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第十五話 ルガールの遺跡1



 踏み出したダンジョンはルガールの遺跡といわれている。

 まだ踏破はされておらず、現在、地下十五階までの探索が行われていると受付で説明をうけた。

 入口は大きな石で覆われて、中は石畳で整えられていた。カインは『光球(ライトボール)』を浮かべ、中へと進んでいく。

 『探査(サーチ)』を使うが、何かに邪魔をされたような感覚になり、数十メートル先までしか魔力を感じ取れなかった。


 「何だろう。まぁのんびりいくか……」


 五分ほど進むと、分かれ道になっており、カインはレティアからもらった地図を頼りに下に降りる階段へと向かう。地図でのメモでも特に一階は魔物が出てこないと書かれていた。

 三十分もせずに下に降りる階段を見つける。

 一階は魔物もおらず冒険者達とも会うことはなかった。

 地下一階からは石畳の遺跡とは違い、土や岩が剥き出しになった通路が広がっていく。

 幅は五メートル程度の道がクネクネと伸びていて、カインは探査(サーチ)を使い、少し先を感じながら進んでいった。

 分岐路を地図頼りに進んでいくと少し先に魔物の反応があった。


「初めての魔物だ……何が出てくるんだろう」


 慎重に進んでいくとゴブリンが三匹出てきた。未だカインに気付いておらず通路の端で円を囲むように座っていた。


「ゴブリンか……さっさと始末しちゃおう」


 カインは真空弾(エアバレット)を放ち次々と始末していく。


「この階じゃ、相手にならないな……一気に進んでいくか」


 死骸となったゴブリンを放置し、カインは先に進む。魔物の死骸はダンジョンに吸収されていき、また新しい魔物として生み出されると説明を受けていたことで、そのまま放置だ。

 しかもゴブリンの魔石は銅貨の価値しかなく、手間を考えれば先に進んだほうが得なのである。

 カインは身体強化(ブースト)を使い、ダンジョンの中を走り抜けていく。時には魔物を、時には冒険者達を抜かしていく。数メートルの通路を数十キロのスピードで走り抜けていくカインに、反応はするが剣を向ける前には居なくなっていく。

 下階に降りていく毎に冒険者達も増えていったが、地下八階を過ぎると冒険者と会うことはなかった。

 そして十階まで降りると、目の前には大きな扉があり、その横には冒険者達が休憩していた。

 事前にレティアから教えてもらった情報では十階に門番がおり、倒すことで下階に降りられるということだった。

 締め切られた扉を前に冒険者達は、武器の確認をしている者や、寝そべって休憩している者もいた。

 カインに気付いた冒険者達は子供が一人でいることに、驚き目を見開く。そしてローブを着た一人の女性がカインに近づいてきて声を掛けた。


「君、一人でこんなところに来たの? 危ないからすぐに戻りなさい。新人がこんなところまで来ても仕方ないわよ。この先は門番の部屋だし、Cランクのパーティーが集まってやっと倒せる魔物がいるのよ」


