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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第二章 冒険者編
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第89話

祝! 第100話目です!


ついでにプロローグ回でもあります!

時刻は午後五時五十分。


───あと十分で山の封印が解かれる。




東門には、既に大勢の冒険者や騎士達が集まっていた。


中にはルーシィやエルビン、それに加えて僕に最初に絡んできた冒険者パーティの姿まであった。





───その数、総勢三百人以上。





ちなみに僕は今現在、すべての準備を終え、その隊列の先頭で目を閉じて恭香とフェンリルの情報を確認し合っているところである。




『それじゃあ確認するね? 相手はEXランクの魔物、フェンリル。またの名を神狼とも言うね。日本では氷を使うみたいな風潮が流れていたみたいだけど、神狼が使うのは炎と氷。氷ももちろん使えるけどメインは炎だから気をつけてね? 吸血鬼なんだからさ』



なぜならば、不老不死になった僕ではあるが、それでも未だに弱点が幾つかあるからだ。



───不死の僕が死に至る程の弱点が。




ひとつ、全身を跡形もなく消し飛ばされる。


.........まぁ、当たり前だろう。



ひとつ、心臓に銀の弾丸や杭を打ち込まれる。


これ自体で死にはしないそうだが、回復力がかなり落ちるらしい。つまりこの状態になって攻撃されれば案外簡単に死ぬというわけだ。



ひとつ、血の全損。


どうやら回復力と共に不死力まで無くなってしまうのだとか。



そして、ひとつ、高火力の炎に燃やされながら攻撃を受ける。


問題はこれだ。


炎は吸血鬼の弱点である。

その炎に───しかも高火力の炎に身を焼かれながらも攻撃を受けると、炎のせいで回復能力が完全には発揮されないらしい。


つまりは銀の弾丸を打ち込まれた状態と同じ状態になるというわけだ。




まぁ、他にも清水のプールに五時間沈められる、とか、銀で出来た十字架を体に埋め込まれて十時間経過、とか、ニンニクを数週間食べ続けるとか、色々あるらしいが、まぁ、不可能なものばかりであった。






閑話休題。






『それでね、フェンリルって言うのは攻撃、そして速度に特化した魔物なんだよ。通常時の(・・・・)攻撃力も速度も、今の白夜ちゃん以上、と思ってもらっていいよ。その代わり防御は少しだけ薄いみたいだけど』



僕が暗殺に特化した魔力重視のアサシン。


白夜が敏捷に特化した防御重視のアタッカー。


輝夜が魔法に特化した器用さ重視のキャスター。


レオンがサポートに特化した防御特化のアタッカー。




ならばフェンリルは攻撃に特化したスピード重視アタッカー、とでも言ったところだうか?


『うん、まさにそんな感じ』



スピードもパワーも白夜以上か。





.........それで? "通常時の"って、どういう事だ?




『さっすがギンだね。私の知識によると、フェンリルにはどうやら第二形態があるらしいんだよ』




だ、第二形態っ!?







あまりの超展開に、思わず驚愕っ!







ま、まさかっ!?






“俺は変身をする度にパワー遥かに増す。それを俺はまだ二つも残している.........この意味が分かるな?”




ってやつか!?


何故か俺様口調の第二形態が言ってたアレのことかっ!?



『.........まぁ、なんでその例えを使ったのかはわからないけど、まぁ、そういう事だね。フェンリルに関してはあと一回の変身を残してる.........どういう意味か、わかるよね?』



.........はぁ、真面目な話、そこからが本番だってことだろ?



フェンリルの天敵"グレイプニル"はもちろんとして、正義執行によるアダマスの大鎌の召喚、風神雷神のスキル、神影Lv.1で使用可能なLv.4以下の影魔法。それに加えてLv.2になった魔導。



───そして場合によっては神化のスキル。



白夜に輝夜、それにレオンと共有していたスキルは統合の素材にしているため、彼女らから新しくスキルを貸してもらうことは出来なくなったが、それでもありとあらゆるスキルと魔法を使って対処しなければなるまい。



まぁ、それだけヤバイってことだろ? 簡単に言えば。



『うん、ギンが会ったって言うエルザさんが"敵"と認識するくらいには強くなるよ?』



.........なら通常時や、今の僕はエルザにとってどんな存在なんだ?



