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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける
823/903

799 クマさん、パズルをする

「ユナお姉ちゃん、本当に行かないでいいの?」


 ウルフの解体を終えたフィナが尋ねてくる。

 昨日、押し花の話を聞いたわたしは王都に行くこともせずに家にいる。

 シアが使った花と同じ花を使ったか分からないけど、フィナの家にも一緒に作ったときの押し花がある。

 だから、フィナにはクリフに聞かされたことを話してあげた。


「いいんだよ」


 何度も言うけど、帰って来たばかりだよ。

 氷竜と戦ったばかりだよ。

 少しぐらい休んでも神様も怒らないよ。

 だから、休んでも問題はないはずだ。


「いいのかな?」

「まあ、急ぎじゃないし、たいしたことはないんじゃないかな。それに休息は必要だよ」


 わたしは横にいる子熊化したくまゆるを抱きかかえる。

 フィナもやってきて、くまきゅうを抱きかかえる。


「でも、あの中に貴重な花があったんだね」


 タールグイに咲く花。

 たくさん咲いていて、フィナ、シュリ、シアたちで摘んだ。

 わたしには、どの花が貴重な花なのか分からない。


「わたしが作った押し花の中にもあるのかな」


 こればかりは王都に行って、どの花なのか確認するしかない。

 一応は気になるので、行くつもりはある。

 でも、今はのんびりしたい。

 フィナもくまきゅうと遊び始める。

 そんなフィナを見て、あることを思い出す。


「フィナってジグソーパズルって得意?」

「じぐそーぱずる?」

「うん、ジグソーパズル」

「じぐそーぱずるって、なんですか?」

「…………」


 そういえば、ジグソーパズルって見たことがない。

 この世界にバラバラになった絵などを合わせる遊びはないのかもしれない。

 しかも、今回、わたしが言っているのは立体パズルのほうだ。


「ジグソーパズルは、バラバラになったものを繋げることかな」

「バラバラになったものを繋げる……。修理? 修復ってこと?」


 フィナが言いたいことは分かる。

 でも微妙に違う。


「物の修理は、あまりやったことがないからできないかも」


 少しならあるの?

 フィナなら頑張って直しそうだ。


「でも、服の修復だったらできるよ。昔、お金がなかったとき、縫っていたから」


 この子は母親の薬代を稼ぐために解体の仕事をして、妹の面倒も見ていた。

 お金は大切で、節約をしていたはずだ。

 でも、今はそんな心配をしないでいい。


「服じゃなくて、卵の修復だよ」


 わたしは明るい声で言う。

 ソファーから立ち上がり、床にシーツを広げ、座布団? クッションを置き、卵が動かないようにその上に氷竜の割れた卵を出す。


「……こないだ見た氷竜の卵」


 フィナは腰を下ろして、卵を見る。

 卵の大きさは50cm〜60cmぐらいかな?


「これの修復をフィナに手伝ってもらおうと思ってね」


 卵の殻は2/3ほど原型が残っており、1/3ほどの穴が空いている。

 この空いている穴から氷竜の赤ちゃんが出てきた。

 わたしは割れてバラバラになった卵の破片を一緒に出す。


「できるかな」


 フィナは卵の破片を手にする。

 わたしも立体パズルどころか、ジグソーパズルもしたことがない。

 親がすることもなかったし、わたしも興味がなかった。

 だから、フィナに手伝ってもらおうと思った。


「でも、どうやってくっつけるの?」


 フィナが卵の欠片を卵にくっつけようとする。

 接着剤でいいのかな?


「どこかに卵をくっつける接着剤って、売っている?」

「う〜ん、紙をくっつけるノリなら売っているけど」


 くっつくかな?

 試しに購入してみようかと考えていると、子熊化したくまゆるとくまきゅうが卵の前にやってくる。

 そして、破片をキョロキョロと見て、お互いに少し大きめの破片を器用に掴む。

 もしかして、豆とかも掴める?

