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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第二章 冒険者編
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第92話

急展開!?

爆発音が次第に小さくなってゆき、その攻撃が終わろうとしていた。



その時だった。



バスッ、と音を立てて何かが水雷月禍の球体から飛び出してきた。


───それは、もちろんフェンリルであった。





身体中からは血が溢れ、火傷の痕がうかがえる。


息は切れ切れで、右前脚はとうに折れている。


いや、もしかしたら身体中の骨が折れているのかもしれない。



それは間違いなく、瀕死の重傷である。




───だが、恐らくはこれからが本番であろう。




『......ギン、気を付けてね?』


あぁ、分かってるさ。


ここまで追い込まれたら.........多分、奥の手を使わざるを得なくなる、ってことだろ?




ウォォォォォンッッ!!!



僕たちの考えは合っていたようで、今までで最も大きな遠吠えをあげる、フェンリル。


フェンリルの身体から溢れ出す、膨大な魔力の本流。




───同時に、その身体が輝き出す。




暫くして、その魔力が一気に膨れ上がった。


恐らくは、最初の五倍は............って、五倍!?



「ま、まさかっ!?」



魔力が五倍。なら、ほかのステータスは?




魔力だけが五倍になったのではなく、





───全ステータスが五倍になったのでは?





その可能性に、僕は至った。




───至ってしまった。



「ハ、ハハッ、これで怪我も完治しましたとか言われたら.........僕泣いちゃうかもしんないわ」



僕のその言葉に呼応するかのように、その光が尚一層輝き、そして、弾けた。


まず、間違いなく、フェンリルの"神狼化"は、完了した。





僕もそろそろ本気で行かないと不味いかな.........?







☆☆☆






魔力というものは、基本的には青色だ。



たが、その中に違う色が見える時がある。


───"青色の魔力"の中に薄らと見える"個有色"、みたいなものだろうか?



僕には、なんとなくだが、その色が見えるのだ。






まず、僕の魔力だ。


これは何となく......だけど赤色のような気がする。

『影蒼牙』を使った際、青くなった魔力に少しだけ違和感を覚えて調べてみた結果、何となく赤色のような気がした。




次に、恭香の魔力。


恐らくだが、金色なのだろう。

恭香の本体は黒地に金の装飾、というものだ。恐らくは黒が器で、金が魂なのだろう。

魂と魔力の関係は分からないが......まぁ、きっと関係あるのだろう。




次に、白夜。


間違いなく、白色───いや、銀色かもしれない。

これは時空間魔法の影響を多く受けているのだろう。

もしかしたら逆に、魔力の影響を受けて時空間魔法が発現した、ということも考えられるが、白夜の場合は間違いないだろう。




同じく、輝夜。


彼女もわかりやすいだろう。完全なる青色だ。

ナイトメア・ロード時代の、眼窩の炎の色でもあり、今のローブの模様の色でもある。あぁ、今の瞳も青だったか?

もしかしたら一番わかりやすいかもしれない。




最後に、レオン。


レオンは............うん、黒色だな。

間違いなくブラッドメタルの影響を多く受けているのだろう。完全に黒色だった。

見る前は赤かもしれないと思ったが、黒であった。

.........まぁ、正直被らなくて良かったとも思いました。




あと、オリビア、マックス、アイギスの魔力は、まだ良く分からない。魔力の色を見るには、まぁ、戦ったり魔力を消費したりするのが一番なのだが、そんな機会が無かったのが原因だろう。


───ちなみにマックスのは、魔剣の魔力が強すぎて本人の魔力が見えなかった、というだけの話だ。






さて、ここからが本題だ。





なぜ、僕はこんな話をしたか、という事について。




いや、長々と話をしたはいいけど、本題なんて一言で済むんだよな.........。




結論。





"フェンリルの魔力は、間違いなく亜麻色(・・・)だった"




ということである。






☆☆☆






光がやみ、やっと目を開けられるようになる。



そして、フェンリルの方へと目を向ける.........






