第十九話 ログシアの思惑
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すぐに謁見の日を迎えることになった。
この三日間、カインはリザベートの相手をするようにと国王から指示を受けリザベートと共に過ごしていた。
リザベートも王都へは転移魔法で移動できることから、気を使わなくてもいいドリントルに滞在している。実際はドリントルで提供される食事がお気に入りというだけなのは本人だけの内緒である。
「そろそろ王都に行こうか。謁見の時間もあるし」
「そうじゃのぉ。妾も楽しみじゃ。それより言うことはないのかの?」
笑みを浮かべたリザベートにカインは苦笑する。
「……うん、とっても綺麗だね。その服、似合っているよ」
「うむ、その言葉を待っておったのじゃ。それでは行くかの」
カインの言葉に満足したのかリザベートは満面の笑みを浮かべた。
今日のリザベートは使者らしく正装をしている。
人族の正装とは少し違い、黒がベースとされレースが細かいところまで施され、色気溢れるドレスを着ていた。
リザベートの白髪に合って美しさが増している。
二人は手を繋いで王都へと転移した。
王都へ転移した二人は、カインの屋敷から馬車に乗り王城へと向かう。事前にカインと共に向かうことを伝えてあったので、従者が待機しており、カインは王城の入り口でリザベートと別れることとなる。
リザベートは従者に連れられて待機場所へ向かい、カインも上級貴族として謁見の場所へと歩みを進める。
「少しは聞いたが、どうなんだ、カイン?」
同じ辺境伯としてガルムと隣同士で座っていたカインは、父親であるガルムからの質問に笑みを浮かべた。
カインが使者として魔族国に赴くことに、心配していた。
――またやり過ぎてないだろうか。
エスフォート王国でのカインの所業を知る国王をはじめとした上層部の誰もがそう思っていた。
「同盟については問題なく。現魔皇帝であるログシア殿とも友誼を結びましたし、人族に対して戦争は起こすことはないでしょう」
「それならいいが……。あちらの国で少しばかり戦闘があったとも聞いたぞ……」
「まぁ多少は……。実力を示さないと意見は通らない国ですからね。それに――」
カインの言葉の途中で、国王が入場する合図が鳴らされた。
「陛下が入る。後でな」
ガルムの言葉で会話が打ち切られた。
基本的な謁見は使者が来てから王族が登場するが、今回は異例で国王が使者を迎える手筈になっている。
国王が魔族からの使者を国賓として厚遇するためであった。
宰相とともに登場すると、一同は頭を下げる。
「楽にしてもらってかまわん。迎い入れてくれ」
国王の言葉に参列している貴族が頭をあげる。
同時に扉が開かれた。
開かれた扉からリザベートはゆっくりと絨毯進んでいく。
姿勢を正し、進んでいくリザベートの姿は、思わず貴族たちから声が漏れるほど気品があった。
カインも思わず見惚れてしまうほどである。
(すごいしっかりとしているな……。さすが皇女というべきか……)
一瞬だけカインとリザベートの視線は交差し、その瞬間、リザベートの口元が緩んだ。すぐに正面に視線を戻したリザベートはゆっくりと国王の前にたどり着く。
スカートの裾を摘まみ、頭を下げて令嬢らしい挨拶をする。
「この度はお時間をいただきありがとうございます。ベネシトス皇国皇女、リザベート・ヴァン・ベネシトスでございます。陛下におかれましては――――」
定型的な挨拶から始まっていく。話し終えるとリザベートは一通の封筒を取り出した。
「これは兄、ベネシトス皇国魔皇帝であるログシア・ヴァン・ベネシトスから陛下宛の手紙になります。ご確認ください」
国王は近くにいる従者に視線を送ると、従者は頭を一度下げ、リザベートより封筒を受け取り国王へ手渡した。
「この場で中身を確認させてもらってよろしいか?」
「はい、もちろんでございます」
国王は封筒を開け、中身を読み始めた。シーンとする謁見の場で国王の表情は段々と曇っていった。
最後まで読み終えた国王は、手紙を後ろで控えているマグナ宰相に手渡して大きくため息をついた。
「……リザベート殿、この中身については――本気か?」
「えぇ、もちろんでございます。それが条件とあらば。妾もベネシトス皇国の発展のために礎となる所存です」
マグナ宰相も手紙を読み終えたがその表情は暗い。
国王とマグナ宰相は視線を合わせ、諦めたように小さく頷いた。
「わかった。ログシア魔皇帝の条件を飲むことにする。まずは参列している皆に聞いてほしい。詳細は省くがまずは説明をしよう」
国王の言葉に続き、マグナ宰相が一歩前に出た。
「実は事の始まりは今おられるリザベート皇女殿下がイルスティン共和国で捕らえられたことから始まる。その際に――――」
マグナ宰相からは今までの経緯が説明された。
リザベートが人族に捕らえられ奴隷化されて、イルスティン共和国の闘技場で命を落としそうになったこと。そこでエスフォート王国から研修に訪れていた学園の生徒によって助け出されたこと。
イルスティン共和国で捕らえられたことが魔族国家に知られ、人族に対して全面報復が行われようとしていたこと。
ベネシトス皇国へ使者を出して友誼を結び、報復を回避したことなどを説明していった。
上層部だけで決定していたため、初めて知った貴族たちからは驚きの声をあげる。人族よりも人口は少ないとはいえ、体力的にも魔力的にも魔族の方が優秀なのは周知であり、全面戦争が行われた場合、被害は想像つかない。
安堵の息を漏らした貴族も多くいた。
「初めて知った者も多いだろう。人族国家全体が危機に陥るところだったのだ。それでリザベート殿をイルスティン共和国の手から助けたカイン・フォン・シルフォードには使者として赴いてもらった。カイン前へ」
「ははっ」
カインは席を立ちリザベートの隣へ立つ。
「……それで、カインよ。ログシア陛下より和議を結ぶのに条件が出ているのだが、どうする?」
「え? ……条件ですか……?」
カインは何も聞いていたないので、少しだけ首を傾げ、リザベートへと視線を送る。リザベートは何も答えず、笑みを浮かべた。
「和議を結ぶ条件を説明しよう。マグナ、頼む」
「はい、条件はあります。一、エスフォート王国王都内に魔族の大使館として屋敷の提供。二、貿易及びエスフォート王国内で販売の許可。ここまではいいでしょう。大使はそちらにおられるリザベート皇女殿下になります。そして最後が問題です」
「最後ですか……?」
「最後に、魔族と人族との友誼を図るため、リザベート・ヴァン・ベネシトスとカイン・フォン・シルフォードとの――――婚姻を結ぶこと。婚姻に当たっては正妻でなくて問題ないと書かれている」
カインを含め参列している貴族たちは開いた口が塞がらない状態になる。リザベートはしてやったりというような笑みを浮かべた。
「……カインよ。これはどういうことなのだ?」
国王から突き刺さるような冷たい視線が送られるのであった。
いつもありがとうございます。執筆頑張ってます!ペース的にはこれからもあがるはず?
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お手数ですが、下の評価ポイントも入れてもらえると嬉しいです!
今後も転生貴族の異世界冒険録をよろしくお願いします。