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320日目 おみおくり

320日目


 全身が重い……って思ったらお邪魔虫が二匹も引っ付いていた。こいつらは抱き付き癖でもあるのだろうか?


 二人をだっこして食堂へ。最近微妙に筋肉がついた気がするけど、もしかして毎朝重いものを運んでいるからだろうか。俺の筋肉はロザリィちゃんとステラ先生のためだけのものなのに。心優しすぎる自分が時々怖くなる。


 さて、今日は珍しくほとんどの冒険者が揃っている……と思ったら、なんか川の上流のほうで魔物が暴れているらしいって情報が入ったとのこと。結構な規模の群れが興奮状態にあるらしく、ついでに未確認の魔物もいるとかいないとか。


 で、なんかヤバそげだからってウチの宿屋の連中に話が回ってきたらしい。最後の確認の説明をしている人、昨日うちに来た人だった。


 普段はちゃらんぽらんでクズな連中たちも、こういうときだけはしっかり話を聞くから不思議なものである。女の尻しか見ないルフ老も、何考えてんだかよくわからないチットゥも、いい年こいて互いの世界に入り込んでしまうアレットとアレクシスも、真剣な表情をしていた。


 どうして普段から同じことができないのだろうか。こいつら、一応はこの宿にいる以上一流の冒険者であることは間違いないはずなのに。


 せっかくなのでお見送りすることに。『よーしパパ張り切って魔物ぶっ殺してくるぞー!』、『良い子で待っていてね!』とアレクシスとアレットはリアの頭を撫でる。『ぜったい、ぜったい無事で帰ってきてね!』ってリアは不安そうに抱き付いていた。


 で、テッドとヴァルのおっさんは『なんだお前、行ってらっしゃいのキスはもういいのか?』ってからかってきた。『やだぁ! やだぁ! いっちゃやだぁ!』って昔のピュアな頃の俺の真似までしてくる。あいつらホントマジ何なの?


 しかも、ミニリカはどことなく寂しそうにこっちを見てくる始末。アレットも『ぎゅっ! ってしてあげなくていいのかしら?』ってからかってきた。こいつらはどれだけ俺の純情を弄べば気が済むのだろうか?


 なお、ルフ老は『老い先短いジジイの頼みじゃ。生きて帰ってこれんかもしれん。じゃから、最後に揉ませてくれんか?』ちゃっぴぃにアプローチしてきた。もちろん、ちゃっぴぃは『ふーッ!』って思いっきり威嚇して手に噛みついていた。


 なんだかんだで最終的に、マデラさんが『──生きて帰ってきな。払ってないツケを回収しなきゃならないからね』って締めて送り出す。たぶん、あいつら全員を送り出すよりマデラさん一人が行ったほうが早いと思うけど、そこのところはどうなんだろう?


 みんなが出発したら宿屋はがらんと静まり返る。コレが健全な状態とはいえ、ちょっと寂しいことには変わりない。『さ、仕事だ』ってマデラさんも自分の仕事に戻っちゃうし。


 どうにもリアが不安そうな顔をしていたため、学校での出来事を面白おかしく話してやった。ステラ先生と言う素晴らしき女神と、ピアナ先生と言う至高の天使がいることをことさらに強調して伝えておく。


 が、リアが興味を持ったのはクーラスのほうだった。『倒れた仲間を触媒に魔法をぶっ放す危ないやつだ』ってさとしても、『お兄ちゃんよりはるかに常識的じゃん!』って超笑顔で言い切られる。


 やっぱりあいつ、ロリコンの才能があるのかもしれない。ちゃっぴぃもヘンに懐いていたし。


 『単純にまともで、ついでに裁縫の腕前に興味を持っただけだろうに……』ってマデラさんは言ってたけど、マデラさんはクーラス本人を見ていないからそういうことが言えるのだ。


 おおよそこんなもんだろうか。意外と書くことが少ない。あ、日記を付けようとしたら寝ぼけ眼のリアに見つかり、『それなんなの?』って聞かれたけど、『業務日誌みたいなもんだ』って言ったらすぐに興味を失ってくれた。嘘は言ってないし別にいいだろう。


 しかしまあ、いつもは仄かに聞こえてくる宴会の音と酔っ払いの声、あとゲロの音が聞こえないってのも不思議なもんだ。だいたいの奴が出かけて行ったから、本当に静かな夜である。


 なんか微妙にリアが震えているように見えなくもないので、今日はこいつを中心に一晩抱き枕の刑に処することにする。おやすみなさい。

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