「...............えっ?」





そこには、身体を二回りほど小さくした、一匹の狼がいた。



亜麻色の毛に覆われた身体は、恐らくは五メートルも無いだろうか? 三十メートル程あった白狼の姿は、既に影も形もなく、その姿は普通の狼にも見えるだろう。




───その身体から滲み出る魔力と、威圧感さえ無ければ。





突如、奴の姿がブレる。




瞬間、僕の操る不死鳥が切り刻まれる。




そして、







───ッッ!?



頭の中に今までに無いほどまでの危険反応が鳴り響く。



場所は.........胴体か!?



咄嗟に体を捻って右方向へと飛び退ると、その直後に先程まで僕の胴体があった場所を通過する、フェンリルの爪。



ど、どんな速さしてんだ!? 全く見えなかったぞ!?



『ぎ、ギン! い、今の早さだけなら軍神様並だよっ!?』


軍神テュールって最高神じゃねぇかァァァッッ!?






その間も絶え間なく僕へと訪れる爪での連打。


空間把握と超直感のおかげで何とか躱しきれているが........このままではジリ貧だろう。


────くっ、"そろそろ本気出せ"ってことか?





「それじゃあひとまずは、っと!」



次の一瞬、僕の身体を包む赤い渦。


その渦が止んだ先には、白髪軍服に赤いマントを着用し、雷鳴と暴風をまとった僕が居た。



『正義執行』と『風神雷神』、それに加えて『活性化』だ。


───『影纏』に『神化』は奥の手に取っておこう。



それにしても......風神雷神に関しては使うのは初めてのことだけど、.........もしかして滅茶苦茶強化されてないか? これって。


感覚としては影纏の最大強化───調べた結果、結局は2倍だった───には及ばないものの、恐らくは正義執行よりは強化されているのではないだろうか?


.........多分1.5倍くらい?



正義執行1.2倍+風神雷神1.5倍+活性化......1.2倍位か?



恭香、合計は?


『2.16倍だね』



うーん.........影纏してようやく互角くらい.........かな? .........少し今の状態を試してみるか。



「うぉらぁッッ!」


フェンリルが放った横薙ぎの左前脚を躱すと、僕は右拳を相手の顔面へと放った。


───ちなみに両腕はヒヒイロカネへと変化済である。



その攻撃は、フェンリルとしても十分に反応できる速度であったらしく、僕の攻撃に合わせて右前脚の爪による斬撃を僕へと放つ。





僕の拳と、フェンリルの爪が衝突し合う、





その直前、





元々のステータスも、強化倍率もフェンリルが上だ。ならば僕は、このままでは、恐らくは押し負けるだろう。


───まぁ、"このままでは" の話だが。





そう思った僕は、さらなる秘策を使うのだった。






「『ベクトル変化』ッ!!」



空間支配Lv.1

『ベクトル変化』

空間内の力の方向、強さを変化、変更する。

相手の攻撃を跳ね返したり、自分の攻撃を加速させたりすることが出来るが、相手への干渉は相手の強さに応じて難しくなる。





.........まぁ、お分かりいただけただろうか?




正真正銘、あの人(・・・)の能力である。



僕はあそこまで頭がいいわけじゃないから攻撃の反射とか、攻撃の加速、減速。簡単な方向転換くらいしか出来ないけど、それでもかなりのチート技である。



────この能力で天変地異を起こせるあの人は、やっぱり頭がおかしい(天才だ)と思います。





僕の攻撃速度を加速。


フェンリルの攻撃速度を減速。


さらに激突の衝撃をある程度まで反射。



───僕だってINT高いし並行思考持ってるんだ。これくらいは出来るんだぜ?





ドゴォォンッ!




そんな、水雷月禍と同じ程度の音が鳴り響き、僕とフェンリルの攻撃が硬直する。


......アレだけズルして互角かよ......?




