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第二十五話 使徒VS使徒?


 カインは説明の為に応接室へと向かった。

 すでに国王含めエリック公爵やマグナ宰相にも連絡は伝わっており、すぐに向かうと従者から説明を受ける。

 二人が応接室で待つこと数分で国王を含め三人が入室してきた。


「カイン、お前、またやらかしたらしいな……」


 捕縛者の大まかな説明はすでに騎士団から行われている。しかし、詳細についてはカインから騎士団にもまだ説明しておらず、「イルスティン共和国、エスフォート王国の一部が結託し生徒達を襲った」という事実だけが伝わっていた。


「カインくん、じっくりと説明してもらってもいいかな……」


 エリック公爵の言葉にカインは頷き、イルスティン共和国までの研修日程について説明をしていく。

 ガザールで起きた議員の息子の計画による襲撃事件の撃退から、裁判について。

 そして帰国途中の襲撃についてだ。

 イルスティン共和国のマルフから、コルジーノ侯爵と繋がっており、テレスティアやシルクなど生徒達を含め奴隷にするつもりだったと。

 そして、同時にエスフォート王国からバルド子爵が挟み撃ちをするめに襲撃を受けたこと。


 説明が続くにつれ、国王やエリック公爵、マグナ宰相の表情は怒りに満ちてくる。


「コルジーノはどうしてるっ! すぐに捕縛に行かせろっ!」

「すでに近衛騎士団が向かっていると報告を受けております。捕縛されるのはすぐかと……」


 自分の娘(テレスティア)を奴隷にするつもりだったと聞き、顔を真っ赤にして怒る国王だったが、エリック公爵やマグナ宰相が宥め、ティファーナを筆頭に騎士団を向かわせていると聞き、大きく息を吐き席に座る。


「陛下、イルスティン共和国に関しては私にお任せを。うちの娘も奴隷にしようと考えるなんてね……。ねぇカインくん? 許されないよね……」


 エリック公爵は和やかな表情をしていたが、目はまったく笑っていない。

 同意を求められたが、黒いオーラが出ているように感じたカインは思わず身震いさせ視線を逸らす。

 

「よし、エリック。宣戦布告だっ! すぐに兵を集めるんだ!」

「ちょ、ちょっとお待ちください!」


 戦争を始めるつもりの国王に、マグナ宰相が止めに入る。


「まずは王国内をまとめないといけません。コルジーノ一派を抑えてからが良計かと」

「うーむ、マグナの意見が正しいな……。仕方ない捕縛の報を待つしかないか……」


 そんな時、カインは大きな魔力を王都内で感じた。


(なんだこの魔力は……。人じゃない。魔物でもない。この魔力は……)


 それと同時に、地震のように城が揺れる。

 応接室についている窓から王都を見下ろすと、そこには――――。


 天まで上りそうな火柱があがっていた。


「あれは……」

「あの方角はコルジーノ宅じゃないのか?」


(あの魔力は危険だ。ティファーナが危ない)


