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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける
824/898

800 クマさん、エレローラ邸に行く

 フィナと氷竜の卵パズルを完成させたわたしはクマの転移門を使って王都にやってくる。

 面倒臭いけど、エレローラさんを放置するわけにはいかない。

 放置すれば、さらに面倒ごとになるのは間違いない。

 お城に行くか、エレローラさんの家に行くか悩んだけど。エレローラさんの家に行くことにした。

 理由としては、シアが作った押し花に貴重な花が使われていたからだ。

 お城でエレローラさんに会っても、結局は押し花を確認しにエレローラさんの家に行くことになる。

 本当はフローラ様に会いに行くことも考えたけど、会いに行けばおまけの国王様までついてくる。

 そうなると、押し花の話が大きくなりそうな予感する。

 面倒ごとは回避することに限る。

 フローラ様に会いに行くのは押し花の件が終わってから行けばいい。

 そんな訳で、王都にあるクリフの家と言っていいのか、エレローラ邸にやってくる。


「ユナさん、お久しぶりです」


 王都のお屋敷で働くメイドのスリリナさんが出迎えてくれる。


「エレローラさんに呼ばれたんだけど」

「はい、お話は伺っています。ユナさんが来ましたら、おもてなしをするように言われています」


 スリリナさんが客室に案内してくれる。

 そして、言葉通りに、お菓子やお茶を用意して、おもてなしをしてくれる。

 わたしはクッキーを食べ、紅茶を飲む。

 美味しい。

 のんびりとお菓子を食べ、お茶を飲んでいると、ドアが開き、金色の髪を揺らした美少女が入ってくる。


「ユナさん!」


 部屋に入ってきたのは学生服を着たシアだ。

 相変わらずの美少女だ。

 明るくて、努力家で、貴族の娘で、美少女。学校ではモテるんだろうな。


「シア、久しぶり」


 シアはわたしが座っている前の椅子に座る。

 そして、スリリナさんが部屋に入ってくると、シアの前にお茶とお菓子を置くと、頭を下げて出て行く。

 メイドさんって凄いな。


「押し花の件で来たんですか?」

「うん、貴重な花が押し花に使われているって聞いたけど」

「少し待ってください」


 シアはそう言うと、クッキーを口の中に入れると、部屋からでていく。

 でも、数分もしないうちに戻ってくる。

 戻ってきたシアは額縁を持っていた。

 そして、わたしの前に額縁を置く。

 押し花が入った額縁だ。


「この花みたいです」


 シアが一つの花を指差す。

 青っぽい花だ。

 花びらは6枚付いていて、花火のように広がっている。


「この花ね」


 見ても分からない。

 普通の青い花にしか見えない。

 クマの観察眼のスキルを使えば分かるかな。

 クマさんパペットを青い花の位置に当て、スキルを使ってみる。


 押し花・・・花を潰して乾燥させて作ったもの


 ……怒りが湧いてくる。

 あっているけど、そこは違うでしょう。

 犬の種類を知りたくて検索をしたら「犬」と言われた気分だ。

 人によっては押し花のことを知らない人もいるかもしれないから、答えの一つとしてはあっているけど。

 今のわたしにとっては、違うと大きな声で叫びたい。


「そういえば、どうして、この花が貴重な花だって、分かったの?」


 クマの観察眼で分からないなら、聞けばいい。

 でも、押し花を作ってから時間は経っている。

 シアにしてもエレローラさんにしても、花に詳しければ、もっと早くに気づいたはずだ。


「それは……」


 シアは経緯を話してくれる。

 なんでも、エレローラさんの仕事関係でエレローラさんに会いに家まで来た人がいたらしい。

 そのときにエレローラさんの執務室に飾ってあった押し花を見たのことだ。


「エレローラさんの執務室に押し花、飾っているの?」

「お母様が持っていったんです。『これ、いいわね。娘の手作りだし、しばらく借りるわね』とか言って」


 ……エレローラさん。

 たまにテレビで自分の子供が描いた絵とか壁に飾ってあるのを見るけど、それと同じことかな。

 親なら子供が描いたものだから、大切に飾っているんだと思うけど。子供の立場としたら、恥ずかしいと思う。