だが、その硬直状態は長くは続かなかった。



右拳で爪を流して今度は左拳で撃ち込む僕───コイツ相手に先手を取らしてはいけない気がした。


それに合わせて同じく左前脚の爪で切り込むフェンリル。




ドゴォォンッ! ドゴォォンッ!




間隔をほとんど開けずに、お互いの攻撃が衝突し合う。



───それは、防御など捨てた、完全なる攻撃態勢。




ベクトルを支配し続け、相手にダメージを与えるためだけの連打を与える僕。


体に不自由を感じながらも僕の攻撃に合わせて最大威力の爪をふるってくるフェンリル。




連打、連打、連打、連打。




恐らく、今ここで影纏を発動できれば(・・・・)、僕が押し負ける事は無いのだろう。



───だが、それは可能性があれば、の話だ。



お互いがそれぞれ限界まで集中している今の状況で、少しでも他に集中力を分散してしまえば.........恐らくはその瞬間に勝負が決まる。




さらに僕たちの集中力は増し、連打もその回転力を上げてゆく。



最早、衝撃音すらも追いつかないまでの、文字通り音速を超えた連打の応酬。




いつまでも続くかのように思えた、その応酬は、



唐突に、幕を閉じることになるのだった。






「ぐぅっ!? う、腕がっ!?」





────僕の腕の破壊、という結果で。





確かに僕の腕なら一瞬で生え変わることだろう。


だが、コイツ相手にその一瞬(・・)は通用しなかった。





最悪のタイミングで僕を襲う、叩きつけの一撃。


咄嗟に回復した両腕を回して防御するのだが、残念ながらベクトル変化をする時間はなかった。



「ぐはぁっ!?」



膝でダメージを受け流そうとしたが、どうやらそんな事で流せるレベルの攻撃では無かったようだ。


地に膝をつき、さらに僕を中心として地面にヒビが入る。



『ぎ、ギンッ!?』


それは先程のような冗談のような声ではなく、それは間違いなく、本気の叫びであった。



何故ならば、今攻撃を受けている僕は、間違いなく、僕本人であるからだ。




影分身でも、ほかの能力でも、何でもない。





───完全な生身だ。





「ぐふっ......や、やばっ......」



少しでも力を抜けば.........恐らくはその瞬間に潰されてしまうだろう。もちろん影纏やベクトル変化をする暇など、あるはずもない。




正しく絶体絶命。




だが、傷口に塩を塗るかのように、フェンリルは確実に勝負を決めに来たようであった。



「ぐはぁっ!?」



突如、僕を襲う蒼炎の槍───その数およそ三本が、僕の腹に突き刺さった。


あまりの威力に後ろへと吹き飛ばされる。


それはただの偶然であったが、おかげで絶体絶命の危機から脱出することが出来たのも事実。




よし! これで影纏が.........









───あれ? 使えない......?






......ま、まさかっ!?




僕の脳裏に浮かんだのは百鬼夜行。



その条件は『太陽の光の当たる場所では使用不可能』というものだ。





太陽の光。


つまりは、熱エネルギー。




炎だ。





僕の腹には、蒼炎の槍が、未だに刺さっている。




最悪の答えが、僕の頭を過ぎる。






───もしその条件が、差はあるとしても『影魔法』のすべての魔法にあるのだとしたら.........?







「影魔法は.......熱のある所では、使えない......?」





それは、僕が最悪のタイミングで思い至った真実であった。





気付けば、フェンリルは空へと駆け上がり、合計九つもの、膨大な熱量の蒼炎を生み出しているところであった。





「ま、まずっ......」





そんな、僕の考えなどつゆ知らず────いや、知っていたのかもしれない。







ウォォォォォンッッ!!!





そんな遠吠えと共に、その九つもの蒼炎が僕の身体を捉えたのだった。






『う、嘘.........』






最後に、恭香のそんな声が、耳に届いた。

ギンはどうなってしまったのか!?


次回、分身視点とフェンリル視点です!

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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