『うーん、ギンにとっての.........せいぜいがオーガかな? ギンなら数秒もかからずに素手で倒せるしょ? アーマー君みたいに』



まぁ、確かにそうだな。



.........だけどそうだとしたらマジで何者だよ、あの人。


僕とアーマー君の間にあるくらいの力量差があるってことだろ?



『ふふっ、まぁフェンリル倒せたら教えてあげるよ、人型の状態でね?』


人型.........ねぇ。言っちゃ悪いが白夜や輝夜より美人さんなのか? アイツらは顔面偏差値だけは(・・・)馬鹿みたいに高いからな。確かに恭香のことは好きだけど............ぶっちゃけどうなの?



『ふふっ、この私があの二人に負けるわけないじゃないですか。もうそりゃあ別嬪さんだよ、超絶美人だね』



.........そうなのかねぇ?


───それにしても喋り方が僕に似てきたな。








そんなことを考えた時だっただろうか。








ゴーン、ゴーン......




町の中心の時計台から、七の鐘がなる。






七の鐘。





────つまりは、午後六時。









それは、奴らが解き放たれる時刻であった。








☆☆☆







ウォォォォン!!




遠くから、狼の遠吠えが聞こえる。




同時に、隊列に緊張と動揺が走る。



───今のは間違いなく、フェンリルの遠吠えだ。




東山からここまで、ゆうに二十キロ以上離れている。

そんな距離から遠吠えが聞こえるなど、奴しか存在しないだろう。




その時だった。






(クハハハハハハッ! お前達っ! 朗報であるぞっ!)



東門にいる全員の頭の中に、どこかの中二病の笑い声が響く。

どうやら偵察に行かせていた白夜と輝夜からの連絡らしい。


───それにしてもアイツらって目立ちたがり屋だよな......。少し自重してくれやしないかな?



(カカッ! あの神狼(チキン)、魔物の群れの後ろにくっついて来ておるぞっ! 全く以て臆病者なのじゃっ!)



.........いや、賢いだけだと思うけどね。


───煽りや挑発、自分の気持ちに流されて悪手に走るのは馬鹿のすることだ。もしこれでフェンリルが襲いかかってきたのならば、それこそ今の僕の(・・・・)敵じゃない。



「おい輝夜、魔物の群れの進行方向はどうだ? 何体か違う方向に向かってたりは?」


(クハハハハハハッ! SSランクが数体違う方向に向かっておったから消し炭にしておいたぞっ!)



「「「「「け、消し炭っ!?」」」」」


僕と輝夜の会話に目を見開く一同。



.........なんだか、SSランクを消し炭にした、という発言に微塵も驚かない自分にびっくりだよ。



「それで? そいつら以外は全員こちらに向かってるって事でいいのか?」


(クハハッ! あとは任せておけい! 群れから外れた魔物がいれば我と白夜で完全には消滅させておくのでなっ!)


(ただのぅ.........今妾たちは雲の上を飛んでおるのじゃが.........間違いなく気付かれとるぞ? あの神狼には)




.........やっぱり油断は出来そうにないな。


雲の上を飛ぶ白夜、それに乗る輝夜。

かなりの距離があるのにそれに感づくとは、大した気配察知能力だ───もしかしたら嗅覚かもな?



───まぁ、気付かれていることに気付いていた二人もかなり化け物じみているのだが......まぁ、それは言わないでおこう。



「白夜、輝夜、その群れはあとどれ位でこっちに着きそうなんだ?」


(うーむ.........あと四十分くらいではないのかのぅ?)


(あぁ、我もそれくらいだと推測するぞ? 我らは引き続き偵察をするから主殿たちはしばし休んでおけよ?)


「お、おう、まぁしばらくは休ませてもらうさ。それじゃあ何か変化があったら連絡してな?」


((おーらいっ!))



