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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第四章 王国編
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第170話

そろそろこの章も終盤へと向かっていくはずです。いやはや短いですね。

チュン、チュン、と朝を告げる小鳥達の鳴き声起こされた僕は、ふと、何故僕が自室(ここ)で寝ている現状に違和感を覚えた。


あれ......、たしか僕は輝夜と遊園地に行って......、



......遊園地?



瞬間、僕の頭にフラッシュバックしたのは......、



薄暗くてジメジメした、まるでこの世の地獄と勘違いしてしまえるような館の地下空間。


僕に優しげに声をかけてくる輝夜。


そして、天井裏から僕らを覗き見る、正体不明の赤い目をした───あの怪物の姿。



「ひぃっ───い、いや、大丈夫だ。ここは自室、罠やトラップも完全完備、まずアーマー君程度じゃ居間にすらたどり着けないカラクリ馬車のさらにその奥に位置する部屋だ。それこそあの程度の化物がたどり着けるような場所じゃ.........」



───ってあれ?



僕はそこで気づいてしまった。僕が下半身を突っ込んでいる布団がかなり盛り上がっていることに。



「それも......、あ、あったかい......だと?」



幽霊にここまでの暖かさは生み出せないだろうし、さらに言えばあの化物は明らかにこの布団じゃ足りない程度には大きかった。なにせ、どっかに進撃してる巨人くらいにはでかかったのだ。眼球しか見えなかったし。


僕はそこまで考えると、もう既に選択肢は幾つかしか残っていないだろうと思い至り、半ば確信を持ってその掛け布団を捲りあげる。




果たしてそこには、昨日デートしたばかりの輝夜と、昨日思いっきり挑発してやった浦町の姿があり、真っ赤に顔を染めた彼女らと思いっきり目が合ってしまった。



───恐らくは気絶した僕を温めるという口実のもとに、思う存分添い寝を楽しんでいたのだろうと思われる二人に対して、僕が言うことは一つだった。





「......まさか寝てる間に変なことしなかっただろうな?」





☆☆☆




その後、「だ、大丈夫だっ、キスとか、そういうことはしていないっ! た、ただ......、ちょっと抱きついてみたり、抱きついてもらったりは......ゴニョゴニョ」とかなんとか言ってきた二人の前で、仕返しとばかりにその場でわざわざ着替え始めてやったら、二人共顔を真っ赤にして部屋から出て行った。

別に抱きついてほしいなら言ってくれればいつでもやってやるのに......、全く馬鹿な奴らだ。



そんなこんなで着替え終わった僕は、赤くなった顔を冷やすために、外からは内が見えない特別性のガラスの張ってある窓を、ガラリと開ける。


瞬間、冷たい風が僕の頬を撫で、




───それに追随して大歓声が僕を襲った。




「......へっ?」



寝起きで空間把握も五メートル程度しかしていなかった僕にとって、その大歓声のモーニングコールはあまりにも頭に響きすぎた。


僕がビックリして窓をバタンと閉めると同時に、僕の部屋へと駆けてくる足音が多数聞こえて、思わず扉の方へと視線を向ける。




───果たして先程から開け放たれていた扉の向こうから現れたのは恭香とオリビア、アイギスの三人で、




「ギン! 一時間くらい前にギンとオリビアの婚約が発表されちゃったみたい!」




それはある意味、今の現状の理由に対する最適解ではあったのだが、




「し、しかも、発表したのはお父様じゃないのですうっ!」


「.........はっ?」




───残念ながら、まだまだ僕の受難は終わっていなかったらしく、





「今、マックスが宰相様に聞きに行っていますが......、ど、どうやら噂によると、キューリップ侯爵の館にて十数人の貴族達が独断で行ったことらしいです!」





そんなアイギスの少し焦った声が、僕の部屋へと谺響した。




☆☆☆




それからおよそ一時間後。


マックスがなんと、宰相本人を連れて戻ってきた。


───僕らの馬車は王城からは離れた位置に止めてあった上にこれだけの人混みだ。二人共かなり疲労困憊の様子で、今にも倒れそうな雰囲気を醸し出している。さすが親子だな。



