18話 雨の中行商人に素材の値段を聞く、錬金術ギルドって錬金術師の位置把握してない?
夏も真っ盛りな季節ですが、いかがお過ごしでしょうか。どうも、ヘルマンです。今日は生憎の雨、お休みの日です。どうもこの教会前広場は水はけが良く作ってあるらしく、泥のぐじゅぐじゅ感が無くてとても良きですな。おかげでテント生活も楽というもの。雨の日はもっぱら錬金術大辞典を読みながら過ごしております。この錬金術大辞典、基本的に回復アイテムや便利アイテムは載っているんだけど、攻撃アイテムなんかは一切載っていなかった。
その辺はもしかすると派閥で出す出さないを決めているんじゃないかと思います、直感だけどね。まあ、便利アイテムというか汎用アイテムが載っているのは本当に有り難いです。今後の予定ではこの夜通し眼鏡は必ず作って貰う予定です。素材も持ち込みでもできはするけれども、光素材だけは買わないと無理かなって思います。因みに材料は眼鏡1つ、闇属性素材2つ、光属性素材2つ、魔力茸10個とそんな感じでできるみたいです。光属性は無難に光属性の魔力茸を購入でいいと思うんですよ。それ以上を要求されると、まあ無くはないのでいけますが、金額が跳ね上がりそうで怖いですね。というか光属性が総じて高そうなのがまずい。ポーションで効果が高い奴は軒並み光属性素材と光属性の魔力茸を要求されるぞ畜生。ますます、レールの林での採取時間が必要になってきましたよ。
でも、先に行くのはラーラの沼地。こっちはこっちで難ありのような気がするんですよ。沼地よ、絶対に麦藁靴じゃあいかんでしょ。ってなわけで探しました便利アイテム。そしてあるんだよな、錬金アイテム。その名もピッタリ長靴。袋状の素材2つと魔力茸6つでいけるらしい。…袋状の素材ってなんだろうね。採取系統じゃ袋状の物なんて無い気がするんです。恐らく討伐系統。胃袋や腸当たりの素材が必要になりそう。多分だけど、錬金術ギルドに売ってそう。近くの霊地に必要そうな素材は仕入れているだろう。物自体は無くともね。飛沫除け布の件みたいに物自体はないが、素材は売っているパターンだと思う。でも、材料は売ってない。布も多分眼鏡も売ってない。それが錬金術ギルド。
そんな感じで錬金術大辞典を読んでいると、どうやら馬車が止まったようだ。ちらっと見てみるとゴーレム馬車なので錬金術師で確定だ。漸く来てくれた。これで行商人価格が判るから有り難い。大体買うときは魔力茸以外は10倍すればいいってジュディさんに教わったからね。…行商人、かなりのぼったくりである。まあ、錬金術ギルドにさらに卸すんだからそれくらいは承知の上だけどさ。採取をしている身からすると、やっぱり納得がいかないよね。でもまあ、そういう仕事だもんね、行商人ってのは。
そんな訳で、行商人さんの元へ。今回はおまけ抜きで正確に金額を教えて貰おう。とりあえず1瓶ずつ売れば金額を教えて貰いながら売ることができるだろう。後はお得情報なんかも一緒に貰えると嬉しいな。ではいざ行かん。
「すみませーん。買取とちょっとしたことですがよろしいですかー?」
「ああ、大丈夫だ。入ってきな。」
そんな訳でお邪魔します。流石にもう階段がないと登れないなんてことは無い。まあ、よじ登りはするんだけど。まだそんなに足が長くないんだよ。
「で、買取とちょっとしたことって何だ?」
「物の値段が解らないので逐一買取の値段を教えて欲しいんです。できますか?」
「ああ、そのくらいなら問題ないよ。何を売るんだい?」
そういわれたので、魔力茸以外の素材をとりあえず1瓶ずつ並べていく。ま、13瓶しかないからそんなに高値にはならないだろうが、金額はどうでもいいからね。雑学というか、お得情報が少し欲しいかなって思っているだけだし。
「じゃあ、買い取るか。まずは火炎茸だな、こいつは1本当たり小銀貨3枚だな。で、次が火炎草、こいつは1本当たり中銅貨1枚だ。これは鎮火草、これも1本当たり中銅貨1枚だ。こいつは消火草、1本当たり中銅貨2枚だ。これは温度草、1本当たり中銅貨1枚だ。次は猛火茸、こいつは青の斑点の大きさで値段が変わるが、行商人価格でいうと1本当たり小銀貨5枚だ。次に焦繁蔓草、これは1本小銀貨1枚だ。でこいつが忌火草、1本当たり小銀貨7枚ってところだな。これは不知火草、1本当たり大銀貨3枚だ。でこいつが烈火茸、こいつは1本当たり小金貨1枚だな。で次が華燭草、こいつは1本当たり大金貨3枚だ。でこいつが…油炭苔だな、1瓶当たり大金貨5枚だ。そんで最後のこいつが狐藁火苔、1瓶当たり小白金貨2枚って所だ。全部で―――小白金貨5枚と大金貨5枚、中金貨1枚、小金貨3枚、大銀貨1枚に中銀貨6枚、大銅貨5枚だ。これでいいかい?」
「ありがとうございます。後、なんかこれらの素材について無いですか? これはどうした方がいいとかあれば教えて欲しいんですが。」
