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318日目 おっさんぶらじゃー

318日目


 なんか枕が固くなっている……と思ったらリアの胸だった。あいつの寝相の悪さに驚きを隠せない。せめてちゃっぴぃだったらまだマシだったのに。


 昨日の宴会が盛り上がったためか、冒険者どもの大半は寝こけていた。ちゃっぴぃとリアを伴って食堂に行っても、そこにいたのは老害らしく早起きなミニリカとルフ老しかいない。ルフ老は『ちょっとだけ! ちょっとだけだから撫でさせとくれ!』ってミニリカのケツを触ろうとしておもっくそぶん殴られていた。


 これで素面だというから驚きである。しかも、ちゃっぴぃとリアのケツも撫でようとしてくる始末。リアは無言で近くの酒瓶を手に取り、ちゃっぴぃは俺の背中に隠れた。もちろん、二人に代わって俺がルフ老にケツビンタをしておいた。


 『なぜにもっと全力でやらぬ!? 三人の美少女の尊厳が失われるところだったんじゃぞ!?』ってミニリカに言われたのがいろんな意味で解せぬ。が、下手に突いてぶん殴られるのも面倒なため、『ルフ老はすでにハゲているからガチハゲの呪も効かないんだ』って答えておいた。


 なお、マデラさんはその様子を『耄碌したジジイくらいあしらえるようにならなきゃやっていけない。本当に危ない時は手を出すから、それまでは自分で何とかしな』って見守ることを決めているらしい。まあ、ババアロリはともかくリアは覚えておいたほうが良いだろう。


 朝食後は久しぶりに近くの川に釣りに行くことにした。『わたしも行く!』とリアが言ったのでついでに連れていくことに。あと、『今日は休むから俺も行こう』ってヴァルのおっさんもついてきた。


 そんなわけで、俺、ちゃっぴぃ、リア、ヴァルのおっさん、エッグ婦人、ポワレ、ロースト、ピカタ、グリル、マルヤキ、ソテーで川辺に陣取り釣り糸を垂らす。あ、ちゃっぴぃは俺と同じ竿で、エッグ婦人とヒナたちは釣りはせずに水遊びね。


 さて、せっかく釣りを始めたのはいいんだけど、待てども待てどもアタリは全然来ない。あの日見たヌシの姿を見るどころか、小魚一匹釣れやしない。『今日は日が悪いのか?』っておっさんも不思議がるレベル。リアでさえ退屈そうにし、ぽつぽつと不満を漏らしていた。


 ちゃっぴぃに至っては、露骨にきりきりと歯ぎしりをしている。思えば、こいつと一緒に釣りしたときっていつもこんなかんじだ。もしかしたら夢魔には釣りに関する隠れた特性があるのかもしれない。このネタで論文発表できるだろうか?


 クソ寒い中水遊びをするヒナたちを眺めていたら、ようやくおっさんの釣竿に当たりが。が、釣れたのは見ていて可愛そうになるくらいに貧相な小魚。泣けてくる。


 『腹の足しにもなりゃしない』とおっさんはヒナたちにそれを放った。ヒナたちが残酷なるバトルロワイヤルを繰り広げる。エッグ婦人が横からかっさらって丸呑み。ヒナたちケツフリフリして猛抗議。どこの世界でも親は理不尽なものらしい。


 結局、それ以降竿はピクリとも反応せず。いくらなんでも退屈過ぎたため、午前中で早々に切り上げ宿屋に帰還。『釣れたかい?』と聞いてくるマデラさんにありのままを話す。前までこんなに釣れないなんてことはなかったのに、不思議なこともあるものだ。


 午後はヴァルのおっさんで遊ぶことに。リアに夏の時のブラジャーを見せつけ、『これはおっさんが付けてた秘蔵のブラジャーなんだぜ』と手渡してやる。『わたしよりおっきい……!』ってリアはぶかぶかすぎるそれを自分の胸にあてて絶望の表情を浮かべていた。


 直後、『クソガキどもがぁ……!』ってヴァルのおっさんが怒りだしたのがわけわかめ。俺は事実しか言っていないのに、どうしてああも怖い顔をしたのだろう。短気な人って本当にやーね。


 あと、『八つ裂きにして丸焼きにして食っちまうぞ!』って脅されたけど、いったいいつまでその脅し文句を使うのか。もうあの時のピュアな俺じゃあないというのに。リアだってそんなの真に受けない。


 おっさんはまるで成長していない。これだからおっさんはおっさんなのだ。


 『やれるもんならやってみろ』って挑発したら、本当に八つ裂きにして丸焼きにして喰われそうになった。ナタもかまども用意するという徹底っぷり。昔の俺ならギャン泣きして漏らしていただろう。今日も杖を持っていなかったら危なかった。


 なお、俺がおっさんに丸焼きにされそうになっている間、リアとちゃっぴぃはブラジャーで遊んでいた。ふと思ったけど、ちゃっぴぃはブラジャーをしなくてもいいのだろうか? まあ、ブラジャーを付けている夢魔なんて見たことも聞いたこともないし別にいいか。


 ざっくりだがこんなものだろう。一匹も魚が釣れなかったのが地味に悔しい。そして、ちゃっぴぃは今日はリアのところ……っていうか、アレクシスとアレットの部屋で寝るらしく、先ほどリアに手を引かれて出て行ってしまった。


 しかも、俺の夢魔のぬいぐるみを拉致していく始末。ぬいぐるみ二体と自前のクッションを持ち、寝間着の舞踊衣装を着こんだちゃっぴぃは『きゅーっ♪』ってたいそうご機嫌だった。


 もう寝よう。久しぶりにゆっくり眠ることができる。この当たり前がどれだけ幸せな事か。みすやお。

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