けれども宰相さんは、僕の前まで来ると一礼し、改めて自己紹介を始めた。



「改めまして、私はこの国の宰相を努めさせて頂いておりますマキシマム、と申します。ご存知かとは思いますがマックスの父親です。いつも息子が大変なご迷惑をおかけしております......」


「こちらこそ改めまして、冒険者のギン=クラッシュベルです。彼には多大な迷惑をかけられてはいますが、それを御しきれずして冒険者は務まりませんよ。あまり気にしないでください」



マックスに対する棘ありまくりの発言だったのだが、マキシマム宰相を含めたこの居間にいる全員が全員、凍りついたかのようにフリーズしていた。


───いや、分かってるともさ。この僕がマトモな敬語を使ったのがよほど珍しいんだろ? 馬鹿にしてんのかこのクソ共。



僕は心の中の苛立ちを隠しながら、マキシマム宰相へとソファーを勧めた。

そこでハッと正気を取り戻した宰相ではあったが、ソファーに腰を下ろしてさらに目を見開いた。



「こ、このソファーは......、い、一体どこで手に入れたものですか!? 王宮の客室のソファーよりも遥かに座り心地が優れているのですが......」


「? 僕の手作りですが?」


「て、手作りっっ!?」



なにやらブツブツと「これを大量に作ってもらい我らが購入、後に各国首脳たちへと高値で売り捌けばこの度の出資も取り戻せるか......? いや、この方々との繋がりを......」と考えはじめたマキシマム宰相だったが、マックスの「おい親父」という言葉でやっと目を覚ました───この人も苦労してんだなぁ。



「コホン、今回私がここへ来たのは他でもありません。今の状況に対する王国が持つ情報と、それに準ずる見解、そして後々の動きについてをお話するためです」



そう言い終わってから、マキシマム宰相は僕の瞳を見つめて「よろしいでしょうか?」と言ってきたので、僕は恭香に録音するように念話で頼んだ後にコクリと頷いた。



そうして最初に彼が語り出したのは、貴族たちと王宮との対立についてだった。



「先日ギン様が体験したように、この国の貴族の中には数名、古来より受け継がれてきた貴族としての血統を重要視する───簡単に言えばプライドだけ高くて能のない貴族とでも言いましょうか。誠に残念ながらそういう貴族達が居るのです」



それを聞いて思い出すは、この前服屋で見かけた貴族達や、その前のキューリップ侯爵の息子───現当主か。さらにその前の廃人たち。

個人的にはその他の貴族達の頭の柔軟性を考えてしまい『いい国だ』という感情の方が強いが、それでもやはり対立はあるのだろう。



「そして、対立派の中での代表格が件のキューリップ侯爵です。今は前当主が原因不明の病(・・・・・・)に倒れた為、その息子が全権を引き受けたのですが......、あんな結果になってしまい申し訳ありません」


「いえ、この世界で有名になっていく上では少なからず通る道だと思いますのであまり気にしないでください。慰謝料も貰いすぎなくらい貰っちゃいましたしね」



僕の言葉に少しほっとした様子の宰相だったが、すぐに気を引き締めて本題へと話を進めた。



「そしてここからが現状の説明ですね。つい先程お話したキューリップ家の現当主様がやっと目を覚ましたらしく、それにカマかけて、今現在王都に滞在している対立派の貴族達が全員、キューリップ家に集結したのです。もちろん我々としても経過が気になりますし、宮廷魔導師の一人が持つ『遠見』というユニークスキルにて監視をしていたのですが......」



妙に悔しそうな表情のマキシマム宰相に変わって、その先を先程から深刻そうな顔をした恭香が話し出した。



「多分『遠見』のユニークスキルじゃ弾かれてるね(・・・・・・)。まずそんなユニークスキルじゃ話にならないし、さらに言えば本来なら(・・・・)私の全知でも弾かれるよ......。かなり事態は不味いことになってるかも」