そんな可愛らしい返事と同時に彼女たちとの念話は切れた。




「おいテメェらっ! あと四十分.........いや、三十分だっ! 死にたくなけりゃあ全力で休んどけっ! 無駄死には許さねぇぞッッ!!!」


後方からエルグリッドの怒声のような大声が聞こえる。


それを聞いたのか、次々と腰を下ろしていく冒険者たちに騎士達────それはブルーノやフラン、ルーシィでさえ例外では無かった。



───まぁ、あれだけの魔物の群れが迫っているんだ。人が死なない方がおかしい。その上で、死者の中に選ばれないためにも、今は文字通りの、全力で休む、に限るのだろう。






.........なぁ、恭香。今の僕ってLv.1じゃん?


(うん、そうだね)


ならさ、魔物の群れ相手にも少しくらいは経験値貰えるんだろ? なら少しくらいは本気を出して殲滅してもいいかな?


(ふふっ、フェンリル戦に響かない程度にならね? 理由は経験値目的、ってことにしておいてあげるよ)



.........なんの事だかさっぱり分からないね。






だけど、まぁ、サンキューな。










そうして、僕らは全力で休み始める。




───これから先の戦いに向けて、力を蓄えるかのように。









☆☆☆






そして、あれから四十分後。




奴らは僕達の前に姿を現した。






魔物、魔物、魔物......。


見渡す限りの魔物の群れ。


白夜たちによると、ゴブリン、コボルトはもちろん、オークやオーガなどの中型の魔物まで群れをなしてそこに加わっているらしい。



───見える範囲でも軽く5000体はいるだろう



それに相対するのは冒険者たち。


さらに街の騎士団の面々。




───その数、300人。




ハハッ、相手が10000だとしても、戦力差30倍かよ。



目を瞑って、僕はそう考える。





絶望的だ。


無謀過ぎる。


無駄死にするだけだ。


逃げるべきだ。



空間支配によって、僕の後ろに控える冒険者たちの顔からは、そんな感情が伝わって来る。




少し経って、魔物の群れの先頭が見えてきた。



先頭を来るのはゴブリンとコボルトの群れに、数体のオークである。


彼我との距離はもう既に数100メートル。

もう間もなく僕達の元へと辿り着くだろう。






僕は、1歩、前へ出る。




────さぁ、これが僕の最強への、第1歩だ。




僕はくるりと回ると、冒険者、騎士諸君に向って口を開く。



「あー、今の所、敵の数は五千六百とちょっとだ。それに対してこっちは三百ちょっと。相手がまだ増えるとして、おそらく三十倍近い戦力差になるだろう。」



突如、暗い顔になる一同。





くっくっくっ、何を暗くなってやがる?




「まぁ、大した数じゃねぇか、ハハッ!」




その言葉を聴いて、皆が顔を上げる。



そうだ、前だけ見てろ。





───今だけは、僕がお前達を導いてやる。






僕は彼らの様子に満足すると、再び魔物たちへと視線を向ける。



僕は歩を進めながら、ある魔法の詠唱を開始した。


───それは、先程恭香に教えて貰ったものだった。





1歩、僕は、道を歩む。






「『凍てつく風よ』」







2歩、僕が歩む、その道は。






「『極寒の吹雪よ』」








3歩、遠回りだらけ、障害だらけの、最悪の道だ。





「『我が意に従い......』」









4歩、だけど、僕が歩む、その道は。







「『......敵を滅せよっ!』」










5歩、










────いずれ、最強へと至る道だ。






「『ブリザード』ッッ!!」




魔導がLv.2になった状態でのその魔法は、相手の第1陣を完全に飲み込み、その群れをいとも容易く全滅させた。


───その数およそ六百。





「さぁ! みんな! 進撃開始だっ!! 人間の意地ってものを見せてやろうぜッ!!」







今日も僕は、道を進む。




それはゆったりと、それでいて回り道ばかりしている曲がりくねった道だけど。







────僕はやっぱり、今が幸せだ。

やっとここまで来ました......。


これからも頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします。



次回、フェンリル登場なるか!? 微妙な所です!

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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