 なにをするのかと見ているとくまゆるとくまきゅうはお互いの持っている卵の破片を近づける。

 魔力?

 くまゆるとくまきゅうが魔力を流したように見えた。

 二つの破片は一つの大きな破片となる。


「凄いです。くっつきました」


 フィナはくまゆるとくまきゅうが起こした現象に驚いている。

 わたしはくまゆるとくまきゅうが持っていた卵の破片を手にする。

 ちゃんとくっついている。

 繋ぎ目も見えない。

 わたしは卵の破片を見る。

 この破片と、この破片がくっつくかな。

 二つの破片同士をパズルのように合わせ、魔力を軽く流す。

 二つの破片がくっつく。

 間違いないみたいだ。


「どうやら、魔力を流すとくっつくみたいだね」

「魔力?」


 フィナも破片と破片を探してわたしがやったように魔力を流すと二つの破片はくっつく。


「できました」


 フィナは喜ぶ。


「くまゆる、くまきゅう、教えてくれたの? ありがとうね」


 くまゆるとくまきゅうの頭を撫でてあげる。


「でも、不思議です。魔力でくっつくなんて」

「氷竜の卵だからかな?」


 コケッコウの卵とかは、無理だと思う。


「でも、これで接着剤は必要はないみたいだね」


 わたしとフィナは手分けをして、氷竜の卵の修復に取りかかる。

 これは、ここかな?