その言葉にピクリと反応する宰相。恐らくはその遠見とやらは本当に弾かれて、その様子を見ることが出来なくなっているのだろう。


───だが、恭香の言い方には色々と違和感を感じられた。




婚約が報じられただけの割には深刻過ぎるその表情。


ユニークスキルじゃ話にならない。


本来なら。


全知でも弾かれる。


かなり不味い事態。




ついでに言えば、僕の超直感も危険信号を脳へと送ってきている。




───しかも傲慢堕天使(・・・・・)の時と同等と来た。話を聞かずとも大体の予想は出来るというものだ。




僕がそう思うとほぼ同時に恭香はこちらへと視線を移し、真剣な表情でこう告げだ。





「もう頼る頼らないとか言ってられないよ、ギン。今回はエロースを頼らなきゃいけないかもしれない」


「へ? わたし?」



びっくりして自分を指さしたエロースを傍目に、



───だって、と恭香は衝撃の事実をその後に続けた。








「今この国に、メフィストフェレスと、もう一人。メフィスト本人に隠蔽されてる正体不明の悪魔が来てる」






☆☆☆





てぅるるるる、ガチャ



とワンコール以内にその相手は電話に出た。




『はいこちらメフィスト配達便です。ご注文の品は私自身ということでよろしいですか? よろしいですね?』


「よろしくない、絶対来るんじゃねぇぞ?」


「残念無念。もう来ています」



瞬間、月光丸の居間に緊張が走った。


全ての視線は僕の背後へと向かっており、その背後にいる奴も僕を舐め腐っているのか全く気配を消していない。空間把握に映るほどだ。



───が、これは恐らくは幻影だろう。



「流石はギン殿、私の事はお見通しとは、いやはや参ってしまいますね。何気に配達便システムにもツッコミいただいてませんし」



メフィストはそう言って両手をあげながら僕の対面のソファーへと向かった。

事前に来るであろうことを察しては僕は、申し訳ないが宰相にはそこから退いてもらっており、今この机を囲んでいるのは僕とメフィストの幻影だけだ。


───いや、正確には僕の背後に一名、いつものほわほわした雰囲気が消え去った最高神が弓を構えている。流石は世界神と言ったところか、僕らの内誰ひとりとして気付けなかったコイツの登場に合わせて、彼女だけはその後頭部に弓を押し当てていたのだ。



「親友くん、この人悪意は全く感じられないけど......、正直言ってかなりヤバいよ? 完全に実力を隠してる。うちの狡知神ちゃんも全能神ちゃんから実力を隠して序列四位とかいう座に収まってるけど......、この人もそれと同じ感じがする。私とこの人が本気でやったら間違いなく下界なんて消滅するね」



───ちょーっと聞き捨てならない衝撃の新事実が聞こえた気もするが......、その後に聞こえたのもかなりの衝撃だった気がする。ま、今の絶対ゼウスも聞いてただろうし、多分ロキの奴、問い詰められるな。



僕はそこまで考えたところで、そろそろ雑念を止めることにした。



「お前は今回、僕達の敵か?」


「いえいえ、滅相も御座いません。もしも万が一貴方を消せば、私はあの方に間違いなく殴り潰されますし、それに貴方はやはり面白い。こんなにも素晴らしい方に敵対するほど私も馬鹿ではありません」



そう言ったメフィストは、チラリと僕の背後へと目を向けて、尚一層その顔の笑みを強める。まるで「次は誰をお仲間にするのです?」と言わんばかりに。


───残念、僕はこれ以上誰かを仲間にするつもりは無いんでね。これ以上やばい奴らを仲間にすると僕の身体がもたないからな。



「おや、それは残念です。私の予想ではもう一人、雪の降る日に出会うであろう魔物が従魔として仲間になるのではないか、と思うのですがね」


「おいやめろよ。何でそんなに詳細なこと予測できんだよ、なに、お前もしかして未来の僕だったりするの?」


「あ、その考えは思いつきませんでしたね。結構真面目に違います。そもそも私は根っからの悪魔ですし」



僕はちらりと暁穂へと視線を向けると呆れたような表情で首を縦に振っている。また思考の隠蔽でも解除したのだろうか?




