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第四話 出国

Twitter等で色々とご心配おかけしました。無事に復活いたしました。


あと、今月よりコミックポルカにてスピンオフが始まっております。

佐々木あかね先生作画になります。ぜひ楽しんでいただければ!


 ケルメス獣王国まではミシンガの街から船で向かうことになっていたので、カインを含め数名の騎士や、教会から派遣された助祭などが集まっていた。

 港に停泊している船は中型の帆船であり、ハグネスの説明では大型の帆船もあるが、緊急を要するため、船足の早い中型船でエスフォート王国を訪れたということだった。

 すでに船にはミシンガの街から仕入れた食材などが運び込まれており、出発を待つばかりであった。


「カイン殿、必ず無事に帰ってくるようにな」

「はい、もちろんです」


 港でミシンガの領主でもある、レガント伯爵とカインは力強く握手をする。

 実際には船で行くよりも空を飛んでいった方が早いのだが、カイン一人が向かったところで、ケルメス獣王国側が対応できず、ハグネスと同行する必要があった。

 カインは挨拶を終え、船へと乗り込む。


「しゅっぱーーつ!」


 港に結ばれていたロープが解かれ、帆が張られるとゆっくりと船は進みだす。

 カインの人生として船は初めてであったが、前世で何度も乗ったことがあるので恐怖はない。しかし同行した騎士や教会関係者は恐怖に駆られていた。

 そんな中、船は海原へと進んでいく。


 カインはハグネスの案内で最上級の客室へと案内された。


「こちらがカイン殿の部屋になります。すぐに打ち合わせを行いたいと思っておりますのでご案内します」


 ハグネスの後を歩き、扉を潜ると大きな会議室であった。すでに数人が座っており、カインが席に着くと、船長と思われる男が海図を指さしながら話し始める。


「この海図の通り、このルートを向かう予定です。それでケルメス獣王国までの道のりですが、風の状態にもよりますが、一週間ほどで到着する予定です」


 この世界は帆船が主であることから、風かなければ船は進むことはない。しかし戦争が始まっており急を要していたことから、カインは提案する。


「僕は魔法が使えます。風魔法を使って帆に風をあてれば早く到着するのではないですか」

「その提案はありがたいのだが、そんな長時間魔法を使える者など宮廷魔導士か高位の冒険者にしかいない。初級、中級程度の魔法使いでは一時間も風を起こせば魔力切れになってしまう」


 カインの言葉に船長は否定の言葉を言う。実際に風魔法が有用であることは理解しているが、長時間維持できないことがわかっている。

 しかし、カインは普通の魔力量ではない。睡眠は必要であるが、適度な魔法を長時間続けることなど容易であった。


「それなら問題ありません。僕が帆に風を送ります。昼夜問わずは無理ですが、今は一刻を争う時です。僕も最大限に協力させてください」


 カインの頭の中では、召喚された勇者でいっぱいであった。隔絶する実力を持つ勇者たちとの闘いが長引けば確実にケルメス獣王国は疲労していく。


「カイン殿、よろしいのでしょうか? 風が良ければ到着まで短縮できると思います。舵については副船長が調整しますので、帆に風を当てていただければ問題ありません」


 話が終わり、カインはデッキにへと上がる。確かに風は受けているが、そこまで強くないため船はゆっくりと進んでいた。

 カインは魔法で風を起こし帆へと当てていく。

 しかしカインの魔法である。一般的な魔法使いと一緒のはずがなかった。段々と上がるスピード。船のスピードが上がったため、大きく巻き上がる水しぶきが船へと流れ込んでいく。揺れも次第に激しくなっていた。船体がギシギシと鳴り始め、操作していた副船長は焦ったように声を上げる。


「こんなスピードじゃ、船が壊れちまう!!」

「わかりましたっ! それならっ」


 カインはデッキに手を付け魔力を船に流し込んでいく。


『物質強化』


 硬質化された船は先ほどまでのギシギシという音が鳴りやんだ。満足したカインは、帆に魔法を当てるのを再開する。副船長は眉根を寄せたが、最優先事項はケルメス獣王国へ最短で到着することを再認識し、視線を先へと向けたのだった。

 

 ◇◇◇


 日が沈み役目を終えたカインはあてがわれた客室でハグネスと向かい合って紅茶を楽しんでいた。

「それにしてもカイン殿の魔力量はすごいですね。夕刻まで続けていたのに疲れた素振りも見せませんし」

「いえいえ、早くケルメス獣王国の助けになりたいと必死でしたから」


 実際に普段から船に乗りなれている船乗りたちは問題なかったが、エスフォート王国から同行した騎士や教会関係者は全員船酔いをし、カインが休憩の際に回復魔法をかけるまでになっていた。

 ある程度船に乗りなれているハグネスでさえも船酔いで部屋にこもってしまったので、カインは焦って回復魔法をかけていた。


「思っていたより早く到着しそうですね。先ほど船長と話しましたが、この調子なら余裕を見ても二日もあれば到着すると言っておりました」

「そうですか……。できるだけ早く到着できればと。回復魔法を使える人が多くいればそれだけ助かる人も増えますから」


 ハグネスがエスフォート王国に助けに向かう時には、すでに多くの犠牲者が出ていた。それも勇者たちによるものだ。どこの世界から召喚されたのかは不明であったが、ユウヤの後を継ぐ勇者が国同士の戦争に赴くなどあってはならないとカインは考えていた。


 次の日も朝から魔法によって快調に進む船は、日が沈む前に視界の先には大陸が見えてきたのだった。


「ケルメス獣王国が見えたぞっ! 二日で着いちまった! 最後まで気を抜くなよっ」

「「「「おうっ!」」」」


 副船長の掛け声に、船員が返事を返す。

 一週間ほどの予定であったが、カインの尽力によって二日で無事にケルメス獣王国に到着することになった。


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欧米基準の高速船(30ノット/時以上)で航行すれば良かったのにィ!www 因みに世界最速は豪国スピリット号〈約511km/h〉
[気になる点] 留学してきた皇女との話はないのか
[気になる点] 魔族の皇帝を回復魔法で癒すべきだった。 召喚の宝珠の件も教皇暗殺が帝国と神様から聞いてたからわかってると思うし、宝珠も帝国に転移すれば良い。 召喚者が気になるなら船など使わずに飛行と転…
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