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第二ラウンド

(ああ、だめだったか。

送り出した最後の戦艦が撃破されてしまった。

素人考えではあるが、もっと耐えると思っていたのに・・・)


敵の10倍の数を揃えても、そもそも戦艦の性能が違いすぎる。

相手の改造戦艦は、こちらのノーマル戦艦を10隻同時に相手をしても余裕を持って勝利している。

相当改造したようで、主砲の数が増えていたり出力が大幅に上昇している様だ。


それと、やはり最大の問題は作戦だ。

基本は物量作戦としているが、生産された戦艦の数が多過ぎて、一隻一隻に的確な指示を出すのが難しい。


まあ、この作業はさっきサルベージ出来た地球軍の人工知能に任せれば良いだろう。


この人工知能は戦争に特化された人工知能で、作戦の立案から細々とした補給の管理まで全て私の代わりにやってくれる。

戦争する時には役立つのだが、あまりに古い人工知能だった為、埋もれたデータを見つけるのに時間がかかってしまった。


久しぶりに起動した人工知能は、先ほどの戦闘データを元に敵艦隊の情報を次々に解析していく。


そんな中、私が特に注目した情報は敵艦隊が保有している弾薬量だ。

先ほどの戦闘は短時間であったが、人工知能は戦闘データを元に敵艦隊が保有している弾薬量を予測した。


そこで私は、様々な能力を大幅に向上した改良型戦艦を、敵が保有している総弾薬量の百倍ほど量産して前線に送り込む事にした。

改良型戦艦の能力はノーマル戦艦に比べて大幅に向上しているし、そんな戦艦を敵艦隊が保有している弾の数より多く送り込めば負けることも無い筈だ。



(・・・最悪の場合を想定して、生産体制は強化した方がいいだろうか?

ひょっとしたら今回の改良型戦艦でも負けてしまう可能性もある。

そうなった場合に備え、図面の更新システムと戦艦の生産体制だけは維持しておこう。


更新システムと生産体制さえ維持しておけば、あとは人工知能が勝手に戦艦を作って前線へ送ってくれるだろう)


そんな事を考えているうちに、急ピッチで生産していた改良型戦艦の生産が完了し、人工知能が艦隊の指揮を始める。



(さて、今回は私も最前線に行くとしよう。

そのために私が乗る旗艦まで用意したのだから、特等席で彼らの戦いを観察しようじゃないか。


かなり古い技術を使った旗艦ではあるが、まあ、壊れたりはしないだろう。

・・・しかし・・・・、昔はこんなに脆弱なバリヤーしかなかったのか・・・。


・・・そうだな・・・、いっそ地球軍の制服でも着ようか?

一応は戦いなのだから、それなりの服装をする事も最低限の礼儀として必要があるだろうし・・・。


・・・さて・・・どれを着ようか・・・、地球軍の制服の中では一番動きやすそうな・・・、少尉の制服でいいだろうか?)



私は制服のデータをサルベージし、己のサイズぴったりに作った真っ白な制服に袖を通す。


(なんだか引き締まった様な気分だ。

これが軍人達の気分なのだろうか?


まあ、それも戦場で分かる事だろう)



「では、惑星連盟の諸君。第二ラウンドを始めようか」




「ん? なんだこりゃ?」


惑星連盟戦艦のレーダー員が首を傾げた。


「どうしたよ?」


隣に居た同僚が首を傾げるレーダー員に話しかける。


「いや・・・、なんかレーダーが故障したっぽいんだ」

「はぁ? こんな時に故障かよ。ついてないな。一体どんなエラーが起こったんだ??」

「いや、エラー表示は無いんだが・・・、ちょっと見てくれよ」


レーダー員が席を譲り、同僚がレーダーディスプレイを覗き込む。

覗き込んだレーダーディスプレイには、上部から赤い帯が徐々に現れ始めていた。


「? なんだこの赤い帯は?」

「さっぱり分からん。画面の上からいきなり現れて、段々と下のほうまで来るんだが、消せないんだよ」

「あ~~~、こりゃ故障だな。ブルー画面ってのは時々見るが、レッド画面ってのは珍しいな。記念撮影しとくか?」

「馬鹿言うなよ。全く、これじゃ仕事にならん」

「ハハハ。まあ確実に故障だろうし、今回は他の艦から情報を提供して貰えばいいさ」

「それしかないか。あ~あ、俺も活躍したかったのに、レーダーが回復するまでお休みか~~」

「腐るな腐るな。地球に到着するまでに、修理も終わるさ」


ケラケラと陽気に笑いながら、同僚は他の艦に事情を話し、情報提供を頼んだ。


しかし、それは叶わなかった。

何故なら、他の艦でも同様の現象が発生していたからだ。



彼らは勘違いしていた。

「赤い帯」に見えた物・・・それは、「赤い点の集合体」であった。


「赤い点」・・・、それは「敵」を知らせる表示だ。

あまりに大量に現れた地球軍の改良型戦艦だったが、惑星連盟が改造したレーダーはその性能をフルに生かし、その全てを画面に表示していた。

その結果、「赤い点」は「赤い帯」になっていたのだ。


そしてその赤い帯は、着実に艦隊に迫っている。


これは、彼らがその事実に気がつく、少し前の出来事だった。


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