325日目 業務内容報告
325日目
『がんばれよ!』って魔銃を突き付けてくるシューン先生に励まされる夢を見た。なぜそのチョイスなのか。
まだ暗いうちに起床。感覚からして、おそらく日の出の一時間ほど前だったと思われる。寝間着からエプロン姿に着替え、宿屋モードになって気合を入れた。ちゃっぴぃを起こさないように身支度を整えた後は、なるべく音を立てずにマデラさんがいる厨房へ。
厨房にてマデラさんを発見。やはり大きな流れはいつもと変わっていないらしい。念のため指示を仰いだところ、『いつも通りで』と宣告されたのでそれに従う。
まずは風呂場の掃除を行う。湯をすべて抜き、底を磨き上げた。溝部分や排水溝にわずかばかりの湯垢(水垢?)を確認したので特に念入りに処理しておく。また、石鹸も小さくなったものは全て取り替えておいた。
掃除中、どこかの冒険者が流してそのままにしたらしき包帯の欠片(薬草のシミ付き)を発見。誰のものかは不明であるものの、注意喚起を行って再発防止に努めたい。
また、脱衣所にて服に引っ付いていたらしき魔法草の類を発見。放置すると異常繁殖して危険なため火炎魔法で処理。チェックイン前のボディチェックの徹底も喚起していくこと。
余談だが、女湯の掃除は少しだけ面倒に感じた。新しく使われている入浴剤は香りが良いけど、微妙に色が残るらしい。また、溶けきれなかったと推定される入浴剤が細かいところにこびりついていた。見た目が悪いので、その対策も考えておくこと。
風呂掃除後は朝食の下拵えを行った。主に野菜類の皮むきを行う。ジャガイモを二箱、ニンジンを一箱、リンゴを一箱の合計四箱。
去年に比べ、ジャガイモの大きさが不揃い、および形が不均一なことから、今年はあまりジャガイモの出来はよくなかったことがうかがえる。あまりにも目立つところは大目にカットしておいたので、念のため頭の隅にでも入れておくように。
ニンジンについては特筆するべきことはなし。リンゴはやはり学校のもののほうが品質そのものは上。なお、皮は全て集め、家畜のえさとした。
久しぶりに大量の野菜類の皮むきを行ったが、腕に目立った変化はなし。しいて言えば、少し手がかじかんで動かしづらかったくらいか。しかし、この程度であれば十分許容範囲内。スピードを求める場合はあらかじめ手を温めておくこと。
マデラさんが朝食の支度をしている間に洗濯物を済ませる。冒険者どもが部屋の前に出していた籠を回収し、まとめて手洗いを行った。チットゥの装束、テッドの裏地の隠しポケットに微小な穴があったので修繕しておくのを忘れないように。
また、この時期の洗濯は水が凍りそうになり、ミニリカの衣装やアレクシスの手袋の生地が傷んでしまうため、デリケートなものはぬるま湯を用意して洗濯を行うこと。
これもまた可能であればで構わないが、ルフ老が自分の下着も内側に干してくれと要求してきたので、物干し場に空きがあればそうすること。なお、『勝負下着を公開すると勝負するときに勝負できない』といった理由であるため、繰り返しになるが可能であればで構わない。
一通りの洗濯が済むころにリアが起床。一緒にベッドメイキングと目覚まし希望の冒険者たちを起こしていく。チットゥにいくらか寝不足の傾向が見られたほか、ヴァルヴァレッドの纏う魔素がいくらか乱れていたため、朝食にリラックス作用のあるハーブティーをつけておいた。
ナターシャの枕カバーはこちらで責任をもって回収。ナターシャ専用の洗剤を用いて特に念入りに処理をする。そろそろこれでも臭いが取れづらくなってきているので、来月を目途に新しいものに交換すること。
リアの仕事は概ね評価できるものであった。室内の掃除なども言わずともやってくれている。ただ、身長が足りない分、シーツの交換等に時間がかかってしまうため、後で役割の分担を検討する必要あり。
一通りの作業を済ませた後は朝食を取る。このころになってようやくちゃっぴぃが起床したため、身支度を整えさせた後で飯を食わせてやった。
朝食後はマデラさんと共に皿洗いを行う。マデラさんの話では、何人かの冒険者に食欲不振の傾向が見られたため、夕飯は香草と香辛料を工夫することになった。今後の経過次第では新しいものを発注する可能性があるため、注意しておくように。
午前中は受付にて宿帳を確認しながら店番を行う。簡易式の感知結界を構築し、人がいないときは手早く宿内外の掃除をしていた。なお、マデラさんは明日以降の食材の発注の関係で出かけていたため留守。
昼食を取りに帰ってきた冒険者はいなかったため、昼は適当に済ませた。
午後も午前中と同様に夕餉の支度や掃除を行いつつ店番を行う。夕方になるかどうかごろの時間に新規の客がやってきた。宿帳に名前を記入してもらい、前金を受け取って部屋の鍵を渡す。
男二人。装備からしてどちらも前衛職。背の低い方は左肩を痛めている節があった。余裕があれば、湿布かその類を用意しておくこと。
その二人を皮切りに続々と冒険者たちが帰還。マデラさんと共に軽く目視で状態をチェックし、夕飯のメニューにいくらかのアレンジを加える。アレンジの内容は概ねいつも通りなのでここでは割愛する。
冒険者たちの報告もいくらか聞いた。この前の魔物の群れの暴走の影響で、近場の狩場にあまりよくない傾向が出ているらしい。獲物の数が減り始めているようだ。まだ誤差の範囲で済ませられるレベルらしいけど。
夕餉の宴会ではウェイター兼キッチンとして動いた。基本はマデラさんが料理を作ってくれたため、できたものをひたすら無心で運んでいく。飲み過ぎなやつには少し度数を高めにした酒を提供してさっさと眠ってもらった。
肉料理の味付けが好評だったのでよく覚えておくこと。例の左肩を痛めているらしき冒険者はナイフを使いにくそうにしていたので、食べやすい工夫を考慮する事。
また、何人かに酌を要求されたので応えた。ちゃっぴぃとリアの尻を揉もうとしたルフ老には従業員として制裁を加えた。
隙を見てまかないを食べ、最後の食器洗いをし、戸締りの確認と最後の見回り&風呂に入って今に至る。以前と比べて早い時間に上がらせてもらったとはいえ、学校の時よりだいぶ遅い時間になってしまった。
仕事を日記にまとめるのは初めてだが、自分で書いていていつもと違うことがわかる。どちらかと言うと業務日誌のように見えてきた。
初日故にうまく書けた自信はないが、こんなもんでいいだろう。明日も早起きのため、さっさと寝ることにする。正直なところ、久しぶりの仕事で体力がかなり削られており、日記を書くのも億劫だったりする。明日からは端折れるところは端折っていきたい。
マデラさんはまだいろいろ仕事をしているらしい。いつになったらあの人に近づけるかわからない。いつも俺より遅く寝て俺より早く起きている。
今日はあまりちゃっぴぃにかまってやれなかった。たぶんこれからしばらくそうなるだろう。せめて寝る時くらいは抱きしめてやることにする。おやすみ。
20160224 誤字修正




