幕間 リザベートの策略
短くてすみません。
数話ストックあるので順次だしていきます。
勇者であり神でもあるユウヤ様は消え、カインも打ち合わせを終え部屋を退出していった。
部屋に残ったのはわらわとログシア兄様。
他世界ではあるが創造神でもあるユウヤ様とカインの相手をしていた気疲れからか、兄様の表情は抜け落ちていた。色々と想定を超える出来事があったのだから仕方ないと思う。
エスフォート王国との友誼を結ぶことは決まっているが、それだけではわらわは不足なのじゃ。
「それでこれからエスフォート国王宛の手紙を書く予定だが……。いつまでリザはそこにいるつもりなんだ?」
やはりそうかと思った。
――ここが勝負。
「兄様、お願いがございます。条件を追記してください。内容は――――」
「リザ、それは本気で言っているのか!? 人族とだぞ!?」
「もちろんです。わらわはこの考えを変えるつもりはない」
兄様の表情が強張る。当たり前か……。
妹を――――嫁に出すのだから。
例えカインが優秀であり、誰よりも強いとしても所詮は人族。人族より数倍の寿命を生きる魔族からしたら婚姻を結ぶことなどありえないのかもしれない。
でも、カインはきっとそれを覆し、わらわのことを満足させる人生を送らせてくれるはず。
正妻や側室などのこだわりなどわらわにはない。あるのは……カインとともに人生を過ごすこと。そして……美味しい飯を食わせてもらう。
ドリントルでの快適な生活を送ったらこの城での生活が不便と感じてしまう。何かあったらダルメシアに頼めば大概はなんとかなるしの。
「だが……。私としては出来ればこの皇国のためにだな……」
「この国を思うがこそです。人族国家と友誼を結んだとしても恒久ではない。しかしわらわがカインと婚姻を結べば人族国家が敵対してもカインは味方をしてくれるはずじゃ。カイン以上に味方になって心強い者はいると思っているのか兄様は……。しかもセト殿はカインと仲が良い。残った魔王の協力も得られるはずじゃ」
正直、カインと婚姻を結ぶためならば兄様を欺いても構わないと思っているのじゃ。しかしカイン以上に魅力的な異性など現れるはずもない。ユウヤ様とも仲が良い人族など他にはいないのだから。
兄様は少し悩んだが、決心がついたようで大きく頷いてくれた。
「わかった……。リザの気持ちを手紙に込めておく。もう部屋に戻りなさい」
「……頼んだのじゃ」
わらわは部屋を出て自分の寝室へ向かう。
部屋に入るとそのままベッドにダイブした。
「ふふふ……これでわらわもドリントルで生活することができそうなのじゃ」
絶対にカインのことを逃がさないと心に決めて眠りについた。