ブラコン姉を持った弟の朝は早い(?)
※1/31 改稿版に変更しました! 内容に大きく違いはありません!
義弟溺愛主義──つまりはブラコンな義姉を持つと、いつだってひと悶着起きる。
それは爽やかな朝だって例外じゃない。
「ん~……はるく~ん。……あと五分~」
人のベッドに潜り込んでおきながら、何言ってんだこの人は。
「はあ。寝てたいなら好きにしていいよ。俺は起きるからって、うわっ!?」
「やぁだぁ。はるくんといっしょがいいの~」
「ちょ、秋ねえ。手。手、強いからっ」
ホントに寝てるんだよね? 握られた手首が軋んでる気がするんだけど!?
「えへへ~。はるくんといっしょ~」
「いやだから俺は起きるって、むぐ……っ」
え、なにこれ。寝技か何か? なんでこんなにも華麗に抱え込まれてるの?
しかもすっげぇいい匂いするし、胸元で抱きしめられてるから、なんて言うかこう、朝の男の子的事情が加速する。
パジャマってなんでこんなに生地が薄いんだろうね!?
しかも秋ねえってば、三姉妹の中では一番たわわだし。果たして今俺がいるのは、天国か地獄か──。
「秋ねえ!! どうしていつもいつも春斗のベッドに入ってるの!?」
これも朝の風物詩。
目覚ましの音より多く聞いた夏希姉ちゃんの怒声。
というか、ここ最近は秋ねえもこの時間も狙ってるんじゃないかと思っている。
夏希姉ちゃんが朝ご飯を作り、社会人の冬華姉さんがパタパタと忙しく朝の準備をしているからか、いつもどこでも絡まれる俺がノーマークになるのだ。
なんて冷静に今の状況を分析出来るぐらいには、俺もこのシチュエーションに慣れてしまった。
「もー、いつもいつもいつも──っ!!」
そうそう。ここで夏希姉ちゃんが秋ねえを引っ張り出すのがいつもの流れ──。
「秋ねえだけズルい!! 私も一緒に寝る!!」
とか思ってたらまさかのダイブ!?
そこは意外性を出さなくてもいいとこだよ!?
「あはっ。春斗って良い匂い~。なんか幸せになってきちゃったぁ」
いやいや、人をヤバいクスリみたいに言わないでってか、もぞもぞ動かないでっ。
夏希姉ちゃんのやわらかい感触で、氷点下のバナナみたいになってるから!!
「ん~? なっちゃんもいっしょに寝るの~? 今日だけは許してあげる~」
秋ねえが許す側なのは解せない。
てか、もう全く起きる気が無いよね? それ以上強く抱き締められたら窒息するよ?
そうなったら死因は秋ねぇのおっぱいだよ? 何それすっげぇダサい死に方。
もう自分でも何を言ってるのかわからないけど、ひとつだけわかっていることがある。
きっと誰でも一度は聞いたことがあるはずだ。
今この時以上に、あの言葉が相応しいタイミングはない。
「夏希。秋奈。何をやっているの」
そう。──二度あることは三度あるッッッ!!!!
「と、冬華姉さん……」
秋ねえの胸の谷間から見えるのは、スーツ姿に無表情を貼り付けたクール美人。
黙りこくったその姿は、一見怒っているようにも見えるけど、俺は知っている。秋ねえと夏希姉ちゃんに絡まれている俺を見た時、冬華姉さんは絶対に怒らないと……。
「何故私を入れてくれなかったの?」
ほ~らな? 予想通りだよ!!
「と、冬華姉さん。ほら、もう時間もあんまりないし、二人を起こすの手伝って――」
「──失礼するわ」
な? 俺の懇願なんてどこ吹く風、当たり前のようにベッドに潜り込んでくるんだ。
しかも毛布代わりに俺を上から抱きしめるようにして。でも、しょうがないよね! だってシングルベッドに四人で寝ようとしてるんだから!!
あーあー、しっくりくるポジションを探してもぞもぞしないでよ。感触があれだし、男の子の秘密のテントが擦れてヤバいからッ!!
ていうか、皆さん。時間、わかってます? 時計、見てます?
そんな強く抱きつきながら寝息を立ててる場合じゃないですよ?
「今日、平日ッ!! みんな遅刻するって!!」
「……ごほ、ごほ。あれ、何だか風邪っぽいですね」
おい社会人。嘘とわかる仮病を使うんじゃない。しかも冬華姉さん、今日職員会議って言ってなかった?
「大学生の午前中はランチの後なんだよ~」
わからないようで微妙に意味がわかること言うなって……。俺は絶対秋ねえみたいな大学生にはならないからな!!
「私は春斗部屋登校するよ!!」
保健室登校みたいに言っても意味わかんないから。生徒会長がサボりはダメだろう。……まあ、この世の中には仮病を使って休もうとする教師がいるみたいだけど。
「おや、春斗君も風邪ですか? 体温高いですよ」
そりゃ、こんだけ密着されてればそうなるさ。
「大学生になった時のために、ランチ後の午前中を練習しよ~」
わけわかんないし、不毛だし。何からツッコめばいい?
「逆に考えようよ!! ここが学校で、私たちはもう登校してるんだって!!」
こんな素っ頓狂なことを言うのが生徒会長なんて、世も末だな……。
「いや、ホントにそろそろヤバいから!!」
これ以上姉さんたちに付き合ってられない。無理にでも起きないと、冗談でなく遅刻する。
「春斗君。よく言うじゃないですか。学校なんて行っても無駄だって」
教師であるあんたがそれを言うか!?
「どーせ大学生になったら午後が午前中になるんだし、高校生の内も変わらないって~」
いやだから、その理屈はおかしいからね大学生!!
「春斗。私、サボりって初めて!!」
なんでちょっとウキウキしてんの!? てか、サボりって認めたよね生徒会長!!
ヤバい。この姉妹と一緒にいたら本当にダメになる──ッ。
ていうか、毎朝毎朝、どうやったら普通の朝を迎えられるのか、誰か俺に教えてくれ!!
朝起きるだけで何だってこんなに疲れなきゃいけないんだよ……。
とかなんとかやりつつ、結局ギリギリで間に合うのもいつものパターンなんだよな。一度でいいから余裕のある朝を過ごしたい。いや、ホントに。
3話以降の改稿版は、本日の深夜か明日以降になりそうです…!
少々お待ちいただければ幸いです