314日目 バトル・ダーツ
314日目
腕がめっちゃ痺れている。いつのまにやらちゃっぴぃに腕枕させられていた。昔のミニリカみたいなことしやがって。
ちゃっぴぃをお姫様抱っこしながら食堂へ。すでにリアがシリアルの準備を一人でしていたため、ついでにやってもらう。『高くつくよっ?』ってあいつは平然と金銭を要求してきたけど、いったいどんな教育を受けてきたのか。
あと、『たぶん、アンタの真似だ』ってマデラさんに言われたのが未だに解せぬ。まあ、優しい俺はコイン一枚だけあいつにあげたけど。
シリアルそのものの味は普通。まあ、シリアルにいいも悪いもあんまり関係ない。けど、ミルクはかなりの高品質。学校じゃ提供できないクオリティ。マジうめえ。
朝食後、いくらか酒臭いテッドが部屋から出てきた。どうやら昨晩かなり遅くまで飲んでいたらしい。飲む金があるならさっさとツケを払うべきだと思うけど、なぜこいつはそんなことがわからないのだろうか。
ちなみに、マデラさんはあえてこいつのツケを最低限のラインで許容していたりする。そうすることで、いざというときに顎でこき使えるからだ。『計画性のないバカにゃ、これくらいの扱いがちょうどいい』って言ってた。
さて、どうやら今日はあいつは出かけないようなので、暇つぶしに付き合ってもらうことにする。『ダーツやろうぜ』って声をかけたら、『昼間っからダーツとかお前クズじゃね?』って言われた。こいつだけには言われたくねえ。
とはいえ、なんだかんだであいつもノリノリ。『負けたら奢りな』という条件の元、神聖なる勝負が始まる。なお、実況&解説(双方ともに見ているだけ)はちゃっぴぃとリアだった。
さすがと言うべきか、テッドはこの手の遊戯にめちゃくちゃ強い。元々手先が器用なのもそうだけど、勝負強さってのを持っている。つーか、ナイフ投げで獲物をしとめていたりするし、苦手なはずがない。『夏は散々ケツの毛を毟られたからな……!』って初心者相手に容赦なく最高点を突きつけてきやがった。
さすがにまずい。いくらなんでもこの展開には焦る。『ほれ、さっさと投げろよ?』って挑発されたけど、このまま普通に投げたら俺が負けるのは確定的に明らか。よくて引き分け、まず間違いなく敗北ってところだろう。それだけは避けたい。
しかもあろうことか、俺の矢だけなんかボロボロ。さっきまでそんなことなかったのに。テッドの野郎、いつの間にかガラクタダーツとすり替えたらしい。あいつマジクズじゃね?
そんなわけで、ちゃっぴぃを手招きしてダーツを渡す。『きゅ?』と首をかしげてきたので、『そのまま飛んであそこにぶっ刺してこい』と命令した。ちゃっぴぃのやつ、『きゅーっ♪』ってパタパタ飛んでグサグサさしまくっていた。
まさに完璧な作戦。俺の手から放たれた矢が最高得点のところに三本とも刺さっている。『汚ぇぞコラ!?』ってテッドにすごまれたけど、ルールは破ってないから別にいいよね。
『本人が直接投げた矢で勝負しろ!』というので、優しい俺はそれに付き合ってあげることに。しかも、『まずてめえから投げろ。魔法やそいつを使ったらてめえの頭が的になると思え』ってテッドは脅してくる。
デリケートな俺はぶるぶる震えながらも矢を投げ、それなりの高得点を出すことに成功。テッドのやつ、『口ほどにもねえなぁ!』と投げる体勢。
投げる直前、ひざかっくんしてやった。当然矢は変なところに行く。ルールは破ってないし別にいいよね。それに、先に暴力で脅してきたのはあっちだし。
『ふざけんな! 無効だ無効!』ってテッドに言われたけど、そもそもこういうやり方を俺に教えたのはテッドの奴だ。真面目な話、ダーティーなやり方や考え方は全部こいつから学んだと断言してもよい。クレイジーな部分はナターシャから学んだけど。
なお、この様子を見ていたリアは『どっちも紛れもないクズだね……』って憐れむような瞳をしていた。いったいどういう意味だろうか?
ちなみに、ぎゃあぎゃあ騒ぎながらダーツをしていたら、『うるさいよガキども!』ってナイフが飛んできた。それも一本や二本じゃなくて十本単位のが複雑な軌道を描いて同時に。
しかも、俺とテッドの頬をかすめて全部が的にズダダダッ! って当たるって言うね。純粋な技術なのかそれとも魔法を使ったのかイマイチわからないけど(魔法を使った気配はしなかった。でも技術じゃ物理的に不可能)、どちらにせよさすがはマデラさんである。
夕飯食って風呂入って今に至る。夕飯中、アレクシスとチットゥとヴァルのおっさんも交えてダーツをやっていたら、『食うか遊ぶかどっちにかにしなっ!』ってマデラさんにガチケツビンタされた。思わず悶絶。痛いってレベルじゃない。
すごくどうでもいいけど、ルフ老はケツを痛めて現在椅子に座れないらしい。『まさか女風呂の前ですーはーしとるだけでケツビンタされるとは思わなんだ……』って言ってた。こいつもガチでクズじゃね?
ちゃっぴぃは今日も俺のベッドを占拠している。少なくとも、毛布を少し譲る姿勢だけでも見せてほしいものだ。夢の中でステラ先生とロザリィちゃんに出会えることを願って、今日の日記の締めとする。おやすみなさい。




