第五話 領主館での口撃
いつもありがとうございます。
いつの間にか一か月も空いていた……。お待たせしてすみません!
原稿がぁぁぁぁぁ!って毎日必死にやってます。
ケルメス獣王国が見え港へゆっくりと船を進めていく。
港には他の国との交易のためなのか、何隻もの大型船が停泊していた。
「こんなに早く到着するとは……。本当にカイン殿には感謝ですね。港に到着したらすぐに領主館にご案内いたします。カイン殿にはそちらに泊まってもらうように手配するつもりですから」
「そうですか、ありがとうございます」
船が港へ到着し、次々と品を下ろしているのを見ながら船を降りる。
もう日暮れということもあり、同行しているエスフォート王国から派遣された神官や冒険者たちはハグネスが手配する宿へ泊ることになっている。
カインはハグネスとともに用意された馬車に乗り領主館へと向かった。
馬車から見える街並みは港町らしく、商店などでにぎわっている。ケルメス獣王国は戦時中とはいえ、この港町はバイサス帝国からも遠く、被害もないことから平和であった。
「この港町を経由して他国の商品はケルメス獣王国各地に送られているんです。だから商人が多いんですよね。あとはその護衛をする冒険者とか……。カイン様も冒険者を兼業されているとか」
「えぇ、王都で登録してます。でも最近は領主の仕事もありますから、なかなか冒険者の依頼をこなしている時間が……」
「若くして辺境伯までなられたカイン様ならそうなりますよね」
笑みを浮かべたハグネスは前を向いた。
カインはそのまま領主館に到着するまで、初めて来た港町の街並みを楽しんだのだった。
領主館に到着したカイン達はすぐに客室に案内される。
「少し休憩したあとに、この街の領主と打ち合わせをお願いできますか? もちろん私も同席いたしますので」
「はい、迎えにきてくれれば」
ハグネスは一礼した後に部屋を退出していく。
部屋は大きなベッドが二つ並び、ソファーまで用意されている立派な部屋だった。
カインはソファーに座り、エスフォート王国で知らされた三人のことを考える。
「勇者に聖騎士、賢者か……。ユウヤさん程ではないにしろ、相当覚悟を決めないとな……。そういえば前線には出るのが禁止されていたんだっけか……。勝手に出るわけにもいかないか……」
いまだ未成年のカインは国王より前線に立ち戦争に参加するのは禁止されている。
あくまで回復魔法を使え、自分の身は自分で守ることができることから後方支援という形で同行できたのだ。
実際にはカイン一人で戦局をひっくり返し、勝利することも可能である。しかしそうするとケルメス獣王国の顔を潰しかねない。
戦争への参加で同盟国の兵士の多くが救われるとカインは理解しているが、それはバイサス帝国の兵士の多くの命を奪うという葛藤に、思い悩ませていた。
程なくして扉がノックされ、ハグネスがカインを迎えにきた。
「領主のガンダルの業務が落ち着いたので面会できることになりました。そのまま夕食になりますのでご一緒にとのことです」
「わかりました」
上着を着て装いを確認したカインはハグネスの後を歩き、ダイニングに到着した。
すでに領主のガンダルは席に着き、その両脇には家族と思われる三人が座っている。
「お待たせしました」
ハグネスが一礼するのに合わせ、カインも軽く頭を下げ、給仕に案内された席に座った。
全員着席したのを確認した領主のガンダルは立ち上がる。虎人族で大きな体格で威圧するようにカインを見定める。
「遠くからはるばるご苦労であった。わしはこの港町を治めるガンダルという、隣に座っているのは妻ハネスと子供のランダルだ」
「エスフォート王国より派遣されたカイン・フォン・シルフォード・ドリントル辺境伯です。このような席にお招きいただき感謝いたします」
カインも立ち上がり自己紹介をした後に、軽く頭を下げて席に座った。
しかしガンダルの息子と紹介された成人を迎えたであろうランダルはカインを睨みつけている。
「ふんっ、応援にきたと思ったらこんなガキか……。エスフォート王国のレベルも知れたもんだな」
ランダルの言葉にハグネスは眉根を寄せた。
「ランダル殿、カイン殿はエスフォート王国より屈指の回復魔法を使える者としてご紹介されています。そのような言葉は客人に対して失礼かと」
「ケルメス獣王国は武力があってのものだろう。戦えない臆病者は隠れて回復魔法をかけてればいいのだ」
「……失礼ですが、カイン殿はエスフォート王国でも屈指の、いや、一番の強者と聞いておりますが……」
ハグネスは国王に謁見したときにエスフォート王国で最強とも唄われている、ティファーナ騎士団長よりも強いと説明されている。
しかも自分が同行してくるにあたって、風魔法で一週間の航路を二日で走破させるほどの魔力量を持っていることを理解している。
だからこそ領主ではなく、その息子にバカにされるのは許さなかった。
「そんな細い身体で何ができると……? 俺なら一ひねりで終わってしまうぞ」
あくまで強気を崩さないランダルに領主であるガンダルは大きなため息を吐いた。
「ランダル、これから食事中だ。しかもエスフォート王国から訪ねてくれた客人に失礼であろう。シルフォード辺境伯も失礼したな。獣人は武力がそのもの魅力とされているのだ」
カインもケルメス獣王国の特性については聞いていたので、静かに頷く。
しかし自分の力を示さなければ、誰もいう事を聞かないと国王から教えられていたのだ。ただ、相手の自信がなくなるようなやりすぎには注意しろと言われていた。
弱者のままであれば、国まで舐められてしまう。それはエスフォート王国としても許されるものではない。
だからカインは一計を講じる。
「いえいえ、気にしていません。ここは前線ではない安全な港町です。ここで何を言っても所詮負け犬の遠吠えですから。あ、負け犬じゃなくて負け虎か」
カインの溶射ない言葉にその場か固まった。
ランダルの表情が固まり、そして次第に怒りからか真っ赤に染まっていく。
「上等だ! お前の力がどれだけだか見せてもらおうじゃないかっ!」
テーブルを叩き立ち上がったランダルだったが、ガンダルは止めようとはしない。
「シルフォード辺境伯、その言葉を取り消すつもりはないのか? ランダルは若いとはいえ、虎人族として高い武力を持っている。客人とはいえわしでも止めることはできんぞ」
しかしカインは首を横に振る。すぐに首都に向かうとはいえ、エスフォート王国としての力を示す必要があると感じていた。
だからこそ軽く口車にわざと乗ったのだ。
「大丈夫です。すぐに終わりますから」
カインはそう言うと席を立ったのだった。
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