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第二十三話 護送車

 

 バルド子爵を捕縛すると、同行した兵士たちは諦めたようで指示通りに一人ずつ階段を登り始めた。

 自害されては困るので、バルド子爵だけは早々に猿轡までとりつけられていた。

 上がってくる兵士たちをティファーナが引き連れてきた騎士たちが順次捕縛していく。

 

「こちらは大丈夫そうですね。クロードさん、あちらに戻らないと」

「だよな。まぁ外に出れるとは思えないけど、な……」

「私も確認しに行こう。一応他国でもそれなりに名前は知れ渡っているからな」

 

 確かにカインは伯爵ではあるが、エスフォート王国に伝手があり、ドリントルの状況を知る者でなければその存在は軽い。

 しかし、ティファーナは長年に渡り、王国で近衛騎士団長としての役目を果たしており、他国からも一目置かれている状況であった。

 圧倒的な武力と美麗さのため、婚姻の申し込みを多々あり、全てを断ってきた者が、突如として婚約を発表したのだ。

 その噂は瞬く間に各国に広がっていったのは言うまでもなかった。

 

「うん、ティファーナも来てくれると助かるよ」

「そうだろうっ! たまにはカインの役に立たないと、殿下たちに遅れをとってしまうからな」

 

 一人で腕を組み満面の笑みで頷いているティファーナにクロードは苦笑する。

 ティファーナといえば、エスフォート王国の冒険者も知らぬ者はいない。

 それが、カインと一緒にいる時は、そこらにいる恋する女性と同じになるのだ。

 クロードの中でもイメージは崩れていく。

 しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。クロードは表情を引き締めカインに声をかける。

 

「カイン、早く戻るぞ」

 

 クロードの掛け声で三人はイルスティン共和国側の大穴へと向かって行く。

 

「待たせたな。こっちは援軍だった」

 

 クロードの言葉に、リナたちは安堵の息を吐くが、カインの後ろについている女性、ティファーナを見ると一瞬にして固まった。

 

「……まさか、エスフォート王国最強の近衛騎士団長のお出ましとわね……」

 

 リナの言葉に各自が驚きながらも頷く。

 カインは大穴の下を覗くと未だ諦めていないようで、各自が武器を持ち、魔法が使える者はいつでも放てるように待機していた。

 そんな中、ティファーナが襲撃者たちに見えるように立つ。

 

「エスフォート王国、近衛騎士団長ティファーナ・フォン・リーベルトだ。襲撃者たちに告げる。今すぐに武器を捨てて投降しろ。そうでなければ、これはイルスティン共和国がエスフォート王国への宣戦布告とみなす」

 

 ティファーナの言葉は効果覿面であった。

 襲撃者たちの顔色は一気に悪くなっていく。それほどまでにティファーナの名前は他国まで通っていた。

 主犯のマルフでさえ信じられない表情をしている。

 本人としては、息子のラルフがきっかけをつくり、いつのまにか自分の立場も財産も剥奪され、それを取り戻すために今回の襲撃を計画した。

 コルジーノ侯爵からの助言を貰い、共に宿敵であるカインを陥れる予定だったのが、いつのまにか近衛騎士団長まで現れ、イルスティン共和国とエスフォート王国との戦争まで話が発展してしまっている。

 こうなったら、議員剥奪と罰金だけで済む話ではない。一族揃って死罪になるのは目に見えていた。

 絶望から力無く膝をつくマルフであったが、他のメンバーはそういう訳にもいかない。

 私兵も闇ギルドに関しても、マルフの口車に乗せられ今回の計画に参加した。

 莫大な褒賞が貰えると思っていたが、何もせずに大穴に閉じ込められたのだ。もちろん計画が失敗したら約束も反故されることは目に見えている。

 しかしこの閉じ込められている大穴から逃げ出す手段さえない状態であった。

 

「クソっ。なんでこんな事に……」

 

 捨てセリフを吐く闇ギルドのマスターであったが、ふと周りを見ると、今回用意した襲撃者がバタバタと倒れて行く。

 

「一体何が――」

 

 その言葉を最後に闇ギルドマスターの意識は途絶えた。

 

 ◇◇◇

 

「カイン、一体何をしたんだ……?」

 

 大穴の下で全員が倒れたのを確認して「よし、成功だ」と言うカインにクロードが声をかけた。

 ミリィやニーナも不思議そうな表情をする。

 