閑話休題。




「もうこの際、お前の正体とかお前の裏にいる奴とかどうでもいいんだけどさ。お前僕に敵対しないならなんで来たの?」


「そうですね......、サタンに『部下の教育を手伝え』と頼まれまして、大悪魔ほど強くはありませんが、それなりに強い悪魔の経験値稼ぎの付き添いですね」



───経験値稼ぎ......?



僕はその不穏な言葉に思わず眉を顰める。


果たして、悪魔が経験値を稼ぐため狩る対象は一体何なのだろうかと考えて、僕の頭にはすぐに、最悪の考えが浮かんでしまった。




メフィストとソイツが、わざわざ経験値を稼ぎにこの国を訪れた理由。






「まさか......人間を狩るつもりか?」




外れてほしい、とそう祈っての言葉だったが、残念ながらメフィストは笑みを深めるだけであった。




「ご明察。生憎と私は滅多に人を殺しませんが、悪魔というのは本来、人を殺して強さを得る生き物。基本的にはサタンの許可なくしての侵攻は重罪ですし、無許可な上にむざむざと負けて帰ってきたルシファーなどはもうそれはそれは酷い目にあいましたとも」


───まぁ、逆に言えばサタンの許可さえ下りれば後は自由にできるんですけどねぇ。




僕はそれを聞くと同時に立ち上がり、換装の指輪で完全武装を整えた。




「僕はキューリップ家へと向かう。恭香は僕のサポート。白夜、輝夜、オリビア、アイギス、浦町に宰相さんを加えて第一班。レオン、マックス、暁穂、伽月、藍月、ネイルを第二班として、第一班は王宮へ、第二班は住民の避難を手伝ってくれ。エロースは......おいメフィスト、お前今どこにいる」


「流石は頭脳だけは神童ですね、今本体はキューリップ家の屋根の上に座ってブレイクタイムと洒落こんでます。寵愛神殿を私の監視に回すならばご一緒に来るべきですよ。それに混沌も来ていません。私から伝えられるのはこれ位ですかね」



なるほど、味方でもなければ敵でもない、か。場合によっては向こう側の有利に動くことも考えられる。ここはエロースを向かわせる判断で問題は無いだろう。



「良し、それじゃその通りに動いてくれ。後々の判断については各々に任せる」



僕はそう言うと同時に、本の状態へと戻った恭香を腰に吊り下げ、玄関へと歩き出した。


その際、思いっきり不満げな顔をした皆と目が合ってしまったが、残念ながら主の命令は絶対だ。従魔として破るわけには行かないだろう。





───それに、僕はまだ、お前らを守る努力をしていない。今この時点で危険な目に遭ってもいいのは、僕だけだ。





(......一応私とエロースも居るんだけどね?)




大丈夫だ、恭香は滅多な事じゃ攻撃が通らないし、エロースは強さだけなら信頼してる。ゼウスと同格だし。




「ま、お前らも死にそうになったら僕が助けてやるから、安心してついてこい」


『だーかーらー、ほんっとそう言うのやめてよね? ギンがピンチになったら即みんな呼ぶからね?』


「はいはい、死ぬつもりなんて微塵もないから安心しろ」




───それに、そろそろコイツも、目覚める頃じゃないかと思ってるし。





僕は左手の甲を見ながら、かなり速歩でドアを開け放った。


久しぶりのメフィスト登場でした。

基本的にメフィストは敵対も肩入れもしないと言った感じですね。悪魔の中では異端の中の異端です。


次回! メフィストと一緒に来ていた悪魔の正体とは!? 多分キャラはめっちゃ薄いと思います。

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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