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1章 43話 ざまぁ回(3)

 痛い痛い痛い痛い。


 ソニアが当ててくる光の玉に、シャーラは無慈悲に貫かれていた。

 血は出ない攻撃であるが痛みはきちんとある。


 足を消滅させられ、手を消滅させられ、腹を切り裂かれ。


 ソニアは泣きながら攻撃をやめない。

 何なのこいつ!?屑の癖に!!何で私に攻撃してくるわけ!?

 激しい怒りにかられソニアを睨めば


「来ないで!来ないで!!」


 と、泣きながら攻撃をしてくるのだ。


「あんたちょっといい加減にしな!!」


 ぶわっ!!!


 言いかけた顔をそのまま光で消滅させられた。


 本来ならそこで死ねるはずなのに……シャーラの顔はまた復元する。

 顔は復元するが痛みは残ったままで、シャーラは痛みにのたうちまわった。


 なんでこんな事になってるの!?

 私は聖女で!皆に褒め称えられる存在のはずなのに!!


「ソニア、悪かったわ。シャーラが貴方ばかり可愛がると拗ねてしまったから貴方に酷い事をしてしまった。今からでもゆるし……」


 テンシアが何か言いかけてやはり首を飛ばされている。


「酷い!お母様は私に罪を押し付ける気!?」


「殺しちゃえばいいっていったのはあなたじゃない!?」


 喧嘩をはじめる二人だが……次の瞬間にはやはり首が吹っ飛び痛みだけが全身を駆け巡る。

 なんで脳がないはずなのに痛みがあるのよ!!!


 激しい痛みにシャーラは気が狂いそうだった。

 痛い痛い助けてと叫ぶがソニアの攻撃は止まらない。


 何なのよ!!何で立場が逆なのよ!!!

 ソニアを殴るのは私のはずなのに!!!!


「なんなのよ!!私が悪いっていうの!??」


 思わずシャーラが叫べば


「そんなことはありません!!!」


 声が響いた。ソニアの攻撃がピタリと止まり、シャーラはそちらを見やる。


 そこにいたのは――シャーラが愛した人。

 

 青髪で緑の瞳が美しい青年。


「ファルネ様!!」


 シャーラが叫べば、


「大丈夫です。もう心配ありませんから」


 ファルネが言いながら、シャーラの方へ歩いてくる。


 ああ、やっぱり私は物語の主役なんだ。

 自分の方に歩いてくるファルネを見てシャーラはうっとりした。


 ヒロインの危機に訪れるヒーロー。

 いまファルネが私のために命の危険をかえりみず助けに来てくれたのだ。

 これ程感動的な事があるだろうか?

 やはりソニアはシャーラにとって害虫でしかなく、シャーラを盛り上げる舞台装置でしかない。


 本当の主役は常にシャーラだ。


「ファルネさ……」


 シャーラが手を伸ばした瞬間。


 ファルネはシャーラを無視して通り過ぎた。



 ……


 …………



 ……………


 ………………え?



「私の方こそ、すみませんでした。

 貴方の気持を何も考えていなかった……」


 言ってファルネが抱きしめたのは……シャーラではなくソニアだったのだ。


 しばらく続く沈黙。


 その場にいたグラシルとテンシアの痛い視線がシャーラに突き刺さる。

 シャーラの差し出した手が虚しく宙をさまよっていた。


 その間にも二人は大好きといちゃついているのだ。

 ピエロ以外の何者でもない。


 な、なんでよりによってソニアとファルネ様が!???

 あのクズが私のファルネ様と抱き合ってるわけ!?


 な、なんでこうなるのよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!


 シャーラの悲鳴が辺りに響くのだった。


 ■□■


 いつもそうだ。


 シャーラ達に繰り出していた攻撃に巻き込まれていたグラシルは舌打ちした。

 いつだってファルネはああやって人の神経を逆なでしてくる。


 目の前で聖女といちゃつくファルネを見て、グラシルはつばを吐いた。


 ファルネは無欲な顔をして、グラシルが欲している地位や名誉などを、横から何事もなかったかのように、さらっていく。

 ラーズに贔屓されていたのも。生まれつき聖気が扱えたのも。成績がいつもグラシルより上だったのも。

 何より、学生時代グラシルを差し置いて一番女性にモテたのも。


 みんなみんな気に入らなかった。


 挙句の果てにこちらが血を流して倒れているのに、聖女と抱き合っているだと?

 人が苦しみにもがき苦しんでいる時に。

 馬鹿にするのもいい加減にしろ!!

 こうなったらあいつだけでも殺してやる!!

 グラシルが回復しつつある身体で起き上がろうとすれば。


 べちっ!!!!


 リベルの容赦ない右ストレートの一発で盛大に吹っ飛ぶのだった。


 ■□■


 テンシアは青髪の青年が現れたとき。

 シャーラの様子から助かったのかと思った。

 けれど、青髪の青年はシャーラを無視し、ソニアを抱きしめたのだ。


 ああ、結局。

 私は姉に敵わなかった。聖女は姉の子で。

 私の子供は平民の普通の子。


 もうどうしようもない。


 私は姉には勝てなかったのだ。

 激しい虚無感に襲われるがそれとこれとは話は別だ。

 とりあえずここから逃げないと。


 攻撃がやんだ今こそチャンスとテンシアが復元した体で逃げようとすれば、


『あーら☆逃げられると思っているのかしら?』


 可愛らしい少女の声が聞こえた。

 テンシアが復元した身体で起き上がろうと見上げればそこにいるのは銀色の毛並みをもつ狼と、紫髪の美少女だった。


『私の可愛い可愛い愛し子ちゃんにした仕返しをさせてもらおうかしら?

 それはもうたっぷりと♪』


 言って少女――カルディアナは微笑んだ。

 聖樹の化身とは思えぬ邪悪な笑みで。


 こうして、聖樹達の制裁の名の元に偽聖女たちは裁かれるのだった。

 

 


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