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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける
821/900

797 クマさん、フィナに会いに行く

 わたしとカガリさんは和の国に帰ってきた。


「いろいろとあったのう」

「ちょっとした散歩のつもりだったんだけど」


 はじめはタールグイから見えた陸地が気になって、少しだけ寄るつもりだった。

 それが、こんなことになるとは思いもしなかった。


「お主は面倒ごとの神に愛されているんじゃろう」


 やめて、そんな神様、お断りだよ。

 でも、わたしを連れてきた神様のことを考えると、ありえない話じゃないだけに困る。

 この世界に来て、いろいろなことに巻き込まれている。

 のんびり、まったりがわたしのモットーなのに


「それじゃ、わたしも帰るね」

「なにかあれば、連絡をせよ。暇じゃったら、付き合ってやるから」


 カガリさんは大蛇を倒してから暇なのかな。

 ようは暇つぶしに付き合うってことかもしれない。

 断るようなことではないので、その言葉はありがたく受け取っておく。


「そのときはお願いね」


 わたしはクマの転移門の扉を一度閉じると、クリモニアに向けてクマの転移門の扉を開く。わたしとくまゆるとくまきゅうはクリモニアに帰ってくる。

 わたしは、そのまま自室に戻ると、ベッドに倒れる。

 やっぱり、クリモニアの家が落ち着くね。


 翌朝、フィナに会いに孤児院に向かう。

 朝早くなら、ティルミナさんの仕事を手伝って、孤児院にいることが多い。

 孤児院に到着すると、鳥小屋の方へ向かう。

 子供たちの元気な声が聞こえてくる。鳥を移動させるとか、掃除をするとか。

 鳥小屋の中に入ると、子供たちの声が聞こえてきたとおりに鳥を移動させたり、掃除をしている。

 わたしが小屋に入ってきたことに、一人の子供が気づく。


「ユナお姉ちゃん!」


 一人の声で、全員が振り向く。


「みんな、ちゃんと仕事をして、偉いね」


 歩み寄ってきた女の子の頭を撫でてあげる。

 すると、次々とわたしのところに集まってくる。

 どうやら、みんなも頭を撫でて欲しいみたいだ。

 わたしは全員の頭を撫でてあげる。


「ほら、ユナさんがやってきて嬉しいのは分かるけど、鳥さんの世話もしっかりしないとダメだよ」


 リズさんがやってきて、子供たちに注意する。

 わたしは子供たちに向かって微笑む。


「仕事、頑張ってね」

「うん」


 子供たちは仕事に戻っていく。


「相変わらず、ユナさんが来ると、集まってくるんだから」

「最近、顔を出していなかったからね」


 いろいろとあったから仕方ない。


「フィナはいますか?」

「ティルミナさんと一緒に、卵を数えていると思うわよ」


 わたしはリズさんと別れ、ティルミナさんがいる小屋に向かう。

 この小屋では卵の管理を行っている。

 小屋の中に入ると、ティルミナさんとフィナ、それからシュリが卵を数えていた。


「フィナ、商業ギルド用は大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」

「お店のほうの卵も大丈夫ね。シュリ、ひび割れた卵と、あまりはどのくらい?」

「えっと34個」


 シュリはすぐに答える。

 計算もできるようになっている。

 ひび割れた卵は店で使ったり、孤児院で食べるようになっている。

 プリンなどを作る程度なら、少しくらいのひび割れであれば、問題はない。


「それじゃ、院長先生のところに運んでおいて」

「うん、分かった」


 シュリが卵を持って、ドアのほうに目を向ける。

 わたしはシュリと目が合う。


「ユナ姉ちゃん!」


 その声にフィナとティルミナさんもわたしのほうを見る。


「あら、ユナちゃん、いたの? 声をかけてくれたらよかったのに」

「仕事中だったから」

「ユナお姉ちゃん、お帰り」

「ただいま」

「いつ帰って来たの?」

「昨日だよ」


 フィナに帰ってきた報告をしていると、卵を引き取りに来た商業ギルドの人がやってくる。

 ティルミナさんは卵の数を確認してもらうとサインをもらう。

