ける。同行した面々にも、冒険爵を授けよう。また、ニシミ伯爵については希望であった金貨を授ける」

「「「ありがたき幸せ」」」


 男爵。だがこれは打ち合わせ通りの爵位だ。……いや、うん。Bランク冒険者は普通、冒険爵とかいうのになるんだけど、メインの俺の功績はそれじゃ足りないんだと。ワタルも居たのに。

 下から冒険爵、騎士爵、準男爵、男爵という順なので、他の面々と比べて3段上。平民からの爵位4階級特進とか2,3回死にそうだ。……尚、男爵は子供に継承できる爵位である。ヤッタネ。


 そして、騎士爵以上を授爵した俺だけ、儀礼用の宝剣で両肩をポンポン叩かれる儀式をし、帝国に忠誠を誓う。

 ……というかこれ絶対勇者が教えた儀式だろ。マンガとかラノベとかで見たことあるやつだ。そんな風に思いつつ、練習した通りに宝剣を受け取る。

 ちなみにこの宝剣は貰えるそうだ。男爵の証にもなるらしいので帰ったら執務室に飾っとこう。……ハクさんの魔剣(監視カメラ)じゃないよな? この柄に埋め込まれた青いの、ただの宝石だよな?


 ともあれ、これで予定の工程はすべて終了、あとは解散だけだ。

 皇帝との謁見で小粋なトークなんて不要、いやはやこれだけのために帝都に呼び出されたとか、ほんっと何なんだろうね、手紙でちょいと済ませるわけには、まぁ行かないんだろうけど。


「あとの詳しいことは、文官に聞くが良い。では下が――」

「はい、ここからは私に少し時間を頂戴ね? ここから先は非公式よ」


 皇帝の発言を遮り、ハクさんがにこりと微笑んだ。

 はいきたー。ハクさんの割り込み。謁見の間にハクさんがいる時から察してたさ。

 ハクさんがスッと手を動かすと、文官たちはササーッと部屋から出ていった。これが人払いってやつか。

 残ったのは俺達と、ハクさん、皇帝、サリーさん。……俺も出ていきたいんだけどダメだよな。


「ロクコちゃん」


 呼ばれたロクコは、「えっ、どうしましょ」と目をぱちくりさせている。

 どうもこうもこの流れ、昨日用意されていた台本にあるはずもない。


「さ、こっちにおいで(・・・・・・・)

「あ、はい」


 白の女神こと、ハクさんに気安く(・・・)呼ばれてホイホイと段差を上り、ハクの下へ行くロクコ。

 おい。その段差は身分の隔絶した差を示してるって昨日作法を教えてくれた人が言ってただろ、何気軽にのぼってんのオイ。ウチのダンジョンの飾りな段差とは重みが違うんだぞ。

 というか、皇帝も「えぇぇ……」と言わんばかりに眉を顰めている。ハクさんの独断だろうこれ。絶対。


「うふふ♪」

「……あれ? あの、これって打ち合わせと違、います、よね?」


 と、ロクコはハクでない近くにいた人に聞いてみた。

 おーいロクコ、今お前が質問してる人、この国の皇帝陛下って言ってな? とっても偉い人なんだぞ? 武器屋のおっちゃんとかとは違うんだぞ? いやだからってハクさんに聞けばいいのかって言われてもアレなんだけどさ。


「…………儂に聞かれてもな。説明してくださいますか、始祖様」

「ええ勿論」


 そしてハクさんはロクコの両肩に手を置いてニコリと笑った。


「紹介しましょう、私の妹です。ロクコ、こっちはライオネル。皇帝だから適当に呼んであげてね」

「…………えーっと、よろしく、ライオネル皇帝?」

「…………お初にお目にかかります、ロクコ様」


 あれれーおっかしいぞー? 皇帝陛下がロクコに様付けしてるなんてー。……立場ぁ。


 ゴゾーたちは「あー……うん」「だろうと思った」といった顔。

 イチカとニクと、ついでにワタルは特に反応無し。「知ってた」勢だな。

 んでシキナはやっぱり訳が分かっていない顔。


「あの、ハク姉さま。私が妹って事は秘密って言ってませんでしたか?」

「今は非公式だから大丈夫よ。ロクコちゃんがここに来るのに自然な状況になったから、少しだけ割り込めたの。いいこと、皆さん、非公式ですからね。吹聴したら国家反逆罪ですよ?」


 皆、こくこくと頷いた。誰だって命は惜しい。

 皇帝も頷いてたけど、やっぱりハクさんには頭が上がらないんだろうな。


「さてライオネル」

「……何ですかな?」

「ロクコちゃんは私の大事な妹です。わかるわね?」

「……皇帝の座を明け渡せというのであれば、喜んで?」

「違うわよ」


 というか喜んで明け渡せちゃうんだ、皇帝の座。くれるといってもいらないけど。忙しそうだし。


「何かあった時には便宜を図りなさいって話よ、いいわね?」

「……そういうことであれば、わざわざこのように謁見に割り込まなくとも……」

「あなたに紹介するにはこうしないと色々うるさい連中がいるでしょう」

「確かに……始祖様のお心遣い、痛み入ります」


 あ、そこは同意するんだ。でもハクさんならダンジョンの機能を使って寝所に忍び込むなりなんなり手はあると――あ。


 もしかして、皇帝にダンジョンのこと秘密にしてる?


 まさか皇帝に? 一応この国のトップだろ? ダンジョンのこと知らないとか……ハクさんの子孫なのに?

 いやそんな。でも、確かにマスターではない、なら、言わない方が? 秘密を知るものは少ない方が良いけど……皇帝なのに?

 ……ダンジョンはハクさんの完全な制御下にある、くらいしか伝えてなかったりするのか?


 思い返せば、先日サリーさんが「ハク様の子孫ということ(・・・・・)になっている(・・・・・)」とか言ってたけど、それって実は血のつながりはないとか、色々教えていないとか、そういう意味が?

 皇帝があっさりと座を明け渡すような発言をするあたり、傀儡政権のためだけに作り出したただの駒というのもあり得る可能性ではある。


 この、こっちにダンジョン関係者以外がいる場でロクコのことを話したのも、この場で俺が余計なことを言わないようにするため? 皇帝に、万一にでもダンジョン関連の情報を流さないため?

 うっわ、そう考えたら面倒くさいことこの上ないな。どうなんだ実際。


「さてと。あまり時間を取り過ぎるとそのうるさい連中が(さえず)りだすから、解散ね。ロクコちゃん、名残惜しいけどまた後で」

「はい。ハク姉さま」


 そう言ってピョンと気軽に段差を飛び降りて戻ってくるロクコ。

 ああうん、もうお前はそれでいいよ。おかえり。



 こうして、皇帝陛下との謁見は少しアクシデントもあったが無事終了した。

 ……無事、かなぁ?


(書籍化作業はひと段落したけど確定申告しなきゃだから更新ペース戻すのはもう1週待って)

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