「そうだな、この中で注意すんのは華燭草位だろう。こいつは偶に錬金術ギルドで買取依頼が出るはずだ。貴族が結婚用にアクセサリを作るんだが、それに華燭草が必須だからだ。何だったかな、何代か前の王妃様が結婚の際にそれが欲しいということで作られたのが発端だったかな。火属性と光属性がついているから毒に対して耐性ができるアクセサリができたはずだ。…作り方までは知らないが、専門で作る奴がいるはずだ。そんな訳で、上位の貴族が結婚を申し込むときに必要だからってことで、錬金術ギルドに依頼が出ることがある。そん時の買取価格は大魔金貨からだ。詳しい値段はその時の貴族次第だからな。だから華燭草は依頼が出されている錬金術ギルドに卸す様にした方がいい。俺もこれだけで今回の行商は大黒字と言ってもいい収穫だからな。…普通の素材としても光属性のせいで高いんだが、それ以上に華燭草は高く売れる。そんな訳で、華燭草は売る時を間違えない様にした方が絶対に良い。」
「わかりました。華燭草はギルドで依頼が出たときに売った方がいいって事ですね。ありがとうございます。」
「おう、稼げるときに稼いでおいて損は無いからな。貴族も結構な数いるし、華燭草も、まあ割と貴重だが直ぐに依頼が消費される。比較的残りにくい依頼だ。確実なのは冒険者ギルドじゃなくて錬金術ギルドに依頼が来ることだ。まあ殆どが同じ狙いの奴らが華燭草を抱えているってくらいだ。運よく華燭草の納品依頼があったらラッキーって所だろうな。…場所にも依るだろうが。」
「分かりました。あったらラッキー程度に考えておきます。」
誰もが一緒のことを考えているんだろうな。貴族から割の良い報酬を貰う事を考えているだろう。…まあ、無理に狙う物でもあるまいて。でも、必要以上は集めておこう。ギルドに出てたらラッキーだしな。光素材ってだけでも割と必要そうだし。集めるだけでも損はないし。
錬金術師の行商人の幌馬車を降りてテントに帰る。ここの素材はヨルクの林の素材よりも全体的に割高だったな。食べ物が無い霊地ってだけで避けられているのは、少し不憫だな。まだ解毒ポーションを飲まないといけない事態にもなっていないし、初級ポーションだって飲んでいない。口布だって、別に錬金アイテムにしなくとも、普通の布でも十分なんだろうし、勿体ないよなあ。冒険者ギルドの方針だもんな、仕方なし。それに勉強しろとは教えてくれるんだもんな、冒険者ギルドだって無駄に安い労働者だけが欲しい訳でもないし。勉強しない奴らが悪いだけなんだが、なんだかなあ。いきなり武器を持って万能感でも得てしまうんだろうか。…町出身の冒険者はどのくらい文字を読めるんだろうか。いい所の出身の冒険者は文字の読み書きなんかはできるだろうし、苦労はしていないんだろうな。殆どが農民出身な気がするんだよ。
一冒険者が抱えるには大きすぎる問題だ。そんな無茶を僕が抱える必要もないし、錬金術師になってから救えるものは救っていきたいけどな。…金は払ってもらうか、労働力になってもらうかはするだろうが。まあ、1億人に1人でも救えればいいかなって感じで気楽に構える予定だが。それもまだ、何年も先のこと。今はまだ何もできない子供なんだから。諦める事は諦めていかないとね。
それにしても、一応店を持ちたいなとは思っているが、どんな店を持つことになるだろうね。今の所考えているのは魔境でポーションを売っていこうかなと考えているが、そんなの誰もが一緒のことを思うものだろうが、辺境の魔境にいけばいくほど、錬金術師の枠が空いていないかなと思う訳ですよ。錬金術師は王都に集められる。ならば王都に近い所に店を構えたくなるのが心情というもの。
…待てよ? ヨルクの林の周りに4人の錬金術師がいて、それらの所在を知っていなければ速車便すらも出せないのじゃないか? まさか錬金術ギルドは錬金術師が何処にいるのか全部把握しているのではなかろうか。でないと速車便なんかをヨルクの林、延いてはその他の魔境や霊地に派遣などできないのではないだろうか。…在り得そうだな。誰が何処に店を構えるかを、どこで何をしているのかを把握していそうだ。どうやってという部分はあるが、一度錬金術ギルドで聞いてみるのも良いかもしれないな。流石に行商人の行先までは解らないだろうけど。
一応疑問も残るが、凡そ正しいと思うんだよな。何らかの方法で錬金術師の動向を掴んでいる。特に錬金学術院では掴んでいないと素材の高価買取なんて速車便を飛ばせないはずだ。もしかしたら報告制なのかもしれないが、報告にしたって何年に1回とか、十何年に1回とかの頻度だと思う。行商人を渡り継いで手紙を出すにしたって難しいだろうし、早馬でっていうのも無理だろう。何かのアイテムだと思うんだけど錬金術大辞典には載ってないんだよな。秘匿レシピなんだろうけど、何かありそうだな。
色々と考えることは別に必要ではないのだろうけれど、雨だもんな。思考の体操のようなものだよ。考える時間があるから考えてしまう。要するに暇なんだよね、雨の日は。連日雨というのも珍しいので明日は晴れるのだろうが、まだ午前様、暇つぶしに思考の海に潜りこむのであった。
面白かった面白くなかったどちらでも構いません。
評価の方を入れていただけると幸いです。
出来れば感想なんかで指摘もいただけると、
素人読み専の私も文章に反映できると思います。
…多分。