「まあ、わたしも押し花に執着はなかったし、捨てられるわけでもなかったので、貸したんです」


 わたしも押し花に執着はない。

 貸してほしいと言われたら、なにも考えずに貸すと思う。


「それで、その人は誰なの? 花屋さん?」


 貴族なら花を飾ったり、贈ったりしていそうだ。

 なにかの理由で花屋を家に呼んだとか。


「花屋ではなく、魔法省の人です」

「魔法省?」


 初めて聞く。


「一般の人はあまり知らないかと思いますが、魔法省は魔法、魔力、魔道具などを研究するところです」

「そんなのがあるんだ」

「はい、魔法や魔道具には危険なことがありますので国が運営しています」


 確かに、使い方によっては魔法も魔道具も危険だ。

 魔法はともかく、魔道具は普通の人でも使えることが多い。

 使おうと魔力を流したら大爆発なんてなったら大変だ。


「その魔法省の人が家に来て、お母様の執務室に飾ってある押し花を見たんです」


 それで、押し花の中に貴重な花が使われていて、エレローラさんから押し花を作ったシアに話がきて、シアからクリモニアでわたしたちと一緒に作った話を聞き、クリフ経由でわたしが呼ばれたってことか。

 流れは理解した。


「シアに確認だけど。花をどこで採ってきたか、話していないの?」

「タールグイのことですよね。お母様に、どこで採ってきた花か知っているか尋ねられましたが、ユナさんが採ってきた花と言って誤魔化しました。タールグイのことは話さないって約束をしましたから」


 シアは笑顔で答えてくれる。

 シアにはタールグイのことは誰にも言わないでほしいと頼んだ。

 そのときの約束を守ってくれている。

 シアの笑顔が眩しい。


「それで、どうするのですか? お母様、採ってきてほしいと言うかもしれませんよ」

「タールグイのことは話さないとしても、動く島のことはミリーラの漁師の人たちは知っているから、動く島のことは話してもいいんじゃないかなと思っているよ」


 ノアにも言ったけど、動く島のことはミリーラの漁師なら知っていることだ。


「確かにそうですね」

「でも、黙っていてくれてありがとうね」

「ユナさんとの約束ですから」


 シアの気持ちが嬉しく思う。

 フィナとノアもそうだけど、ちゃんと黙っててくれてた気持ちが嬉しい。

 詳しい話はエレローラさんが帰って来てからとなった。


「それでユナさん、時間ありますか?」


 クッキーを口の中に入れるとシアが尋ねてくる。


「まあ、エレローラさんを待つだけだからね」

「よければ、手合わせをお願いしていいですか? あれから少しは強くなったと思うんです」


 他人の家でお菓子を食べて、お茶を飲んでのんびりするのもあれだ。

 お腹を触る。

 少しは運動しないと。


「少しなら、いいよ」

「ありがとうございます」


 わたしは口の中にクッキーを入れ、お茶を飲み干す。

 せっかくスリリナさんが用意してくれたんだからね。食べないともったいない。

 シアもわたしを見て、お茶を飲み干す。


 わたしとシアは庭に移動する。

 シアから木剣を渡され、お互いに距離を取る。


「いつでも、いいよ」


 わたしは剣を構えると、そう言う。

 シアは深呼吸すると剣を構え、ゆっくりと間合いをつめてくる。

 剣が上にあがる。

 それと同時に踏み込んでくる。

 綺麗な剣筋。

 わたしはシアの剣を受け流す。

 前回のシアならバランスを崩して、わたしの動きに対応はできなかった。

 でも、シアはバランスを崩すこともなく、剣を引き戻す。

 足腰がしっかり鍛えられている証拠だ。

 わたしが一歩、後ろに下がると、それに追随するように踏み込んでくる。

 迷いがない。

 シアは、そのまま剣を振り下ろす。

 わたしは体をずらし、避ける。

 シアは避けられるのを想定していたのか、次々と攻撃を仕掛けてくる。

 ちゃんと考えて攻撃をしている。

 わたしはシアの剣を軽く弾く。

 力を込めて弾けば、剣は飛んでいってしまう。

 それでは練習にならない。

 シアは弾かれた剣を強く握りしめ、手から離れないように耐える。

 剣を離さなかったのは偉い。

 今度はわたしから仕掛ける。

 弾いたときに振り上げた剣を振り下ろす。

 シアはすぐに剣を引き戻し、受け止める。


「うぅ」


 一撃目を受け止められても、二撃目は?

