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幼馴染が女勇者なので、ひのきの棒と石で世界最強を目指すことにした。  作者: のきび
第三章 ミスティアとクロイツ ―ふたりの魔王討伐―
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クロイツと勇者候補選抜御前試合 その三 ~童貞を殺す服じゃダメなんですか?~

 斧を抱くディオナはハッとして我に返ると「そう言えば皆さんに服を着てもらわないとダメですよね」と言って斧をアイテムバックに大事そうにしまうと、そのバッグから四組のピンク色の服を取り出しベッドの上に並べた。

 服が関わると切り替え早いわね。

「きれいなピンク色ですね」

「デザインも良いんですよ」とディオナは自画自賛する。

 ディオナはそれぞれの服を持ち一人一人に手渡していった。私の服はなぜか布が少ない。

「え? 私ビキニアーマー系なの?」

 広げた私の服はお腹丸出しの服で、肌の露出が多い。お腹丸出しは良いとしても、身体の線が丸見えでこれは地味に恥ずかしい。

 だけどディオナは、何を言っているんだと言わんばかりの顔をしてヤレヤレと首を降る。

「クロリアさんともあろう人が女戦士のトレンドも知らないんですか」

 その言い方は、まるでセンスの無い人間をダメ人間がごとく(さげす)む言い方である。

「戦いに明け暮れてたから、ファッションに疎いのよ、それにできれば乳袋とか付いててふわっとした服がきてみたいかな」

「そういう童貞を殺す服が悪いとは言いませんが、トレンドじゃないんですよ」

 私のファッション感覚の無さをうけてディオナは冒険者ファッションのいろはを私に叩き込み出す。冒険者ファッションに興味ない私は上の空である。

「クロリアさん聞いてますか? そういう理由で女戦士のトレンドはビキニアーマーと制服アーマーなのです。そして制服アーマーは小柄な人が似合うんです。クロリアさん身長はいくつですか?」

「……高いです」

「正確に!」

「173cmです」

「173cmは大柄ですか? 小柄ですか?」

「中くらいです」

「大柄ですか? 小柄ですか?」

「花柄です」

「大柄ですか? 小柄ですか?」

「小柄かな?」

 イラッとしたディオナは眉をあげ私を睨む。私は怒るディオナの胸を一揉みする。

「な、なにするんですか!? 私にまで手を出すとか節操無さすぎですよ!」

「ごめんごめん、でも落ち着いて、世の中にはファッションに興味ない人もいるのよ?」

「だからダメなんですよ、クロリアさんは美人なんだからもっとおしゃれしてください」

 ほうほう、私が美人とな? 珍しくディオナから私を誉める発言があったこれは嫁フラグかな?

 つまり、バディになる人には格好良くいて欲しい、こういうことですね? 良いでしょう良いでしょう。今日からあなたも私の嫁です。私はディオナを抱き締め頭を撫でる。

「なっ!? なにするんですか!」

「うん? ディオナ今日から私の嫁になるんでしょ?」

 抜け出ようとするディオナを私は逃さまいと強めに羽交い締めにする。ふふふ照れるでない、照れるでない、良いではないか、良いではないか。私がディオナにキスをしようとしたとき、アリエルとティアのパンチが脇に入る。ティアのパンチはお察しなのだがアリエルのは地味に痛い。

「ぐふっ!」

「何してるんですかクロリアさ~まぁ~」

「ディオナが私の嫁になりたいって言うから」

「な!? 私はそんなこと言ってませんよ!」

 私は正座をさせられ土下座をした。

「いや、だってそんなに私を美人とか言ったりファッションに気を使われたら勘違いしちゃうよね?」

「しませんよバカですか?」

「うーんディオナさんクロリア様は目が合っただけで気があると勘違いしちゃう人なので許してくださいね」

 アリエルはまるで私が童貞の勘違い野郎のような言い方をする。いや、確かに処女だけどそんな勘違い野郎じゃないからね?

