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ここは人類最前線6 ~光を受けし人の国~  作者: 小林晴幸
御前試合 ~本戦開始~
133/182

132.乱立する恐怖

勇者様+ハリセン、使い勝手よすぎですw


9/6 誤字訂正。

 さあ、二回戦が終わったと思ったら、すぐさま三回戦ですよ!

 何しろ御前試合の本試合日程は都合三日。

 一回戦は試合数が多いので、会場を二つに分けて一日がかりでした。

 二回戦は二つの会場で同時に行われ、三回戦…

 つまり、これから行われる試合ですね。

 三回戦は二試合しかないので、同じ会場でまとめて行われます。

 国王様も観覧する、立派なメイン会場に皆様大移動です。

 三回戦から試合会場がより豪華な場所に変わりました。

 貴族の方や、諸国の王侯が確実に沢山見に来るからでしょうか?

 洗練された雰囲気で、雰囲気もがらっと変わりましたね。

 凄いですよ? メイン会場。


 至るところに、勇者様の黄金像が乱立していて………


「なっ なんなんだこの悪趣味な像はーっ!!!」

「いえいえ、そんなことは? 悪趣味かそうでないかで言うなら、勇者様は多分被写体として人類最高峰に位置していると思いますよ?」

 勇者様が発狂したかのように頭を抱えて叫んでいます。

 その様子を見るに、どうやら勇者様ご自身にも与り知らぬことだったようで…

 そうか、本人無許可か…。

 肖像権を主張できない公人として、辛いものがありますね。

 無許可では出来ないでしょうから、どうせ王家の…国王あたりがGOサインを出して乱立しているんでしょうけれど。

 せめて本人に告知はしてあげましょうよ…。

 可哀想に、羞恥やら何やらで縮こまっています。

「あっははははははははは!! 見てください、勇者様! あの栗鼠と戯れる勇者様像、あっちは鳥の翼を背負った勇者様像ですよ! どっかで見た光景ですね!」

「おー…こりゃ見事だな。あっちの花を咥えた勇者像とか中々面白いんじゃね? 後はあっちの…牛を持ち上げる勇者、か。秀逸だな」

「凄いですね、アレ! ああっと、あっちはもしや、マッスルポーズ!?

その隣は教祖みたいなポーズ取ってるし、対比凄いね!」

「くっうぅ…リアンカ、まぁ殿、心の傷に塩を摩り込むのは勘弁してくれ」

 ああ、駄目ですよ、勇者様…。

 ここ魔境じゃないんですから、そんな往来で突っ伏したら逆に目立ちますから。

「勇者様、元気を出して…!」

「リアンカ…だけど、俺はこの光景に精神がずたずただ…」

「大丈夫、決して見苦しいものじゃないじゃないですか!」

「う、うぅ…悪趣味の極みだ。リアンカだって不気味だと思うだろう…?」

「まあ、同一人物の黄金像ばかりこんなにそろえられたら流石に個人への賛歌が凄まじすぎて鬱陶しいし、悪趣味な気がしますが」

「正直者に乾杯…」

「勇者様!? 心底投げやりになってますね!? 戻ってきてください、勇者様!」

 どうしよう…。

 君の瞳に乾杯☆とか言い出したら、どうしよう…!

 ………叩いたら治るかなぁ?