 わたしは左右から攻撃するように剣を振る。

 右、左、右、左と単調な攻撃だ。

 シアはギリギリで防ぐ。

 考えずに、剣を動かしている感じだ。

 だから、攻撃のパターンをずらすと。


「あっ」


 右を二回にした瞬間、防ぐことができず、シアの体に剣が当たる。

 正確には寸止めなので、当ててはいない。


「はぁ、いい感じだと思ったのに」


 シアは構えをとき、項垂れる。


「ううん、いい感じだったよ。そんなに悲観することはないと思うよ」

「本当ですか?」

「ちゃんと、足腰が鍛えられていて、受け流されても、バランスを崩すこともなかったし。攻撃も工夫がされていたよ」

「でも、全部防がれてしまいました」

「まあ、そこは経験の差だね」

「ユナさんは、どれだけ、練習をしたんですか?」

「う〜ん、内緒」


 ゲームの中だけど、1日100人以上と対人戦をしたことがある。

 優勝するために、何度も対人戦の練習試合をしたのは懐かしい思い出だ。

 剣、長剣、大剣、ナイフ、槍、棍棒、斧など。様々な接近戦の武器を持つ人と戦った。

 その経験があるから、今のわたしがある。

 ただ、優勝はできなかった。

 武器の相性や戦い方の相性もある。

 強さだけでなく、運も強くないと、勝ち上がれない。

 こればかりは、対戦相手はランダムなので文句は言えない。


「もう、終わり? シアの体力が続くかぎり、付き合うよ」

「お願いします」


 シアは剣を構える。

 それから、シアの体力がつきるまで、練習に付き合った。

 そして、練習が終わる頃にスリリナさんがやってきて、冷たい飲み物を出してくれて、さらにはお風呂の用意もしてくれていた。

 流石、メイドさん。

 わたしとシアは、ありがたくお風呂に入らせてもらうことにした。


エレローラ邸の到着、久しぶりにシアと手合わせです。


※祝800話(おまけ話は除く)です。

もう、800話なんですね。1000話も見えてきました。でも、その前に900話を目指して、頑張りたいですね。

ブックマーク、評価、感想、レビューありがとうございます。

励みになっています。


記念メモ

ブックマーク登録 104,591件

総合評価 384,375pt

評価ポイント 175,193pt

感想 22,137件

レビュー 38件


※書籍20.5巻、文庫版10巻の発売が5月2日します。(予約受付中)

サイン本の販売店も決まりました。活動報告にて書きましたので、購入を考えている方がいましたら、確認をしていただければと思います。


【書籍】

書籍20.5巻 2024年5月2日発売予定。(次巻、21巻予定、作業中)

コミカライズ11巻 2023年12月1日に発売しました。

コミカライズ外伝 2巻 2024年3月5日発売しました。

文庫版10巻 2024年5月2日発売予定。(表紙のユナとサーニャのBIGアクリルスタンドプレゼントキャンペーン応募締め切り2024年8月20日、抽選で20名様にプレゼント)


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔法省……クマ装備を見て、魔導具研究魂が騒いでうっとうしことにならないと良いが……
[気になる点] 魔法省かぁ。護廷十三隊みたいに担当部署なども考えないとハリボテみたいになっちゃいますので注意が必要ですね。 花(植物)関係ならば【魔法薬学庁】だとか、魔道具関係ならば【魔法工学庁】だ…
[良い点] 魔法省か、ついにその手の連中が出てきたか…この国にもあったんですねw [気になる点] ティルミナさんの治療の話でもちょっとだけ出てきた回復魔法を使える神殿だか教会だかの宗教勢力も居ますしそ…
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