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第四話 謁見

お待たせしてすみません!


 

 時は少しだけ戻り、二日間、リザベートのお披露目まで、事前にセトの国の上層部と話し合う事になった。

 二十人程が入れる会議室で、カインやセト、ダルメシアが並び、その向かいに八人が並ぶ。

 セトの国の重要な役割を行なっている八人でおり、戦闘、政治などに優れた者が選ばれている。 

 やはり、開戦派も少なからずおり、セトの決定に対しても食ってかかっていた。

 そして、セトがカインの紹介をすると「人間族風情がっ!」と、さらに敵意を向けられていたが、カインがため息をひとつ吐き、セトと目を合わせる。

 セトはにやりと笑みを浮かべ頷いたので、カインは軽く殺気を放った。

 

 その瞬間、会議室の空気がーー凍りついた。

 

 軽く放った殺気とはいえ、カインはすでに亜神である。ステータスはすでに数字では表せていない。

 そんなカインの殺気を向けられた、上層部たちはガクガクと身体を震わせ恐怖を感じた。

 カインに敵意を向けた者は、その場で泡を吹いて気絶してしまう。

 

「……わかったか? これがカイン殿だ」

 

 普段はカインに対して『様』をつけていたが、一国の王として威厳に関わるからと、カインが懇願して今の呼び方になっている。

 少しだけ謙遜したセトであったが、ダルメシアがうまく誘導してくれたおかげで納得しれくれることになった。

 

「正直に言えば、カイン殿一人だけで、魔族が一丸となって人間族の国に戦争を仕掛けても、全滅するだけだ。というか国が一瞬で滅ぼされる」

 

 セトから決定的な一言が述べられると、全員が唾を飲み込む。

 

「えぇ、確かにセト様の言う通りですね。この中で岩竜(ロックドラゴン)を片手間で倒せる人がどれだけいますか?」

 

 魔族の国でも魔物は多くいる。そして、その最高峰であるドラゴンの中でも、岩竜(ロックドラゴン)は次元が違う。ダンジョンなどの奥底にいることが多く、滅多に地上に出てくることはない。

 それは地下にある鉱石などが、主食であるからであった。

 しかしながら、地上に出てきたことは過去にあり、いくつかの街が壊滅していたことは魔族たちも承知である。

 そんな魔物が片手間で倒せるという人間の少年に、魔族の幹部たちは喉を鳴らす。

 

「しかもリザベート殿下をお救いしたのもカイン様になります」


 ダルメシアの言葉にもはや反対意見は出ることはなかった。

 

 

 

 そして謁見の日を迎えた。

 中央の席には魔王であるセトが座り、その両横にリザベートとカインが座る。

 ダルメシアはカインの後ろに控えるように立っていた。

 ホールは上級貴族たちで溢れており、その数は百名を超える。

 

 セトが立ち上がり、第一声を放つ。

 

「急遽集まってもらったのは他でもない。皆も知っていると思うが皇国が進めている人族との戦争についてだ」

 

 セトの言葉に参列している貴族たちの表情が引き締まる。

 魔王としてセトが参戦を表明すれば、上級貴族たちも兵士や費用を捻出する必要がある。

 しかも、今回は皇国の秘宝とも言われる、リザベートが人族で奴隷になったということが発端だ。

 多くの者が参戦の表明を期待していた。

 魔族同士で争うことはほぼないに等しい。何故なら確実に皇国から仲裁が入るからであった。

 もし、皇国からの仲裁を断れば、その国は全ての魔族国家から敵として認定される。

 そうすれば容易に国の将来が眼に浮かぶ。

 

 セトは参列している全員を見回し、口を開く。

 

「我が国は、戦争に対し反対を表明する! リザベート殿はすでに救助をし、こうして隣におられる。そして――」


 セトはカインに視線を送り軽く頷き、言葉を続ける。

 

「そして、我が国は隣に座るカイン殿の所属する人族国家、エスフォート王国との同盟を結ぶことをここに表明する」

 

 セトの言葉に事情を知らない参列している誰もが絶句する。

 海を挟んで遠い人族国家、関わることはほぼないに等しい。

 魔族は魔法や体力など人族より人は少ないが個々の能力は高い。

 そしてそれと同じようにプライドも高いのだ。

 それが、隣に座る人族の幼い少年の国へと同盟を結ぶ。そんなことを考える者などいない。

 

「わらわもその意見に賛同する」

 

 絶句している参列者に一人の少女の声が響き渡った。

 隣に座っていたはずのリザベートが立ち上がり、そして言葉を続ける。

 

「わらわを救ってくれたのは、隣にいるカインじゃ。そしてそのおかげで故郷である魔族の国へと戻ってくることもできた。わらわはカインを信用している」

 

 リザベートの言葉に誰もが喉を鳴らす。

 それだけ皇族といわれるリザベートの言葉は重い。

 しかしながら、それでも反発するものはいないわけではない。

 

「俺は反対だ! 皇国はすでに戦争を行うと言っている。俺も人族国家を攻めるつもりだ」

 

 参列者の中から、まだ若い四本の角を生やした魔族の青年が出てきた。

 しかし一人出ると、それに倣って同調するものも出てきた。

 

「わたしもだ。人族の富を奪えば、さらにこの国は豊かになる。戦争をして何が悪いのだ」

「そうだ! わたしも戦争に賛成だ」


 次第に戦争開戦派の声は大きくなる。

 

 それをセトは片手を上げてから、前に出てきた魔族たちを睨みつける。

 

「―それは魔族国家が――滅んでも良いと言っているのか……?」

 

 唐突に突きつけられた言葉。

 魔族たちにも理解ができなかった。

 

 ―-国家が滅ぶ――

 

 戦争をするにあたって、攻めるのは魔族の国である。

 何故、自分の国が滅ぶことになるのか。

 参列者たちは理解できなかった。

 

「まずは紹介しよう。カイン殿、宜しいかな」

 

 セトの言葉にカインは頷いて席を立つ。

 

「まずは自己紹介を。人族国家、エスフォート王国で辺境伯を仰せつかっている、カイン・フォン・シルフォード・ドリントルです。魔王セト殿とは個人的友誼を結ばせてもらっています」

 

「王族でもなく、ただの一貴族だとっ!? なんで、そんなのが出てくるんだ!」

 

 一番最初に開戦派の声を上げた青年が、怒鳴りカインを睨みつける。

 しかしそれを途中で遮ったのはセトであった。

 

「待て。一応説明しておく。隣にいるカイン殿とは個人的に友誼を結んでいるのは確かだ。そしてこれだけは言っておく。もし、人族国家と戦争になったら、カイン殿一人の戦力で、ただそれだけで、この国、いや魔族国家全体が――――滅ぼされる」

 

 セトから放たれた言葉は誰もが想像もできないほど衝撃的なものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもありがとうございます。

更新お待たせしてすみません。いよいよ来週には4巻及びコミック1巻が発売になります。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] いや、今後の説得なんかを考えるならセトがカインに仕えている事をはっきりさせといた方が良いだろうに、 ちょっとカインは合理性より変なこだわりを優先させ過ぎに見える。 事ここに至っては神の…
[一言] 魔族は魔法や体力など人族より人は少ないが個々の能力は高い。 →魔族は魔法や体力等、人族より数は少ないが、個々の能力は高い。
[一言] ①リザベート殿はすでに救助をし、こうして隣におられる。→リザベート殿は既に救助し、こうして隣におられる。 ②魔族は魔法や体力など人族より人は少ないが個々の能力は高い。  →魔族は人族より数…
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