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第二十二話 婚姻?

 

 再召集は三日後となった。

 あまりに時間を開けてしまうと、自分の領地に戻る貴族もいるからである。

 カインは上級貴族の場所でガルムと一緒に待機していた。

 

「カイン、お前は……これからどうするつもりなんだ?」

 

 カインの隣に座るガルムは小声で問いかける。

 すでにリザベートの婚姻については国王が認めたことで正式に決定していた。同時に大使として王都に屋敷を用意して滞在することも決まっている。

 

「こればかりはもうどうにも……。僕の意思など何も認めてもらえませんからね……」

「確かにな。ここまで外堀を埋められてはどうにもなるまい。来年、成人を迎えたら同時に迎え入れることになるんだろう? 私の方でも準備はしておく」

「父上、ありがとうございます」

 

 カインが軽く頭を下げたところで、国王が登場する際に流れる音楽がホールに響き渡る。

 

 国王とマグナ宰相、そしてリザベートが現れた。席は国王の隣にすでに用意されている。

 二人が座ったところで、マグナ宰相より今回の報告をすることになった。

 

「我がエスフォート王国はベネシトス皇国と正式に同盟を結ぶこととなった。王都内に大使館を用意し、今後は貿易を含めて対応することになる」

 

 貴族たちからは歓迎の声が上がる。販路が出来ればお互いに交流を持て、自国にない商品を購入することができるし、逆に自領の特産品が売れるチャンスも増えるので、貴族たちにとっては歓迎された。

 

「次に、まずはカイン・フォン・シルフォードよ、前へ」

 

 カインは名前を呼ばれたので前へと赴き、膝をついて頭を下げる。

 

「カイン・フォン・シルフォードよ、お主はベネシトス皇国からの要望通り、こちらのリザベート殿下との婚姻をすることを認める」

 

 国王の言葉に会場の貴族一同は唖然とする。

 ベネシトス皇国との同盟については理解できるが、カインと皇女がいきなり婚姻を結ぶなどと想定の範囲を超えている。

 誰もが言葉を失うのは仕方ないのであろう。

 しかし、それがまかり通ってしまえば、シルフォード家に権力が集中してしまうのではと疑念も出てくる。

 一人の貴族から声が上がった。

 

「陛下、どうしてシルフォード辺境伯と皇女殿下が婚姻を結ぶ必要があるのでしょうか。シルフォード辺境伯はすでに王女殿下やエリック公爵令嬢、ティファーナ騎士団長との婚約をしているはず。これ以上シルフォード辺境伯が妻を娶る必要があるとは思えませぬ」

 

 カインのことを直接知らない貴族であれば誰もがそう思うであろう。実際にカインもこれ以上婚約者を増やすつもりもなかったし、今でも自分の手に余ると思っていたのだ。

 しかしすでに先日決まっていることであり、今更覆せるものではない。

 

「それについてはベネシトス皇国魔皇帝のログシア陛下からの希望であり、リザベート殿下も了承している。口を出すことではない」

「これは……失礼いたしました」

 

 国王の言葉に意見を出した貴族は頭を下げてまま下がっていく。他の貴族も顔は顰めているが、国王に楯突けるはずもなく無言となった。

 満足そうに頷いた国王はカインを見下ろす。

 

「――わかったな、カインよ」

「はい、リザベート殿下との婚姻、ありがたく受けさせていただきます」

「カイン様、こちらこそよろしくお願いしますね」

 

 謁見の場だからか、いつもと口調の違うリザベートに視線を合わせカインは軽く頷いた。

 正式に婚姻が確定したことで、リザベートは上機嫌のまま謁見は終わった。

 

 応接室に移動したカインは従者が開けた扉を潜り部屋へと入るといつものメンバーが揃っていた。

 リザベートも同席していたのには少し驚いたカインだが仕方ないと思い、ガルムとともに席についた。

 

「……お待たせしました」

「うむ、それでは始めようか」

 

 今後の対応について話がされていく。やはりカインが未成年だということで、即座に婚姻は結ばず婚約者としてエスフォート王国の王都に住むことになった。

 

「妾は正直、ドリントルで過ごしていたいのじゃがな……。飯もうまいし快適じゃしのぉ」

「さすがにそれは……。大使としての役目もありますし、できれば王都にいてもらいたいのですが……」

 

 リザベートの言葉にマグナ宰相は苦笑しながらも止めにはいった。

 カインも同じ気持ちである。王都にある屋敷とドリントルの行き来は転移魔法で一瞬であるが、事実婚状態でいたら、テレスティアやシルクに何を言われるか心配であったからだ。

 

「私からも王都にいて欲しいですね。リザベート殿下までドリントルにいたら、うちのシルクもそちらに向かいそうですしな」

 

 エリック公爵も同意見であった。やはり成人して正式に婚姻を結ぶまでは王都にいるということで、国王たちに説得され渋々ながらリザベートも納得することになった。

 しかしすぐに屋敷が用意できるはずもなく、準備ができるまでの間は王都のカインの屋敷で暮らすことになった。

 国王始め上層部は王城に滞在してもらう予定だったが、それだけはリザベートが固辞した。

 

「仕方ない。カイン、他国の皇族を娶ることになるのだ。どうだ? 公爵にでもなるか? ガルムの爵位を抜いてしまうがな……」

「いえ、今のままで十分だと……。さすがにこの年で公爵など周りの反感を買うだけかと」

「もう、国王でもいいのじゃがな……。わしは引退できるしの」

「陛下っ!!」

「……冗談じゃ、マグナよ。そこまでムキにならんでも……」

 

 王座を簡単にカインに渡そうとする国王にブツブツと苦言を言うマグナ宰相にカインも苦笑する。

 

 その後、これからの話し合いを行い、カインとリザベートは王城を後にし屋敷へと向かった。

 

 新しい生活が始まり、少しゆっくりと出来るとホッとしていたカインだったが、突然の訃報が王国に届いた。

 

 

 ――――マリンフォード教国の教皇が何者かに暗殺されたと。

 

 マリンフォード教を主教と定めているエスフォート王国にも激震が走ったのだった。

 

 

 


いつもありがとうございます。

幕間を一話くらい挟んで新章へいきたいと思っています。

次章は久々に聖女が出てきます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前にカインがどのように活躍したか貴族に説明したよね [一言] 教皇は聖女を害しようとしてたんだしどこの派閥の仕業か
[気になる点] やっと長らく放置してたヒナタの話に行きそうだね、本来ならこっちが4人目の婚約者になるはずたったんだけどね。それと新しく婚約者が増えるとなるとまたテレスが怒って主人公を呼び出すと思うんだ…
[一言] リルターナが5人目の婚約者になると思ってだけど、リザベートが先を越してしまった。 やはり画策してカインが断れない状況にしてしまわないとリザが婚約者になる事はできなそう。 5人全員強引に婚約者…
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