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宇宙へ


決して裏切る事の無いホムンクルスという友と、無限とも思える魔力を手に入れた新人類の飛躍は留まる事を知らなかった。


彼らは前進を続け、大陸を、海を、空を支配していく。

既に、地球上に新人類が居ない場所は人工島以外に存在しない。


地上には、新人類の巨大な建築物が乱立している。

地中や海中にも、巨大な都市が作られている。

更には天空にすらも、空飛ぶ天空都市が作られている。


発魔力所では、象程の大きさもある人工第二心臓が鼓動して新人類の文化的生活を支えている。

自然環境に左右されない地中や海中では、広大な農業プラントが作られ新人類の食生活を支えている。

先進的な学問を教える学校、最新の魔法医術を施す病院、巨大な工場・・・・。


彼らは魔法技術を日々発展させ、まさに地球の覇者としてその勢力を拡大し続けているのだ。



そして、終に彼らはやり遂げた。

まさに、「大きな一歩」を彼らは踏み出したのだ。





「・・・・・・」


一人の男が窓から外を眺めている。

その男は、ただ呆然と窓から外を眺め続けている。


そんな男に通信魔法が入った。


「先程から返事が無いが、何かトラブルでも発生したのか?」


通信相手は男を心配して通信魔法を放ったのだが、呆然と窓の外を眺める男は答えない。


「・・・おい! 通信は聞こえているはずだ!

何故答えない! やはり何かトラブルが発生したのか!?」


そんな通信相手の苛立つ声に我を取り戻した男は、慌てた様子で返答する。


「すまんすまん! 大丈夫だ。こちらは何の問題も発生していない」

「驚かせるな。全く・・・。

何も問題が発生していないなら、何故さっさと答えなかったんだ? 心配したんだぞ?」


通信相手は安堵の声を出しながら男に問いかけた。


「いや、本当に申し訳ない。何と言うか・・・、呆けていたんだ」

「呆けていた? まさか・・・酸素が漏れていたりしないよな!?」

「違う違う。そうじゃないんだ。あまりの美しさに感動していたんだ・・・」

「?? 美しさ?」



「・・・ああ・・・、・・・地球というのは・・・、こんなにも青く・・・。

・・・そして・・・、こんなにも美しい星なのだな・・・」



男は小型宇宙船の窓から地球を眺め、ため息をつく。

そして彼は、その場で手を合わせ、女神に対して小さく祈りをささげるのだった。




この時代。

新人類は終にその活動範囲を宇宙空間まで広げる事に成功した。



それからは、正しく怒涛の時代であった。



新人類は月に基地を作り、火星へ、土星へと活動範囲を広げ続ける。

その進出速度は旧人類のそれを遥かに上回る速度だった。

そして終には太陽系すら狭いとばかりに外宇宙へと飛び出していったのだ。





新人類が外宇宙に飛び出してから、それなりに長い時間が過ぎた。

今日も彼らは元気に外宇宙で活動を続けている。


そんな彼らの様子を、少しだけ見てみよう。



地球からそれなりに離れた宇宙空間に、新人類の巨大な宇宙艦隊が展開している。

まさに威風堂々たるその艦隊は、肩で風を切るかのごとく、巨大な魔導エンジンから魔力を噴出して前進していく。


・・・そんな大艦隊の進む方向に、小さな艦隊が対峙するように展開していた。


その小艦隊に向けて、新人類の艦隊は通信魔法を放つ。



「惑星連合軍艦隊に告ぐ。

我々は地球軍艦隊である。


諸君らの行為は宇宙の平和と秩序を乱す悪しき行為である。

今からでも遅くは無い。

直ちに抵抗を止め、武装を放棄し、おとなしく投降せよ。


さすれば、諸君らの罪は問わない。

諸君らの親兄弟は、諸君らの反逆的愚行を知って泣いているぞ。


繰り返す。

我々は地球軍艦隊である」



そんな通信魔法を聞き、額から紫色の血を流す提督が怒鳴り声をあげる。



「何がっ・・・! 何が宇宙の平和と秩序だ!!

我らの母星を!! 無理やり武力で制圧しておいて!!


自由も! 誇りも! そして未来も!! その全てを奪っておいて!!

何が平和だ!! 何が秩序だ!!


おのれ!! おのれ地球人め!! おのれ地球軍め!!」



そんな怒鳴り声をあげる提督に、一人の兵士が報告をあげる。

それは、惑星連合軍の主力艦隊が戦線離脱に成功したという報告だった。


その報告を聞き、提督は覚悟を決めた。



その後、惑星連合軍の残存艦隊は、圧倒的戦力を誇る地球軍艦隊に向けて突撃を開始する。


魔導エンジンに魔力を注ぎ込み、対艦攻撃魔法を放ちながら、彼らは無謀な突撃を開始したのだ。

最早、勝機など存在しないのは誰の目にも明らかだった。


だが、彼らは突撃していく。

艦首に惑星連合軍旗を高らかに掲げ、彼らは誇り高く死にに逝く。


涙を流し、血を流し、雄叫びをあげ、拳を握り締め、彼らの艦隊は決して勝てない強敵目指して前進し続ける。



・・・そんな決死の艦隊に、地球軍艦隊は攻撃を開始する。

地球軍艦隊はありったけの対艦攻撃魔法を、一切の情け容赦も無く放った。


攻撃魔法が直撃した連合戦艦は、大爆発を起こして宇宙の塵となっていく。

額から紫色の血を流す提督も、光りに包まれてこの世を去った。



次々に放たれる対艦攻撃魔法を受け、連合軍艦隊はなす術も無く撃破されてしまう。

その瞬間、宇宙が少しだけ明るくなるのだった。

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― 新着の感想 ―
まだ恨んでたんだ、もう数千年経ってそうな感じだけど、やられた側は忘れないか
[気になる点] うわーやっぱり旧人類と同じ流れだ... 。 ところでこれ宇宙人側からすれば、相手は自ら停戦を願い出て来たのに、いきなり前言撤回して戦争を仕掛けてきた卑劣なやつじゃないですかね?まあ戦争…
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