表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/95

1章 19話 暗殺者

 何故こんなことになったのだろう。

 暗殺者ランドウェルは木に巻かれ身動きできずに涙した。

 目の前では仲間の絶叫が響いている。


 ランドウェル達は今まで失敗などしたことのない暗殺者だった。

 どんなターゲットも綿密な調査と入念な準備で殺してきた。


 今回もそうするはずだった。


 聖獣の森に潜んでいる一人の神官を殺して欲しいと依頼され、まずは神官が無事なのか。

 潜伏先はどこなのか。


 それを調査しようと森に入ったところ、仲間の一人の首が消滅した。


 意味がわからずにあたりを見回せば、可愛いワンピースを着た少女がニコニコと立っていたのだ。


 そこからが悪夢のはじまりだった。

 少女は木を操った。

 少女が操る木々が、一人、また一人と容赦なく仲間を殺していった。

 暗殺者の自分が唸るほどに、的確に人間の急所を狙ってきたのだ。


 ある者は心臓を貫かれ。

 ある者は首が飛び。

 ある者は脳を貫かれた。


 なんだ!?

 こんな大規模な魔法は魔術師の最高峰といわれる黒の塔の魔術師でも出来るなどと聞いたことがないぞ!?


 ランドウェルが木々の動きに身動きできず固まっていればーー


「どうやら、あんたがリーダー格らしいね」


 そう言って目の前に銀の狼が舞い降りる。

 そこでランドウェルは理解した。

 自分たちは喧嘩を売ってはいけない相手に売ってしまったのだと。


 そうエルディアの森を守る聖女――銀の狼シリルに。



 ■□■


『倒した!倒した!!リーゼ凄い!!!』


「あー!あー!あー!」


 暗殺者たちを倒した後、リベルが嬉しそうにリーゼを背中に乗せて、きゃきゃと走り回る。

 リーゼも嬉しいのかリベルに乗せられて死体の周りを臆することなく嬉しそう、リベルとくるくる回ってはしゃいでいた。


 リーゼとリベルが褒めてほしそうに、シリルを見るので、二人を褒めれば、二人は嬉しいのかまたきゃっきゃとはしゃいでいる。


 その様子を見ていたシリルは心の中でため息をついた。


 ――聖女はその地と聖樹を守る者。

 それ故聖樹に危害を加えようとするものはたとえ同種であっても容赦なく殺さなければならない。リーゼのしたことは聖女として正しい行為だ。


 けれどーー人間は同種を殺すのを嫌がる傾向がある。

 特に女、子供はその傾向が強く自分の命が危ういときでさえ、人間を殺せない。

 同種を殺す行為を悪と決めついているからだ。

 なのにリーゼはどうだろう。

 躊躇なく人を殺してしまっているのである。

 

 教えたら、教えたとおりにそのまま実行し、死体を見ても怖がる事すらない。


 リーゼには倫理観が備わっていない。

 人間として何かがおかしい――それはシリルにもわかるのだが、シリルも思考は獣だ。

 具体的にどこがおかしいのか説明しろと言われても、人間のルールなどわかるわけがない。

 特に人間は国や時代、性別でも考え方がころころかわる。

 倫理観でさえ、同じ人間同士で多種多様にあるのだ。

 そのような人間の基準などシリルが知りようもない。


 シリルが教えた知識が間違っていた場合、リーゼはそれを訂正するのが大変そうだ。


 シリルは思う。


 あの人間の神官が目を覚ましたらーーすべて丸投げしよう……と。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

■□■宣伝■□■
★書籍化&漫画化作品★
◆クリックで関連ページへ飛べます◆

表紙絵

表紙絵

表紙絵

表紙絵

表紙絵

表紙絵

表紙絵
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