 ぐったりと力を失い、試合が始まる前から生きる屍化が始まりつつある勇者様。

 これは…三回戦は、勇者様以外に賭けた方が良いかもしれません。

 参加するとなったら国の威信、勇者としての尊厳から負ける訳にはいかないと、半ば以上本気で試合を制していた勇者様ですが…

 もしかしたらそろそろ退場の頃合なのでしょうか。

 この精神破壊(メンタルクラッシュが)がもしも敵方の計らいなら…大した策略だと褒めて差し上げても良いのですが。

 ですが、どうやらそんなことはなかったようです。

 だって犯人、向こうからやって来た。


「やや、殿下! どうされたのでござるか!?」

「へ、ヘルバルト…」


 試合会場の奥からやって来たのは、何故かガテン系の男衆を引き連れ、頭に捻り鉢巻を巻きつつも他の服装は常と変わらぬ…

「あれ、『おうさま』だー。なにやってんの?」

「娘御、このヘルバルト、王ではなく大臣でござる」

「ああ、そういえばヘルバルトさんってお名前でしたねー…」

 この人、『おうさま』の印象が強すぎて名前吹っ飛ぶんですよねー…

「それで殿下、いかがなさったので。一大事でござるか」

「一大事というか…ヘルバルト、アレは一体…?」


 勇者様のふるふると震える力ない指が差すのは、当然のごとく黄金勇者様。

 

 自身を模して作られ、乱立する黄金像に勇者様の精神は壊滅寸前です。

 そんな彼を前にして、『おうさま』っぽい大臣さんは仰いました。

「おお、あちらでござるか!」

 膝をポンッと打って、心なしか得意げに胸を張って。

「殿下もご覧になったと思いまするが、あれらは謁見の間に設置された『麗しき殿下像』に一歩劣るものの何れも劣らぬ名品ぞろいでござりましょう?」

「違う…俺が言いたいのはそういうことじゃ………待て、アレは謁見の間にある像と何か関係があるのか!?」

「何かと思えば…あれらは謁見の間に飾る殿下像のデザインを公募した際、惜しくも落選と相成った品々でござる。そのまま埋もれさせるに惜しいと、この度このようなお目見えと相成ったのでござるが」

「公募したのか!?」

「は、国中に」

「お、終わった……」

 わあ、勇者様が真っ白に…!

 待って、まってまって勇者様!

 まだ絶望して屍になるには早すぎますから!

 今にも溶けて消えてしまいそうな、儚い勇者様。

 あまりの哀れな姿に、私も思わず駆け寄ってしまいます。

 同じく哀れんだせっちゃんが、勇者様の頭を撫でるから。

 私は勇者様の肩をさすってみました。

「勇者様、気をしっかり持って…!」

「う、く…リアンカ、黄金像(てき)は強大だ。俺の精神を、的確にえぐってくるんだよ」

「数々の難敵を撃破してきた勇者様が、弱気になってどうするんですか…!

今までの実績に自信を持って! 強力な武器だってあるじゃないですか!」

「俺は、もう、駄目かもしれない…」

「勇者様…!」

 駄目だ…これはいよいよもって深刻に戦闘不能になるかもしれません。

「殿下、どうなさったのでござるか…!」

 勇者様の精神(メンタル)を確実に削って追い詰めた『おうさま』は、しかし自体を理解していないのか。

 勇者様を案じているのでしょうが…もうちょっと空気読もう!

「大臣さん、あの像なんですけど…」

「む? おお、『猛々しき殿下像』でござるか!? アレは特に素晴らしい一品で、謁見の間に飾る『麗しき殿下像』と最後まで争い…」

「……お気に入りなんですか?」

「うむ。少々特権を利用し、最も目立つ場所に配置するくらいには…」

 そう言って『おうさま』が指差すのは、さっき私達の腹筋をたいそう酷使して大笑いさせてくれた、マッスルポーズの勇者様黄金像。

「アレが一番最悪だよ!」

 ですがどうやら、勇者様はお気に召さない様子。

 どうやら勇者様と『おうさま』の趣味と感性の間には大きく超えられない壁があるようです。

「殿下、何か御気に障ることが…

やはり、金メッキの像ではなく純金製にするべきでござったろうか……」

「全部な! 気に入らないところなんて全部だからな!?