「はぁ、もう良いです。173cm大柄ですよ、165cm以上はビキニアーマーで決まりなんです! ファッションは恥ずかしがったら負けですよ堂々としてください」

「でも待って、ディオナはコート着てるのになんで私はないの?」

 ディオナの服も私と同じビキニアーマーだがお尻はコートで隠れている。あれ私も欲しい。

「リーダーはコート着ないものなんですよ、美しい肉体を周りに見せて、リーダーの威厳を示すのが普通なんです」

 美しい? つまりディオナは私に惚れてる? っと、また抱きつくとアリエルに怒られる、自重、自重。

 とは言えこのままだとあの卑猥な服を着ることになる。

「助けてアリエル~」

 だけどアリエルはディオナが言っていることは本当だと言う。

「本当に? 本当? 聞いたこと無いわよそんなの」

「でも、ディオナさんもビキニアーマーですし」

「アリエルは良いわよ魔法使いだから普通の服で」

「本当に普通に見えます?」

 アリエルがスカートの無い服を恥ずかしそうに布を引っ張って無理矢理隠そうとする。

「みなさんファッションが分かっていませんね。この服なら注目の的ですよ? みんなうちのチームに憧れること間違いなしです」

 ……うちのチームか、ディオナが私たちを家族と思っていてくれる証拠なのは嬉しいけど、この服はさすがにね。

「あ、」アリエルアーマーあるんだったわよね、それ出してみて」

 そう言われ、思い出したようにバッグを(あさ)りみんなの分のアーマーを取り出す。

 私には金のアーマーを渡してくるが、肩当てと小手と腰当てしかない。全然守れる気がしない、完全におまけだ。当然デザインはディオナだ服に合わせたいからとアリエルにお願いした。

「ディオナ、もっとフルアーマーじゃないの?」

「先ほども言いましたが肉体を見せることが強い証なのですよ。そのアーマーもいらないくらいですよ」

 ただリーダーはリーダーの証しとして鎧に金のパーツを使うのが通例なのだそうだ。もちろん低級の冒険者パーティーが金のアーマー等持てるわけもないので、通常は金貨に穴を開けて首から吊るす程度なのだという。

 金の多さがそのパーティーの強さを表すバロメーターなのだ。私のはアーマーはすべて金でできている。どんな冒険者に負ける気はないけど、さすがにまだギルドにも入ってないのにこれは挑発しすぎじゃない?それに……。

「これ、強度大丈夫なの? 全部金だから紙装甲ですよね?」

「そうですね紙装甲です、グラスラスでコーティングしてあるだけなので少しは強度が上がってますが壊れるときは一瞬で壊れます」

 私はアリエルならなにか特殊なコーティングをしたものだと思ったが、返ってきた言葉は笑えなかった。

「良いじゃないですか、クロリアさんなら攻撃当たらないですよね」

「そうですよクロリア様なら当たりません」

「クロリアさんなら大丈夫ですかっこういいですし」

 うん、誉めて伸びる子クロリア、みんながそういうなら私はどんな攻撃も避けて見せるわ。まあ、当たらなければ良いだけだしね。

「うん、みんながそう言うなら大丈夫ね」

「ええ、問題ありません」

 なにか言いくるめられた気がしないでもないけど、ディオナが喜んでいるならそれで良いか。

「あとこのワッペンを武器のベルトにつけておいてくださいね」

「ピンクマッシュルーム? チームワッペン? かわいいじゃない」

「ありがとうございます」

 珍しく素直にお礼を言うディオナは良い笑顔で笑う。私はディオナの顎をクイッとあげて私の顔を見上げさせる。

「いつもそういう笑顔だとお姉さん惚れちゃうんだけどな」

 痛い痛い、ディオナさん足グリグリするのやめてください。呪いの斧でグリグリするのやめてくださ~い!

「なんでそうケダモノなんですかあなたは! 私には心に決めた人がいるんです!!」

「え? お姉ちゃんいつのまに恋人作ったの?」

「え? そんな人いないわよ?」

「「「「???」」」」

「まあ、なんにせよ、これでチームピンクマッシュルーム始動ね」

「いいえ、まだですよ一人も冒険者いませんし」

 ぐっアリエルさんそこはノリですよノリ。必要なのは勢いよ。

「いいのよ、私たちは枠にとらわれない、そんなチームを目指してるのだわ」

 そうそう、どうせうちのチームの又の名前は”クロリアと美しいハーレム軍団”なんだから、ギルドに入っているとかいないとか小さな問題でしかない。

「苦しいですね」

「無理矢理ですね」

「アホですね」

 やはり少し苦しかったか? だけど大丈夫、私はリーダーだから。うんリーダーだから!

 もう寝よう……。私は服を脱ぐと一人でそそくさとベッドに潜り込んだ。

「冗談ですよクロリアさん、ふてくされないでくださいよ」

「クロリア様、大人げないですよ」

「まあ、それは放っておいて――」

 皆は大人げないと言うがディオナに至ってはそれ扱いだ。私いじられキャラなの? リーダーなのに? はぁ、お漬け物食べたい。

「私のバッグに魔法部品(マジックパーツ)が一つもないので分けてもらいたいのですが」

 ディオナがふてくされる私にお構いなしで話を続ける。魔法部品(マジックパーツ)? なにそれ。私はそれが気になり起き上がってみんなを見るが、アリエルでさえ「魔法部品(マジックパーツ)? なんですかそれ?」と言うしまつだ。

