第十四話 事前準備
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他の冒険者には席を外してもらい、テーブルに残ったのはカインの他、クロード、リナ、ミリィ、ニーナの五人だった。
クロードはエスフォート王国内では有名なAランクとして、幼く見えるカインもSランクだと知っている冒険者たちは反対の声は上がらなった。
「それでどうやって調べたんだ……?」
「実は――」
先ほどハーナム司教に会談したときに怪しい表情を浮かべていたので、気配を消してオリバー司祭の天幕を監視していた時に聞いた言葉をすべて話した。
話の途中から次第に全員の表情が強張っていく。
「あの野郎……。どうにかとっちめられないのか? それにしても暗部なんてあるのか。教会は……」
「今の状況だと証拠にもなりませんし、逆にこちらが教会関係者への傷害で捕まる可能性が大きいかと。暗部については僕も初めて聞きました。ハーナム司教も噂程度しか知らないらしいです」
教皇や枢機卿など、マリンフォード教の上層部しか暗部の情報は知らないのかもしれないと考えていた。教会が国を治めるのにあたって表向きは神殿騎士が、裏では暗部が動いて国をまとめているのだろうと容易に考えられる。
話を聞いたクロードは息巻くがさすがに先制攻撃をするわけにもいかなかった。
実際に証拠を残さずオリバー司祭を始末するのはカインにとっては可能なことだが、それでは尻尾切りで終わってしまうのは明白である。
そんな計画を立てるような枢機卿が教皇になったら、マリンフォード教の将来は暗いものになってしまう。
しかも教皇の近くにいるヒナタにどんな被害が及ぶかもわからない。根っこから潰さねばいけないとカインは考えている。
「まぁ……カイン、どんな襲撃がきても大丈夫だと思うか?」
「えぇ、探査を使えば監視していても気づきますからね。それに――」
カインは考えていることを伝えた。
「その手もあるか……。カインには負担かけてしまうな……」
「いえ、その方が確実につぶせますから。それでも何かあったときは僕がいないので対応をお願いします」
「……残りはみんなで頑張る」
「そうよ、カインばっかりに頼ってられないんだから」
ミリィとニーナも納得し、明日からの行動について再調整する。
作戦についてはカインが一人先行することにし、探査を使い、潜んでいると思われる暗部を確実につぶしていく簡単なものだ。
カインが先行することによって、襲撃地点と思われる場所も簡単に特定できる。
いざとなったら空を飛んだり転移魔法を使って戻ってくることもできるのが大きかった。
「明日は大丈夫だと思うから、カインは司教様と同乗してもらって事前に話しておいてくれ」
「わかりました。二日後は代わりに誰か司教様と同乗してもらえますか?」
「……私がやる」
どこから見てもニーナは楽をしたいとわかりきっているが、適役でもあるためカインは口を挿むことはない。
計画が決定したことで、解散をし明日からの準備に備えることになった。
◇◇◇
早朝、オリバー司祭は挨拶をすると早々に野営地を出発していった。
きっと工作をしているのだろうとわかっていたが、顔に出すことはしなかった。クロードだけが苦虫を噛み潰しているような表情をしてリナに咎められていた。
その日の野営地までは何事もなく進むことができた。
クロード達との最終的な打ち合わせを済ませたカインはハーナム司教の天幕を訪ねた。
ハーナム司教にカインは今後の計画を話すと、少しだけ表情を曇らせた。
「教会の必要悪だとわかってはいるのだ。だからと言ってこういった使い方をするのは確実に間違っている。そんなことをするならないほうがいい。使徒様にお手数おかけして申し訳ない……」
カインに向かってハーナム司教は頭を深々と下げた。カインが神の使徒だということは知っているが、今回はあくまで護衛としているので〝使徒〟という言葉は使ってはいない。
しかし神の代弁者としている教会上層部が暗部を使い暗殺をしているなど、ハーナム司教としては神の使徒のカインに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
カインとしては教皇選などすべてを見ていて把握している神々が神託を出せばいいと思っている。
神々が決めたことにマリンフォード教徒として納得するしかなくなる。それを伝えるのは聖女であれば誰もが納得できるだろう。実際にカインは生命神ライムから新しい教皇にふさわしい希望者について聞かされている。
しかしそれは簡単に話していいことではない。神の見る目は確かであろうが、カインも会って確信を持ちたかったのだ。
「大丈夫です。神々の意思とマリンフォード教のために」
カインはその言葉を残し、野営地から消えていった。
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