あと無駄に純金の像を量産するのは止めろ、国民の血税だ!」

「なんと!」

「……なんで、そんな思ってもみなかった、なんて顔をするんだ。

どう考えても、俺がそんなことされて喜ぶタイプじゃないってわかるだろうに」

「いえいえ、殿下のお気持ちも大事ですが、民衆や貴族の受けは凄まじいものがあり申して! こちらの会場に設置された金メッキ像も、式典後夜祭では希望者を募ってオークションを行う予定でござりまする」

「売るのか!? 売るのか! なんで俺に無許可でそんなことしてるんだ!!」

「熱い要望がござってなぁ…」

「……………なんか、さっきから様子がおかしいな」

「むむ、何か不明な点がござりましたか」

「なあ、ヘルバルト。正直に答えてほしいんだ。


  ………あの黄金像の制作・設置を立案指揮取ったの、誰だ? 」


「不肖、このヘルバルトでござるが」


「っっっって、おまえかああああああああああっ!!」


 わあ、一番星☆

 …望んだ答えを得た瞬間の、勇者様の動きには目を見張る見事さがありました。

 『おうさま』が答えた瞬間に、さっとその手は懐に。

 目にも留まらない早業で、いつの間にか握られていたハリセン。

 バチバチと、眩しく瞬く紫の雷。

 そしてハリセンは「ホームラン!」な勢いで『おうさま』大臣に会心の一撃を決め込んだのです。

 ………勇者様、この武器だと会心の一撃(クリティカル)率高いですね。


 もう式典も本祭期間に入っています。

 それにもうすぐ、第三回戦が始まる訳で。

 つまり何が言いたいかというと。

 勇者様がどんなに不快でも、既に乱立する黄金像を撤去する時間はない訳で。

 精神をがりごりと削られた勇者様は、嫌になってしまったのでしょう。

「もう、見たくない…」

 そう言って、目をふさいで蹲ってしまいました。

 仕方ありませんねぇ…

「ほら、勇者様。立ってください。目は瞑っていても良いですから」

「……………」

「控え室まで手を引いて上げますから、ほらちゃんと立って」

「………わかった」

「流石に控え室には、きっと黄金像もありませんよ」

「…………………」

「リアンカ、勇者ますます落ち込むからあんま触れてやんな(笑)」

「そうですね(笑)」

「くっ…リアンカもまぁ殿も、人の不幸を楽しそうに!」

「まあまあ、ほら、手を引いてあげますよ……


   ………リリフが 」


「が、頑張ります!」

「!?」

「くくくくくっ…勇者、気をつけろよ? 気を抜いて任せっきりにしてると、何処いくかわかんねぇからな? ちょっとした大冒険が始まるぞ」

 普段は手を引かれる側のリリフ(重度の方向音痴)です。

 それが揶揄を含んでいるとはいえ、手を引く側という責務を与えられ、以外にも張り切りを見せました。

 この張り切りようが、なんとも言えず危険です。

 いつもいつも手を引かれてばかりなので、手を引く側に憧れか何かあったのかもしれません。それか単純に、いつもと立場が逆転することに興奮しているか。

 どちらにしろ、危険です。

 目を離したら何処に行くのか、真剣にわかりませんからね。

 いつもリリフの手を引いているロロイが、はらはらとものすっっっっっっっっっごく不安そうな、心配そうな顔で勇者様を見ています。

 しかし止める気はないのでしょうか。

 哀れむような、諦めたような目で竜の少年は言いました。


「good luck!」


 ………結果、真剣に身の危険を感じた勇者様は、ちゃんと自力でしっかりご自身に用意された控え室まで歩いていきました。

 勿論、自力で。




次回から三回戦、準決勝が始まります。

サルファの相手は、モモさん。

モモさん頑張れ!


さて、では勇者様の相手は…?

まだ未定ですが、さてここで人類最前線恒例の選択問題!


a.イソギンチャク騒動のときの墓守のくま

b.天然バニーガール

c.鬼畜どSな男の娘

d.困窮の果てに刀を手放した竹光侍

e.あざといぶりっ子爆破魔

f.フラン・アルディーク

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