「陛下、あそこに魔力が集まっています。僕は応援に行きますので、これで……」

「うむ、わかった。騎士団の援護を頼む」


 カインは一礼した後に、コルジーノ侯爵宅へと転移した。

 以前、一度嫌がらせのために下見をしていたお陰で一瞬にしてたどり着く。

 空中から見下ろすと、屋敷はすでに半壊し、騎士団の多くが倒れ、半分ほど残った騎士が身動きできない騎士達を運んでいた。

 その中でティファーナは最前線で剣を構えていた。


 カインは空中から一気に降り立つ。


「みんなを回復させる! けが人を集めてくれ」


 数カ所に集められた場所へと移動し、次々と回復魔法を掛けていく。


『エリアハイヒール』


 最後の集団に回復魔法を掛けたカインは、屋敷から下がるように伝えティファーナの元へと向かった。


『エクストラヒール』


 カインの魔法にティファーナの身体は光り輝き、その光が消える後は擦り傷すら全て消えていた。


「カイン、助かった……。屋敷を取り囲んで攻め入ろうとしたら、いきなり屋敷が吹き飛んでな……」

「ここから先は僕に任せてティファーナも引いてくれ」

「なっ、私も戦うぞっ!」


 その言葉の後、禍々しい殺気が屋敷から広がっていく。

 さすがのティファーナも今までにないほどの殺気に対し、冷や汗をかき恐怖の表情に染まっていく。

 そして大きな入り口の扉が吹き飛び、一人の男性が半壊した屋敷から現れた。


「まさか、ここまで威力が出るとはな……これは予想外だ。まぁわしは新しい力を得てこの国の王になればいいだけじゃがな」


 屋敷から現れたのはコルジーノ侯爵だった。

 しかし、髪は真っ白に染まり、あれだけ出ていた腹も少し引っ込んでいる。

 そして何より目を引くのは、真っ赤に染まった目であった。


「あの目は……」


 思わずカインは鑑定をしてコルジーノの詳細を調べる。

 そしてその結果に目を大きく見開いた。


「まさか……『使徒』とは……」


 コルジーノのステータスの称号に記載されていた『邪神の使徒』

 コルジーノは辺りを見渡し、カインがいることににやりと笑う。


「おぉ、シルフォード卿がいるではないか。一番最初にお主の首を切り飛ばさないとな……。まぁお主のお陰でこの身体を手に入れたのじゃがな……」

 

 コルジーノは自分の身体を見下ろし、笑みを浮かべカインへ向かって魔法を放つ。


真空刃(エアカッター)


 一瞬で放たれた魔法にカインは反応して、同じ魔法を放ち相殺する。


「まさか、神の使徒となったわしに対抗するとはな……」


 自分の魔法が相殺された事に少しだけ驚きの表情をするが、それよりも自分が『使徒』となった事へと喜びからか、表情を崩し、両手を広げ自分の身体を確かめていた。


「し、使徒だって……」


 ティファーナは驚きの表情をし、カインの方を向いた。


 『〝使徒〟とは神の意志を伝える代理人である』


 国の誰もが知っていることだ。

 もし、現れたら国王ですら膝をつかないといけない。

 カインとティファーナの目の前にはその使徒が立っていた。


「まぁ使徒と言っても――――邪神の使徒だけどね……」


 カインは剣を抜き、コルジーノへと向けた。

 ティファーナはその表情を崩さないカインに驚きながらも同じように剣をコルジーノの向けた。


「使徒とわかってもなお、わしに剣を向けるのか……」


 コルジーノも使徒となった事により、誰よりも偉い存在であると認識していた。

 この国、いや世界が彼に頭を下げるのだと。

 しかし、目の前にいる二人は使徒と知っていても剣を向けたままであった。

 次第にその態度から苛立ちを覚えていく。


「騎士団長はそのまま貰い受けるか……。シルフォード卿(くそガキ)は生け贄になってもらうぞ」


 コルジーノはにやりと黒い笑みを浮かべた後、一気に加速しカインに襲いかかる。

 そのスピードに全く動じず、カインはついていく。殴りかかる腕をはじき飛ばし、空いている懐に入り込み、鳩尾に蹴りをたたき込む。

 ティファーナですら目で追えないスピードで攻守は繰り広げられていく。

 

「まさかこの使徒となったわしについてこれるとは……お前は一体……!?」


 流石に信じられない表情をするコルジーノに、カインは笑みを浮かべた。


「使徒は〝一人〟じゃないって事だよ」


 その言葉にコルジーノは驚きの表情をした。


「ま、まさか……。そうか、そうだったのか……。だからお主は――」


 その言葉の先はなかった。

 驚いた表情のコルジーノの首が、身体からゆっくりとズレ墜ちて地面へと転がる。

 そして首のない身体も力がなくなったようにゆっくりと前のめりに倒れていった。


「――戦闘中に話してばかりじゃね。隙だらけだったよ」


 隙を見て一瞬でカインは剣を振り抜いて、コルジーノの首を刈り取っていたのだった。

いつもありがとうございます。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] >そして、同時にエスフォート王国からバルド子爵が挟み撃ちをするめに襲撃を受けたこと。  この文の主語はバルド子爵ですが、バルド子爵は襲撃をした方で、受けた方ではありません。  能動態…
2024/05/27 20:45 退会済み
管理
[一言] 次で復活するんだよね? あっさりしすぎのような
[気になる点] 全くレベル上げてないだろうコルジーノなのに強すぎないか?主人公だってレベル1じゃここまでじゃなかっただろ。それとも普通の使徒より邪神の使徒の方が強いのか?それはそれで問題だが。 [一言…
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