 魔術師であろう二十代の女性は、カインに気を使い帰るように促すが、戻る気など更々ない。


「ご忠告ありがとうございます。でも、問題ないから平気ですよ。そこそこ腕は立ちますし」


 カインはまだ華奢な腕を曲げ、力こぶを見せる。そんなに筋肉は盛り上がることはなかったが。

 冒険者は基本的に自己責任の世界である。でも、まだ幼いカインに向かって保護欲が沸いたのだろう。


「アイリ! そんなガキに構ってないでこっちに集まれ、そろそろ扉が開くはずだ」


 パーティーのリーダーらしき剣士の男が、魔術師の女性に声を掛けた。


「うん……。本当に無理をしないようにね」


 一言だけ言葉を残し女性魔術師はパーティーの輪に戻っていく。

 カインは少し離れた場所で順番を待つことにした。

 十分程時間が経ちいきなり閉められていた扉が開き始めた。誰が開いたわけでもなく自動で開いていくのだ。

 すると準備していた冒険者たちが「出番だ」と息巻いて入っていく。女性魔術師もカインを横目で見ながら扉を潜っていった。


「順番待ちかぁ……どれくらいで終わるんだろう」


 カインは誰も居なくなった扉の前に座り込み、次の順番を待った。

 そして三十分程でまた扉が開かれた。


「どんな魔物が出て来るかな……」


 カインはウキウキしながら開かれた扉を潜っていく。

 カインが中に入ると、自然と扉が閉まる。

 中は大きな広場となっており、その中央に魔方陣が描かれていた。

 次第にその魔方陣は光輝き、中からは五メートルほどの魔物が現れた。

 筋肉はこれ以上ないくらい盛り上がり、牛のような顔をし、二本の角を生やしている。

 大きな棍棒を持ち、全身が真っ黒のミノタウロスだった。

 そしてミノタウロスは雄叫びを上げると、その雄叫びは地響きが起きる程の声量でカインを威圧する。

 しかしカインは気にした様子もなく剣を構えた。


「ミノタウロスか……。こんなデカイっけ? しかもこんな色してたっけかな……。魔物の森と色が違うような……まぁダンジョンだから普通の魔物と違うのかな」


 カインは気軽に考え、剣を構え魔力を流していく。そして一気に詰め寄った。

 いくら門番とはいえ、カインのステータスに敵う者はこの世界にはいない。

 一振りすることで首がないミノタウロスが出来上がった。

 ミノタウロスはBランクに属する魔物であるため、冒険者ギルドで引き取ってもらえる。早々にカインは死骸をアイテムボックスに仕舞った。

 ミノタウロスが居なくなった広場の奥から、何かが動作する音がし、何もない岩の壁が開かれ道が現れた。


「こんなもんか……先に進むかな」


 カインが広場を抜け、通路に入ると、そこには先に入った冒険者達がいた。

 無傷な者はおらず、皆怪我をし、汚した姿の魔術師のアイリが包帯を冒険者達に巻いているところだった。

 カインはその姿を見て駆け寄った。


「大丈夫ですかっ!?」


 駆け寄るカインの姿に冒険者達は痛みを堪えた表情をしながら顔を上げる。


「君は……無事だったの!?」


 包帯を巻いていたアイリが驚きの声を上げる。


「はい、少しは腕が立つって言いましたよね。それにしてもこれは……」


 他の四人は鎧が血で染み込んだように変色し、力無く座り込んでいた。


「うん……やっぱりCランクの私達で、Bランクのミノタウロスはきつかったの。なんとか倒せたけど、私の魔力も残り少なくて、これ以上使ったら意識が飛んじゃうから最低限の回復だけ……」


 申し訳なさそうな顔をするアイリが仲間達を見渡した。


「僕も回復魔法使えます。まだ十分に魔力もありますし、回復しますよ」


「そんな……こんな場所で回復してもらっても返せる物なんて……」


 申し訳なさそうなアイリを横目にカインは回復魔法を掛けた。


『エリアハイヒール』


 カインが回復魔法を掛けると、アイリを含め座り込んでいる冒険者達は光に包まれていく。

 光が消えてなくなった時には、すでに怪我をしている者はいなかった。


「なんだこれは……」


 あまり衝撃で驚く冒険者達。自分の身体を触り、怪我が治っていることに喜びの声を上げた。

 そして一人は未だに固まっていた。


「そんな……」


 アイリはあまりにも衝撃的なことに声も出なかった。

 アイリは隣にいて聞いた。カインの魔法を。


『エリアハイヒール』と。しかも無詠唱で。


 エリアハイヒールは回復魔法でも上級魔法と言われている。冒険者でも最上級と言われている者なら使えるかもしれない。教会でもその魔法を使えるのは司祭クラスになるのだ。

 そんな上級魔法をまだ成人もしていない少年が簡単に唱えているのだ。回復魔法を使える身であるからこそ、その凄さが理解出来たのだ。


「怪我は治ったと思いますけど、流した血は戻るわけではありません。出来ればこのまま……」


 カインの言葉に座っていた者は皆頷いた。


「坊主、世話になったな。名前はなんて言うんだ? 俺らはCランクのパーティー『銀狼の牙』でリーダーをしているデストラだ」


「僕は、カインです。気軽にカインと呼んでください!」


 笑顔で答えるカインに頬を緩ませ、デストラが手を差し出す。その大きな手をカインは両手で握手をした。

 冒険者達は回復魔法を掛けたとはいえ、血を失ったことで少し休憩してから地上にあがるとのことだった。


「今は何も恩返しできねぇ。街に戻ったら絶対に恩は返す。また後でな。気をつけて進めよ」


「――カインくん、本当にありがとう。私だけでは回復出来なかった。それにしてもさっきの魔法は……」


 固まっていたアイリが恐縮したようにカインに問いかけた。

 カインは笑みを浮かべ、口元に人差し指を立たせる。


「それは秘密で。ただ、魔法は得意なんです。それでは!」


 休憩している冒険者達に笑顔で挨拶をし、カインは更に下に降りる階段へと向かっていった。





いつもありがとうございます。

アマゾン以外の予約がなかなか始まりませんね……。

来週からはある程度更新に力を入れれるかと。

今後もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] アイリは隣にいて聞いた。カインの魔法を。 『エリアハイヒール』と。しかも無詠唱で。 無詠唱なのにどうやって聞くんですか? 矛盾してる。
[気になる点] 自己紹介のとき絶対に貴族ともAランクと名乗らないよね、名乗った方が絶対面倒を回避できるのになんで? [一言] これダンジョン攻略しちゃってまた怒られるパターンでしょ、攻略したら魔物が出…
[一言] 汚した姿の魔術師のアイリが包帯を冒険者達に巻いているところだった。 →汚れた姿の魔術師のアイリが、包帯を冒険者達に巻いている所だった。
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