「あのままでは、投降してくれそうもなかったので、酸素の比率を魔法で変えてみました」

「サ、サンソ……? なんだそれは……?」

 

 カインの言葉に理解できる者はいない。

 前世で高校二年生までは通っていたのだ。酸素が薄まりと二酸化炭素が増え、比率が変われば意識を失うくらいの知識はある。ちょうど大穴をだったので思い出して利用させてもらった。

 空気の質量については、実際に見えることはない。しかしこの世界でも呼吸していることに、確証はないが試してみたのだ。

 そして予想通りに襲撃者の意識は刈り取ることができた。

 

「うーん、呼吸している空気を薄くしたと思ってくれればいいかな……」

「「「「…………」」」」

「まぁ、大穴だったから簡単にできたんですけどね」


 この場所にいる全員がカインの言葉に絶句である。

 簡単に言えば、いつ、どこでも、誰に対しても意識を刈り取る事が可能だと言っているのだ。

 もし、敵対したら何も出来ずに負けるということが全員が理解した。

 クロードは生唾を飲み、絶対にカインと敵対しないようにすると心に決めたのだった。

 

「あ、そのうち意識を取り戻しちゃうから、その前に捕縛してもらってもいい?」

 

 カインの言葉にティファーナはハッとする。ティファーナでさえ信じられない光景であったのだ。

 

「そ、そうだな。あっちにいる騎士をこっちに呼ぶか」

 

 ティファーナはそう言って風のように疾走していく。

 

「その間に戻しちゃうか……」

 

 カインはそう言うと、地面に手をつき、魔力を流していくと、大穴が次第に盛り上がっていき、平らな地面が出来上がった。

 

「これで簡単に縛り上げることができるね」

 

 カインの言葉に誰も反応することは出来ず、ただ全員がカクカクと頷いた。

 そうしているうちに騎士が二十名ほど駆けてくる。

 カインも捕縛のためにアイテムボックスから取り出したロープを適度な長さへと切って並べていく。

 数百名からの襲撃になる。どう考えても助けにきてくれた騎士団が用意したロープでは足らないと思ったのだ。

 

「待たせたな……って、あの大穴はっ!?」

「それなら戻しておいたよ。縛るのに邪魔でしょ?」

「まぁ……確かに」

 

 ティファーナも少し納得いかない様子であったが、騎士たちに指示をし、次々と襲撃者を縛り上げていく。

 一刻もしないうちに襲撃者の捕縛は全て終わった。


「さて、これはどうしたものかな……」


 ロープで縛られている襲撃者の数は五百名を超える。

 そう簡単に運べる人数ではない。


「砦まで運べればな……」

 

 ふと呟いたティファーナにカインは、思い出したかのように手を叩いた。


「全員運べればいいんですよね……それなら」 


 カインはアイテムボックスから護送車をもう一台出す。


「座席は足りないけど、ぎゅうぎゅうならそれなりの人数を入れらるかな」


 念のためにカインは護送車を二台用意していた。

 すでに襲撃者の撃退は終えているので、教師や生徒達も護送車から降りていた。

 そして襲撃者の数を見て皆が顔を青くさせていた。

 もし、カインがいなかったら――。

 そう思ったのかもしれない。

 生徒達から次々とくる感謝の言葉にカインは苦笑した。


(いや、僕がいなかったら襲われることはなかったんだよね……多分……)


 騎士達が護送車に次々と襲撃者たちを運び込むが、さすがに五百人の襲撃者は乗せることはできなかったので、カインはアイテムボックスから新たに檻を一つだす。


「残りはここにいれてください」

「カイン……。檻はわかるのだが、こいつらをどうやって運ぶのだ……?」


 ティファーナの言葉にカインは笑みを浮かべる。


「それはもちろん――――」


 その言葉にさすがのティファーナさえも絶句したのだった。



 



いつもありがとうございます。

土曜更新間に合わなかった……。

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― 新着の感想 ―
[一言]  他話にも増して文章が酷い。「てにをは」に能動態・受動態、自動詞と他動詞、時制などの義務教育レベルの国語の文法の誤りが多すぎます。
2024/05/27 20:18 退会済み
管理
[一言] 作者さん応援してます! 句読点指摘してる人!句読点ありゃ良いってもんじゃないんやで!って約3年前w
[気になる点] 檻は護送車が引きずるのかな?
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