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詩人、日本書紀を訳す 六

「一書の言うには・・・は、一見、同じ文の繰り返しに見えるが、少しずつ内容や言葉使いが変わっているんだ。ちょっと退屈になってきたと思うけど、わりと原文に忠実に訳しているから、生徒諸君はがまんしてその違いに気をつけながら聞くように。もう少しだから我慢我慢。オホン」

 

 詩人はさらにプリントを読み続けた。

「他の一書に言うには、二柱の神は夫婦の交わりをして、まず淡路島をもって、身内とし、大日本豊秋津島を生んだ。次に伊予の島。次に筑紫の島。次に隠岐の島と佐渡の島のふたご。次に越の島。次に大島。次に子島」

「他の一書に言うには、まず淡路島を生む。次に大日本豊秋津島。次に伊予の二名島。次に隠岐の島。次に佐渡の島。次に筑紫の島。次に壱岐の島。次に対馬」


「・・・さて、あと三条ほど、一書によればが、続くのだが、あとはまあほとんど同じ文であるから、ここは、はしょってしまおう・・・以上で、いささか退屈な講議は終わりだ・・・やれやれ。これを訳すのはかなり嫌になったよ」

 沙也香は言った。「ご苦労様です。大変で病気悪くなりそうじゃありませんか。・・・私、いままで日本書紀に目を通した事がなかったんですけど、古事記がシンプルであるのに比べて、くどいぐらい多くの書から引用しているのが、印象的ですね」

 その言葉を早川が受けて答えた「そうそう、だれでも、日本書紀がそのような書き方をしていることに最初驚くんだよ。ここでの他書の引用は十書なんだ。田沼さんの訳文を聞いていると、十書を引用するまえに、書記は書記の公式文とも言うべき文を提示しているのが解ると思う。だから単純に読もうとするならば、一書の引用を読まなければいいのだ、なんて乱暴な事もいえるのです。また、反対に公式文を読まずに、一書に言うの中の、気に入った条を繋いで行けば別の物語を読めるという多重人格みたいな所を日本書紀はもっている不思議な書なんだ」

田沼は、それを受けて言った。「そうか、だから、読むのが嫌になってしまう様な印象があるのか。難しいのでなくて、複雑な構造をしていて、理解しにくいということだね」

「そうなんです。書記は各論をそのまま読む人になげだしてくるのです」

沙也香が言った。「私、古事記は前に読んだ事があるんですけど、日本書紀の内容を知るのは今度が始めてなんです。きっと同じ記事なんだろうなと思っていましたけど、随分違うと言うことが解りました」



 


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