309日目 久しぶりの我が家
本日二回目の更新です。前回の更新を見ていない方はそちらからどうぞ。
309日目
いつも通り日記をつけることになるとは。調子に乗ってそれっぽいことを書いたうえ、わざわざカッコつけて【魔系学生の日記:了】ってつけたのにちょう恥ずかしい。まさか自分が日記を付けないと寝付けない体になっているとは予想外。
さて、せっかくなので順を追って書いていこうと思う。
起床はいつもよりかなり遅め。久しぶりの自室での睡眠だったからか、かなりよく眠れたっぽい。一晩抱き枕の刑に処したちゃっぴぃの体温がなかなかに温く、抱き心地が良かったってのもあるだろう。
自室での目覚めだというのに、なんか新鮮な感じがするのがちょう不思議。ついでに、日が高く昇っているのもマジびっくり。たぶん、今までこの部屋で過ごした中で一番遅い起床だったと思う。
で、下に降りる。冒険者どもはさっさと出かけたかまだ寝こけているかの時間。食堂も空いていてゆったりしたかんじ。『ほれ、朝飯はそこだ』ってマデラさんが用意してくれた朝餉を取る。
ひさしぶりにマデラさんの朝食を食べたけどやっぱり美味しい。なんかすごくホッとする味。まかない料理とは思えないレベル。ちゃっぴぃも『きゅーっ♪』ってうまそうに食っていた。
ゆっくりとモーニングを取った後は日記をマデラさんに提出する。『思ったより書いてあるねぇ……』ってマデラさんはパラパラっとそれをめくってつぶやいた。『けっこう読み応えがありそうだから、ちょっと待っとくれ』と言われる。
その後はひたすらに自由を謳歌した。ナターシャのヨダレ枕カバーを回収する必要もないし、冒険者どものゲロ掃除をする必要もない。掃除も洗濯も、ジャガイモの皮むきだってしなくていい。帳簿だってつけなくていいし、卸に関する問い合わせもやんなくていい。
風呂の準備も問題なし。夕餉の仕込みもしなくていい。冒険者どもがぶっ壊したものの修繕もしなくていい。いまだかつてこれほどまでにこの宿で心休まるときがあっただろうか。いや、ない。
そんなわけで、ちゃっぴぃと戯れながら外で日向ぼっこをする。ホントはハンモックがほしいところだけど贅沢は言えない。冬とはいえ、日向は結構暖かいのがなかなかにグッド。なにより昼間っからぐうたら出来るのがマジ最高。
昼近くになってナターシャが起きてきた。相変わらずヨダレ臭い。『ハゲプリンよこせ』って言われたけど、『残念だな、今の俺は休暇中だ』って断った。
ヘッドロックされた。脂肪の塊が邪魔。窒息するかと思った。
おやつの時間ごろ、軽く依頼をこなしてきたらしいミニリカが帰宅。『のう、学校の話をしてくりゃれ?』とヘンに甘えられた。『ロザリィちゃんとイチャイチャしていただけだ』って返したら、『そこのところ詳しく!』と鼻息を荒くされる。あのババアロリなんなの?
夕方ごろ、アレットとアレクシス、そしてリアが帰ってきた。今日は家族でお出かけしていたらしい。アレットに『リアも良い魔法学校にいれないといけないかしら? ちょっと参考程度にウィルアロンティカについて教えてくれる?』と聞かれるも、『よりにもよってそいつに意見を求めるなッ!』とアレクシスにさえぎられる。
なお、肝心のリアはちゃっぴぃ、エッグ婦人、ヒナたちと遊んでいた。やっぱこいつも同年代の友達がいないらしい。そりゃそうか。
夕飯は冒険者に交じって食堂でとる。こいつらはいつも魔系の宴会みたいに飲んで騒ぎまくるから困る……けど、今日の俺はなにもしなくていいから超らくちん。ちゃっぴぃはいろんなテーブルを渡り歩き、媚を売りまくって物をもらいまくっていた。
その後は風呂に入る。ふと思ったけど、学校のと遜色ない大きさの風呂ってけっこうすごいんじゃね? あと、ちゃっぴぃも一緒に入れようとしたんだけど、なぜかミニリカに『ケダモノが蔓延る風呂に入れるバカがどこにおる!』ってケツビンタされた。解せぬ。
風呂上がり後、マデラさんから『総評を最後に書いておいたから』って日記を返却される。俺でもビビるほどの文章量なのに、もう読み切ったらしい。ずっと仕事をしていたと思うんだけど、いったいいつの間に読んだのか。さすがはマデラさんだ。
で、言われた通り総評を読んでみる。なんかすっげぇ恥ずかしい気分になった。こんなの絶対テッドとかヴァルのおっさんには見せられない。俺はあの宴会朗読会の惨事を絶対に忘れない。
あと、マデラさんの最後の文をみて一瞬死んだかと思った。かなり怒っているのは間違いない。だって、『しばらく休んでいい』って言ってたのに、それを忘れて『朝の仕事が終わったら~』って書いている。
生きた心地がしない。なんで俺は馬鹿正直に日記を書いたのだろう。俺程の実力があれば事実を盛ることなんて簡単なはずなのに。
日記を閉じてベッドに入るも、どうにもこうにも寝付けない。精神鎮静の目的でダンシングステラ先生の映像触媒を眺めたけど、一向に眠気が来ない。
よもや隣にギルがいないからか……なんて思ったけど、そんなはずはない。昨日は普通に眠れたし。
で、ここである事実に思い至る。
──もしかして俺、日記書かないと寝られない体質になってるんじゃね?
どうやら、俺はもう日記なしでは生きていけない体になってしまったらしい。その証拠に、今更になっていい感じに眠くなってきた。自分の律儀な性格を思わず呪いたくなる。
そろそろ筆をおこう。今日は本当になにもしなかった。これからは別にノルマとかあるわけじゃないし、内容が適当でも問題ないだろう。今日もちゃっぴぃが俺のベッドに潜り込んでいるので、やつのケツ枕を堪能して寝ることにする。おやすみなさい。
私は日記をそのまま写しただけです。だからシステム的にも【完結済み】にはなっていなかったでしょ?
『謀ったなぁ!?』と叫びたい人は、書き手の彼に向ってガチケツビンタの呪でもかけてください。呪文は各々好きなものでいいです。呪とはその念の強さこそが重要であり、その本質がぶれなければなんでもいいらしいです。
あとおよそ二か月続きます。どうぞよしなに。