「この小さいのは……」


 フィナは真剣な目で立体パズル、卵パズルを始める。

 わたしも一緒に卵パズルを始める。

 でも、不思議だ。

 正しい場所で破片同士の箇所に魔力を流すとくっつく。

 合わない破片同士の箇所に魔力を流してもくっつかない。

 間違ってくっつくことがないから、助かるけど。不思議だ。

 フィナは真剣な表情で、黙々と卵パズルをしている。


「この小さい破片はここかな」


 破片が綺麗にくっつくと嬉しそうにする。


「もしかして、楽しい?」

「……えっと、はい。どんどん元の形になっていくのが楽しいです」


 確かに、それがジグソーパズルの楽しさだ。

 ピースを嵌め、徐々に絵が完成に近づいてくると嬉しいものだ。

 もっとも、わたしはやったことがないので、言い切れないけど。

 実際にやってみると、フィナの言うとおりに楽しい。

 ただ、合うところが見つからないと、イライラするけど。


「ユナお姉ちゃん、それはこっちかも」


 フィナの言う箇所につけるとピッタリに合う。

 魔力を流し、くっつける。

 これは意外と難しい。

 普通のジグソーパズルと違って色がない。

 ジグソーパズルには絵がありこの色はこのあたりかなと、予想がつく。でも、わたしたちがやっているのは卵の殻だ。つまり、同じ色。

 もし、白い紙をパズルのように細かく分割されたら、くっつけるのは大変だ。

 しかも、それが大きければ、大きいほど。

 ただ今回は2/3は完成しているから、楽なほうだ。もし、これが全部が割れて、粉々になっていたら、鬼畜パズルになっていたと思う。

 そして、一日かけて完成した。


「ユナお姉ちゃん、この卵どうするの?」


 青白くて綺麗だから、飾るのもいい。

 でも、そのまえに。


「カガリさんに見せに行こうと思うよ」


 一緒に手に入れた卵だ。カガリさんに見せたい。

 そんなわけで、クマの転移門を使って、フィナと一緒に和の国へ移動する。

 子熊化したくまゆるとくまきゅうもついてくる。


「なんじゃ、お主。まさか、面倒ごとを持ってきたのか?」


 人を見るなり、なんてことを言うかな。

 しかも、お酒を飲んでいるし。

 氷の街にいたときは飲めなかったから、飲んでいるのかもしれない。


「違うよ。ただ、これを見せに来ただけだよ」


 わたしは完成した氷竜の卵をクマボックスから出す。


「これは、あのときの氷竜の卵か。でも、割れておらんが……」


 カガリさんは氷竜の卵に近づき、触れる。 


「フィナと一緒に破片をくっつけて、修復したんだよ」

「嬢ちゃんも、面倒ごとに付き合わされて、大変じゃのう。嫌なら、嫌だと言ったほうがいいぞ」


 憐むような表情でフィナを見る。

 でも、フィナは笑顔で答える。


「ううん、破片と破片をくっつけるの楽しかったよ」


 嘘も偽りもない言葉。

 フィナは楽しそうに卵の破片をくっつけていた。


「そうか、お主が楽しんだならいいが」

「そういえば、カガリさんが出かけていたことは、誰も気付いていないの?」

「そのことか」


 カガリさんはちゃぶ台の上にある紙に手を伸ばす。


「スズランの書き置きじゃ」


 紙をわたしに渡す。

 受け取ったわたしはスズランさんの書き置きを見る。

 その書き置きには、どこに行ったのか、出かける場合は書き置きをするようにとか、このまま帰ってこないってことはないですよね。最後のほうはカガリさんを心配する言葉が書かれていた。


「心配させちゃったみたいだね」

「1週間ほどいなかっただけで騒ぎ過ぎじゃ。妾は子供じゃない」


 見た目は幼女でも、れっきとした大人だ。


「カガリさんが、和の国を出て行っちゃったと思っているかもね」


 戻って来ますよね、とか。

 いつ、帰ってくるのですか、とか。

 書かれていた。

 スズランさんは三日ほど、この家にいたみたいだ。

 最後は国王様に報告して、戻ってきますと、書かれていた。


「国王様にも伝わっているね」

「面倒くさいのう。ちょっと出かけただけで」

「それだけ、カガリさんのことを大切に思っているってことだよ」


 スズランさんも、国王も、サクラも、カガリさんのことを大切に思っている。

 だから、いなくなれば心配するのも仕方ない。


「次から、お主と出かけるときは、書き置きでもするかのう」


 その言い方では、わたしと出かければ、何らかのトラブルに巻き込まれると言ってるように聞こえるんだけど。

 スライムのときや凍った街のことを考えると、違うと言い切れないのが辛い。

 それでもカガリさんは、トラブルに巻き込まれると分かっていても、付き合ってくれると言ってくれている。

 それが、少し嬉しい気持ちになる。

 それから、氷竜の卵を見ながら、フィナがカガリさんにいろいろと尋ねていた。



フィナと一緒に立体パズルをしました。

ジグソーパズル、最近、やっていない。

くまクマ熊ベアーのジグソーパズルがあれば……


※申し訳ありません。サイン本などを書かないといけないため、次回の投稿は休ませていただきます。


書籍20.5巻、文庫版10巻の発売が5月2日に決まりました。

予約も始まっていますので、よろしくお願いします。


【書籍】

書籍20.5巻 2024年5月2日発売予定。(次巻、21巻予定、作業中)

コミカライズ11巻 2023年12月1日に発売しました。

コミカライズ外伝 2巻 2024年3月5日発売しました。

文庫版10巻 2024年5月2日発売予定。(表紙のユナとサーニャのBIGアクリルスタンドプレゼントキャンペーン応募締め切り2024年8月20日、抽選で20名様にプレゼント)


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] スズランさんが病みそうw めちゃくちゃ大切にされてるの微笑ましい。 [気になる点] アニメ見直してて思い出したんですけど、フォシュローゼ家のナイフの存在が… クマモナイトとかミスリルナイフ…
[良い点] 現地妻みたいなのがあちこちにいますが一番仲良しなのがカガリさんですね 戦闘もこなせるし幼女だし [気になる点] 卵の中って白身じゃないけど何かで濡れてたりしないのかな それに何か効能があっ…
[気になる点] 早く王都に行って面倒事に巻き込まれて(笑)
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