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降伏と賠償

星々を覆い尽くす「赤いバリヤー」が「何であるか」を知り、会議室は静まり返る。


誰も、何も発言しない時間が過ぎ、議長が軍人に尋ねた。


「今・・・何と言ったのか・・・もう一度・・・教えてくれないか?」


すると軍人は大きく息を吸い込み、言い放った。


「現在!! 惑星連盟は!! 地球艦隊に!! 完全に!! 包囲されております!!」



軍人の怒鳴り声に近い大声が、広い会議室に響く。


しかし、その言葉を聞いても、誰も、指一本すらも、動かせなかった。





意識を取り戻した代表者たちは、地球に対して降伏をするべきだと騒ぎ出す。

先程まで再度艦隊を派遣すればいいと騒いでいた代表者ですらも、顔を青くし、議長に詰め寄った。


「これほどの敵を相手に戦うなど!! 正気ではない!!」

「どこかに!! 穴は!! 穴は無いのか!!?」

「そんなものどこにも無いわ!! 既に包囲は完成しておる!!」

「早く降伏を!! あんな艦隊に攻撃されたら!! 砂すらも残らん!!」


「今回の侵略を計画した責任者を連れて来い!! 地球に人身御供として差し出すんだ!!」

「なんだと!? 侵略計画は誰も反対していなかったではないか!! お主も同罪だ!!」

「そんな事はない!! ワシは反対だったんだ!! そもそも復讐的侵略なんぞ!! そんな野蛮な行為!! ワシは反対だったんだ!!」

「見苦しいぞ!! 貴様の星からどれだけ大量の燃料が艦隊に提供されたと思っているんだ!! 言い逃れはさせんぞ!!」

「何を言うか!! 貴様こそ!!」


会議室の中では代表者達がお互いに責任を擦り付け、泣きながら降伏するべきと主張を繰り返す。

既に「護衛艦隊を再編成して地球に攻め込もう」等と発言する者は居なかった。



その日、惑星連盟は地球に対して、無条件降伏をしたのだった。





小さな艦隊が連盟本部がある星から出発した。

その艦隊の武装は全てが封印されており、各艦の艦首には巨大な白旗が掲げられている。



小さな艦隊は地球軍の艦隊の中をソロソロと進み、私が指定した場所で停止する。

そこには、地球軍の巨大な旗艦が存在しているのだった。


それから少しして、連盟の代表者数人が乗り込んだ小型艇が旗艦の格納庫に到着する。

彼らは全員がピシッとした礼服を身にまとっており、そして全員が緊張した顔をしていた。


そんな代表者達をロボットが応接室へ案内し、彼らは私と対面した。


すると、代表者達は目を丸くして驚く。

どうやら、彼らは私の姿に驚いたようだ。



(既に地球人は私しか残って居ない事を、彼らには事前に伝えておいたのだが・・・。

まあ、その最後の地球人がこんな子供では驚くのも当然かも知れない。


・・・しかし、これは事実なのだから仕方ないではないか・・・。


・・・ああ・・・、いっそ、もう少し大人の体格にしておくべきだったか?

いや、それよりも、男性体型にでもしておけばよかったかもしれないな・・・)


そんな事を思いながら、私は彼らに挨拶をする。


「ようこそ連盟の皆さん。はじめまして。私が地球の代表者です」


私の言葉に彼らはビクッと動き、うろたえた。


「ご安心ください。私は皆様に危害を加えるつもりはありません」


と言って私が微笑むと、彼らの緊張も解けたらしい。

それからは、とんとん拍子で事が進んだ。


彼らは無条件降伏するつもりだったようだが、私としてはそんな物はいらないという事を伝えた。

もう二度と地球に攻め込まないのであれば、それで良いと伝えると、彼らは安堵の息を漏らしたのだ。


それと平行して、私は地球人が過去に行った侵略行為に対する賠償もした。

残念ながら私は彼らの共通通貨は持っていないので、地球の技術を少しだけ提供したのだ。


渡した技術の内容を代表者達に簡単に説明をしたのだが、彼らの頭の上には「?」がついていたな。

まあ、技術者で無い彼らには少し難しかったかもしれない。


学者が解析すれば有効に利用できる筈だと伝え、私は小型の記憶媒体を差し出す。

彼らはオズオズと記憶媒体を受け取り、ここに正式に戦争は終結したのだ。



それからしばらくして、代表者達が持って帰った記憶媒体の解析が終了する。

新たに手に入れた地球の技術に、連盟の学者達は驚愕するしかなかった。

そして、「起こされたトラ」が今一度眠りについた事に歓喜した。


その後、連盟に属する星々は地球の技術を使いこなし、新しい「宇宙の春」を迎える事になる。

星々は競う様に新しく得た地球の技術を学び、活用し、改造していった。



そして彼らは後世の人々に伝えた。


「地球にだけは、手を出すな」


と。




こうして、私は地球を守ったのである。


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