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15、ノンストップ

 生徒会室に入った俺は、その場にいた竹取先輩に向かって聞いた。


「どもっす。特に用事があったわけではないっすけど、人の気配がしたんで、覗いてみただけっす。ちなみに竹取先輩は……一人で何してるんすか?」


 俺の言葉に、竹取先輩はわざとらしくため息を吐いてから答える。


「昼飯を食べている以外、何をしているように見えるってんだよ?」


 ん、と弁当箱を箸で指さしつつ、不機嫌そうな表情になる竹取先輩。

 なるほど、竹取先輩はボッチ飯なのか。ほんの少し前までの俺も、よくボッチ飯で昼休みを過ごしていた。

 そのため、俺は竹取先輩に親近感に似た気持ちを抱いていた。


「……ちなみに、普段は普通に教室で友達と弁当を食ってるからな。そんな目で見るのはよせ」


「それなら、なんで今日に限って生徒会室にいるんすか?」


 無駄に裏切られた気持ちになった俺は、竹取先輩にそう尋ねた。


「ああ、ウチのクラスの連中が、体育祭のことで昼休み中も熱心に盛り上がってたからな。付き合ってられないから逃げてきたってわけだ」


「……三年にとっては、最後の体育祭だし、受験勉強の息抜きにもなるから、自然と熱心になるんすかね」


「そういうことだな」


「それで、竹取先輩はなんで熱心に体育祭の話に参加しないんすか?」


 俺が問いかけると、


「意外か?」


 どこか楽しそうに、彼女は言う。


「いえ、別に意外とかではないっすけど」


 俺の言葉に、悪戯っぽく笑ってから、彼女は答える。


「ま、生徒会長だから学校行事に積極的とは限らないってわけだ」


 ……自虐ネタなのか、自然に話しているだけなのか、あまり親しくないのでわかりづらかった。俺は、ただ曖昧に笑うことしかできない。


「それで、後輩君。人の気配がしたから覗いてみたって、言ってたな。……誰がいると思ってたんだ?」


 ニヤニヤと笑みを浮かべながら、竹取先輩が尋ねかける。

 俺は答えようとしたのだが、


「いや、当ててみせよう。……乙女がいると思って、この部屋に入ったんだろ?」


 挑発的な視線で俺を見ながら、彼女は言った。


「……なんでそう思ったんすか?」


「春馬は同じクラスだから、生徒会室にいないことは知っているだろうから除外。だとすると一番可能性が高いのは、乙女だ」


「なんでそこで竜宮なんすか? 田中先輩と鈴木は?」


 俺の言葉を聞いて、呆れたような表情で、竹取先輩は言った。


「乙女は、目的のためならお前のことも利用しそうだからな」


 目的って……それは、池とのことを言っているのだろうか? などと、考えていると、


「どうやら、あたしの予想は当たっていたようだな」


 にぃ、と口角を上げて悪そうな笑顔を浮かべる竹取先輩。

 

「それで、実際どうなんだ? お前は乙女に頼まれて、春馬との仲をどう取り持つつもりなんだ?」


 この段階で、既に彼女の中では俺が竜宮から相談を受けていることに気づかれてしまったようだ。

 あまり知られたくはない、と思いつつも、竜宮の好意は周囲にバレバレだし……今は、竹取先輩に話を聞いた方が有意義だな。


 そう思って、俺は池から聞いた言葉を、竹取先輩に話してみることにした。

 俺の話を聞いて、竹取先輩は「……ったく、あの野郎」と、どこか不満そうに呟いていたのだが、それが何故か察することは出来なかった。

 それから、俺はどこか不機嫌そうな竹取先輩に問いかける。


「池と親しい、イニシャルが『T』の女子って、どれくらいいるんすかね?」


 俺の言葉に、大きなため息を吐いてから、


「ったく、お前はマジで分かってないのか?」


 と、呆れたように俺を見据える。


「……心当たりがあるんすか?」


「はぁ、お前も大概、鈍感野郎なんだな」


 と前置きをしてから、















「『T』っつったら、一人しかいねぇ。……お前だよ、友木」


 








 と、吐き捨てるように言った。


「は?」


「だからな、春馬はお前に惚れてんだよ」


「……いや、池は『T』ってイニシャルの女子が好きって言っていたんすけど」


「だからそれは、春馬がお前を女っていう風に見ているって宣言だっつの。……ったく、折角春馬が勇気を出して告白したっていうのに、報われないやつだな」


 やれやれ、と首を振ってから、頭を抱えた竹取先輩。

 俺が頭を抱えたい。……切実に。


「それで、お前はどうするんだよ?」


「どうするってのは?」


 俺は竹取先輩のそのノンブレーキでアクセルを踏み込むスタイルに全力で引きつつ、そしてどんな回答が飛び出すか身構えつつ、彼女に聞く。


「……春馬に、なんて返事するんだよ?」


 真面目な表情で言う竹取先輩を見て、俺は思う。


(駄目だこいつ…早くなんとかしないと…)


「とりあえず、俺は教室に帰りますんで」


 俺は竹取先輩の問いかけに答えないまま、この場から逃げようと画策し、彼女に背を向ける。


「ま、なんだ。これからも乙女と……春馬とも、仲良くやってくれよ、後輩君?」


「……うす」


 穏やかに笑いつつ言った竹取先輩に、俺は一言答えて生徒会室を後にする。


 それから、彼女の浮かべた優し気な表情を見て、もしかして俺は、彼女に揶揄われていただけなのか? と冷静にそう思うのだった。





 そして、廊下を歩いて教室に向かいつつ、そういえばと、俺は今更思い至る。


 竹取輝夜。


 無意識のうちに候補から外していたのだが――あの先輩のイニシャルも一応『T』だな、と。



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