第二十一話 応接室での密談
この謁見の場で話すには限界があるという国王の判断から、詳細に関しては別室で行い、後日、報告をすることを参列している貴族たちに告げ散会となった。
リザベートが先に退出し、次に国王、その後に上級貴族達が退出していく。
「それにしてもカイン、どうするつもりだ?」
父親のガルムとしてもまた問題を起こしたカインに苦笑しながら問いかける。三人の婚約者を持ち、さらに外交のためとはいえ、四人目の婚約者をつくろうとしている息子に対し苦笑しかできない。
さらにリザベートが発したエスフォート王国初代国王であるユウヤまでカインと関係していると察していた。
「婚姻については先ほど初めて聞きましたからね……。まだなんとも。また応接室に呼ばれるでしょうから」
「あぁ、多分そうなるだろうな。ほら、すでに待っているぞ」
ガルムの視線の先には、扉の横に立っている従者がいた。
いつも応接室まで案内してくれる従者であり、確実にカインのことを待っているだろうと容易に想像がつく。
扉まで歩くと、従者は頭を深々と下げ、「陛下がお待ちになられておりますのでご案内いたします」と告げた。
ガルムも同時に呼ばれており、従者の後を二人は歩く。
従者は応接室の扉をノックし、許可が出てから扉を開けて横に立った。
「どうぞ、こちらへ」
ガルムとカインの二人は部屋へと入ると、中には国王、エリック公爵、マグナ宰相とリザベートが席に座っていた。
「リザもこっちにいたんだ」
「うむ、先程話せなかったこともあったしのぉ」
リザベートは謁見の時のような外交的な言葉使いでなく、いつも通りになっていた。
「まぁ、二人とも座るとよい。聴きたいことも多くあるのしぉ」
国王に促され、二人は席につく。
「まずは二人に聞きたい。婚姻を結ぶつもりはあるのかじゃ? テレスティアとも婚姻を結ぶのだ。親族みたいなものだろう」
「妾は結ぶつもりでおる。いや、それ以外考えておらん」
「リザベート殿はこう言っているがカインはどうするのじゃ?」
「私は……リザベートは魅力的な女性であると思います。だからといって急に言われても……」
「カイン、もう同衾も済んでるおのじゃ。諦めた方がよいぞ」
リザベートの言葉に国王の眉根が寄った。
「カイン、どういうことだ……?」
確かにカインがリザベートをドリントルに匿った際に、一度一緒に寝たことがあった。同衾と言っても本当にただの添い寝だ。あの時はリザベートが奴隷から解放されたばかりで心細いのだろうと許可をしていたのだった。
「……確かに。あの時確かに一緒に寝ましたが……」
「なら、この話は許可で構わんだろう。他国の皇女と同衾までして娶らないなど知られたら、我が国としても恥となる。そして次じゃ……。初代国王であるユウヤ様とは……」
カインは大きく息を吐き、諦めてある程度のことを話すことにする。
「まずは見てもらった方が早いと思います」
『ステータスオープン』
カインは自分のステータスを同席している国王たちに見せるようにした。
【名前】カイン・フォン・シルフォード
【種族】人間族? 【性別】男性 【年齢】十四歳
【称号】辺境伯 辺境伯家三男 転生者 神の使徒 魔物の森の天敵 自然破壊者 竜殺し 神々の寵愛を受けし者 剣神 亜神 他世界の創造神の弟子 神龍の弟子 神獣の主人 神龍の主人 魔王の主人
【レベル】測定不能
【体力】測定不能
【魔力】測定不能
【能力】測定不能
―筋力 測定不能
―体力 測定不能
―知力 測定不能
―敏速 測定不能
―魔法行使力 測定不能
【魔法】
創造魔法Lv.10
火魔法Lv.10
風魔法Lv.10
水魔法Lv.10
土魔法Lv.10
光魔法Lv.10
闇魔法Lv.10
時空魔法Lv.10
生活魔法
複合魔法
召喚魔法
【スキル】
鑑定Lv.10
アイテムボックスLv.10
武術Lv.10
体術Lv.10
物理耐性Lv.10
魔法耐性Lv.10
森羅万象
【加護】
創造神の加護Lv.10
生命神の加護Lv.10
魔法神の加護Lv.10
大地神の加護Lv.10
武神の加護Lv.10
技能神の加護Lv.10
商業神の加護Lv.10
ファビニール創造神の加護Lv.10
神龍の加護Lv.10
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表示されたステータスに全員が息を飲んだ。
信じられないようなステータスの数字、いや、数字で表示される限度を超えおかしくなっている。
そしてそれ以上に信じられないような称号の数々。
神々の強力な加護をもらい、尚且つ『神の使徒』『亜神』などと、人の領域をすでに超えている称号。
「ユウヤさんは私の――転生前の国、日本という同郷の人でした。実際にその日本で会ったことはありませんが……。ユウヤさん、いえ、勇者と聖騎士、賢者の三人は三百年前にマリンフォード教国によって召喚された召喚者。私はその時代に同じ世界で生活していた時の記憶を持つ、転生者ということで、ユウヤさんに鍛えてもらったことがあります」
「……カインは転生者なのか……だからドリントルの街はあそこまで栄えているのか。食事も信じられないくらい美味いしのぉ……」
国王たちはカインが転生者ということは知っている。しかし初代国王であるユウヤと同じ世界に生きていたとは知らなかった。まだ幼い頃にユウヤの記した書記を見て転生者だということがわかったとしても。
「この加護である『他世界の創造神』が今のユウヤさんです。他世界を管轄し、たまにこちらの世界にも来ている時にお会いしました。先日もベネシトス皇国での襲撃事件の時もいきなり現れたので……」
カインは言葉を締めると、国王は眉根を寄せ考え込む。
数分だろうか、無言の時間が流れると、国王はリザベートに視線を送った。
「リザベート殿。カインとの婚姻を許可しよう。さすがに婚約者が数人おり、正妻は娘のテレスティアになってしまうが、それでもよろしいかの」
「問題ないのじゃ。目的はカインと婚姻を結ぶことだしのぉ。順番なぞ気にしないのじゃ。テレス、シルクの二人はすでに友人だしのぉ」
「それなら問題ない。エスフォート王国はベネシトス皇国と同盟を組ませてもらおう。マグナ、告知を頼む」
「わかりました。そのように取り計らいをいたします」
これですべてが終わったと安心したカインであったが、そのまま帰れるはずもない。
「……カインよ。どうだ? そのまま国王をやってみないか?」
国王から真剣な眼差しの問いかけに対し、カインの答えは決まっている。
「丁重にお断りいたします」
「やはり、カインだな。あっはっはっはっ。まぁ仕方ない。あとはこちらでやっておくから帰ってよいぞ」
「では、失礼します。リザ、行こうか」
「そうじゃな。では、陛下、妾はこれにて失礼します」
今回のベネシトス皇国への使者、今後加領される街の把握など、未成年のカインにとっては働きすぎではないかと思うほどである。
学園も自由登校で構わないと許可をもらっているが、テレスティアやシルク、リルターナたちとゆっくり学園生活を送りたいと思っている。
国王たちは今後の協議を行うため、応接室を退出したカインとリザベートは、城を出て馬車に乗り屋敷へと戻って行ったのだった。
いつもありがとうございます。