「魔法の秘薬ですね、在庫がないようでしたら。あ……。いいえ、あれ? なんで?」

 自分が怪我したとき用の薬草でも欲しいのかしら? 怪我をさせる気はないけどいつ不測の事態があるかもしれないわね。

「ポーション用の秘薬ならアリエルがいくつか持ってるけど、薬草状態で使うよりポーションにした方がいいわよ」

「いいえ、そう言う訳じゃ」

「そう?」

 アリエルも私の考えに気がついたようで、バッグからポーションをいくつか取り出してディオナに渡す。

 ディオナはそれを見て目を輝かした。

「すごい、こんな高品質のポーションが作れるんですか?」

「わかるんですか?」

「ええ、これはS級回復薬と同等の力がありますね」

「S級?」

 アリエルとディオナはそのままポーション談義に花を咲かせた。ポーションには等級がある特等、1等、2等、等外の四種だ。S級なんてものはない。先程から明らかにディオナはおかしい。斧の影響だろうか、ここは力ずくでも斧を取り上げた方が良いのかな。いいえ、大丈夫と言うディオナを信じるべきね。本当にダメなときは私の全力で助ければいいだけだわ。

 私の心配はよそにアリエルが私のベッドに駆け寄りディオナの知識の異質さを話す。

「すごいですよクロリア様、ディオナさん私たちとは別系統の秘薬の知識を持ってます」

「それってどういうこと?」

「多分あの斧が知識をもたらしたのか、何かの要因なのかは分かりませんが」

「でも魔法部品(マジックパーツ)なんてもの無いでしょ?」

「それがどうも植物の生態を聞くと似たような雑草があるんですよ」

 アリエルが納得するくらいだから気が狂ったり虚偽の情報じゃないようね。

「それなら、その魔法部品(マジックパーツ)とやらを集めてきてもらったら何か分かるんじゃない」

「それですね!」

 ディオナの元に戻ったアリエルが喜びながら話す、また知識欲が沸きだしたってところかしら。

「分かりました、ただ私も何でそんな知識があるのかは分かりませんのでどうなるかは責任持てませんよ?」

「そうね、ディオナに危険がない範囲で集めてきて」

「分かりました、明日できる限り集めてみます」

 ディオナのレベルは10だけどステータス的には50相当この周辺にディオナに手に追えない魔物はいない。それに、あの斧があればディオナが危機に陥ることは無いでしょう、あの斧はディオナを守っているようだし。むしろ怖いのは人だわ、とは言えこの街の悪人は一掃したし大丈夫か。

「じゃあ、私は寝るわねおやすみぃ~すやぁ~」

 ”コツコツコツ”

 私が寝ているベッドに忍び寄る足音。だけど私は目を覚まさない。私は一度寝たら起きることがないのだ、おやすみなさい。

「すやぁ~すやぁ~」

「クロリア様、なに寝たふりしてるんですか? 今日はお仕置きで寝かさないと言いましたよね?」

 耳元でささやくアリエルはフッと息を耳に吹く。

「すやぁ~」ガクガクブルブル

「ふ~ん、これは少し教育が必要ですね”サイレント”」

 アリエルが音が漏れないようにベッド周辺に消音魔法をかける。これで私がいくら泣き叫ぼうが誰も助けてくれなくなった。

 どうする?

①先手必勝

 逆にこちらが攻勢に回りずっと私のターン。

②謝る

 土下座で許しを乞い、お仕置きを軽くしてもらう。

 いや、アリエルはサドだ。そんなことをしたらお仕置きが増えるだけだ。

③逃げる

 バカなあり得ない、この私が(よめ)から逃げるなどあってはならないのだ。例えそれが死地に(おもむ)くのだとしても。


 ならば答えは一つ先手必勝! 天国へ行くのはあなたよアリエル!



 ”チュンチュン”


 あ~今日も太陽が黄色い。はい、お察しの通り負けました。アリエルに勝てるわけがない。私のすべてを知り尽くしている彼女に一瞬でも勝てると思った私がバカでした。


「おはようございますクロイツ様」

「はい、おはようございますアリエル様」

「またそれですか」

 そう言うとコロコロと目を細めて笑う。うん、私は一生アリエル(よめ)に勝てなくて良い気がしてきた。

とは言え。

「少しは手加減してください」

「すみませんクロリア様、私から絶対に逃げなくなるまで調教しますのでそれだけは聞けません」

「に、逃げないわよ。そんなに信用できない?」

「信用してますけど、怖いんです。置いていかれるのが」

 私は寂しそうに下を向くアリエルを抱き締めた。

「じゃあ、私がアリエルに勝ったら信用してね」

「それじゃ、一生信用できませんよ」

「言うではないか? 良いだろう、ならば勝って見せましょうぞ」

「ふふふ、楽しみにしてますね」

 そうやって笑うアリエルの笑顔を”守りたい”と思う今日このごろでした。



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インフィニティ・プリズン~双星の牢獄~ シリーズ
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