 個数に問題がないことを確認すると、ギルド職員は卵を運び出し、小屋の外にある馬車に積み込む。

 フィナとシュリも手伝い、商業ギルドに引き渡す卵以外にも、お店に運ぶ卵を積む。

 商業ギルドのほうで、お店で使う卵も一緒に運んでもらっている。

 ミレーヌさんからのありがたい申し出があったので、その申し出を受けた。


「通り道だから、気にしないで」


 とのことだ。

 わたしも卵を馬車に運ぶのを手伝い、全ての卵が馬車に積み終わる。


「よろしくお願いします」

「お願いします」


 フィナとシュリがギルド職員の見送りをする。

 馬車が動き出す。

 これで、ティルミナさんたちの仕事は終わりだ。

 ティルミナさんが院長先生に顔を出すと言うので、一緒についていく。

 院長先生に会いに行くと、院長先生とニーフさんが幼い子どもたちに囲まれている。

 ニーフさんが来てくれてから、子供の世話が楽になったと院長先生が言っていた。

 リズさんが年長組。ニーフさんは幼年組をお世話しているって感じだ。

 院長先生に簡単な挨拶をする。

 ティルミナさんは仕事を終わったことを院長先生に伝え、シュリと一緒に買い物に行くと言うので別れ、わたしはフィナと一緒に歩き出す。


「それで、どこに行っていたの? 寒いところって言っていたけど」


 フィナには一度、リーゼさんの防寒具を買うときに、少しだけ話してある。

 わたしは補足するように、タールグイにカガリさんと一緒に行ったこと。

 陸が見えて、行ってみることにしたこと。

 氷竜によって、街と人が凍っていたこと。

 残っていた6人のこと。

 その6人の中に女の子がいて、防寒具をプレゼントしたこと。

 そして、カガリさんと一緒に氷竜と戦ったこと。

 最後には氷竜が立ち去ったこと。

 話をするたびに、フィナの表情はころころと変わる。


「それで、どうなったの?」

「氷竜が立ち去ったあとは、街の氷も溶けて、凍っていた人たちは動き出したんだよ」

「生きていたの? よかった」


 フィナは自分のことのように安堵する。


「でも、不思議です。3年間凍っていた人が動き出すなんて」


 それには同意だ。

 氷竜の氷は普通の氷と違うのかもしれない。

 まあ、人が死ぬよりは生きているほうがいい。

 リーゼさんたちも3年間苦しんできた。そのぶん、幸せになってほしい。


「わたしもお店の冷凍庫で凍っても、大丈夫なのかな?」

「危ないから、やめてね」


 冗談半分でもやってはいけないことだ。

 あくまで氷竜の魔力のこもった冷気で凍ったからであって、普通に凍ったら死ぬと思う。

 だから、本気で止める。

 フィナも分かったようで「しないよ」と言ってくれた。


「それじゃ、氷竜は倒したわけじゃないんだね」

「もしかして、解体したかった? それなら、頑張って倒してくるけど」

「そんなこと思っていないよ」


 仕事に熱心なフィナ。

 氷竜を解体してみたかったのかと思ったけど、違ったみたいだ。


「そもそも氷竜が普段どこにいるのかも分からないし、倒しに行くすらも無理だけどね」

「うぅ、ユナお姉ちゃん、意地悪です」


 フィナは頬を膨らませる。


「ごめん。でも、氷竜の鱗とかあるけど、よかったら見てみる?」

「えっと、見てみたいです……」


 恥ずかしそうに答える。

 解体の仕事をしているフィナ。氷竜の素材が気になるのかもしれない。

 氷竜の鱗を見せるため、わたしとフィナはクマハウスに向かう。

 流石に、歩きながら見せるわけにはいかないからね。

 クマハウスに帰ってきたわたしは、さっそく氷竜の鱗を出してあげる。


「……青白くて、綺麗です」


 フィナは両手で鱗を持つ。


「あげようか?」

「い、いらないです」

「たくさんあるから、一枚ぐらいなら大丈夫だよ」


 あの時たくさん拾った。

 リーゼさんたちにも分けたけど、まだ残っているから、フィナにあげても問題はない。


「そうじゃなくて、氷竜の鱗を持ち帰ったら、お母さんとお父さんが驚いちゃいます」

「見られても、氷竜の鱗だって、バレないよ」


 そもそも見たことがないだろうし。


「こんな綺麗な鱗を見たら、どうしたのかを聞かれるよ」

「そこは適当に」

「それに、氷竜の鱗が、どれほどの価値があるか分かっているの?」

「やっぱり、価値がある?」

「氷竜の鱗だよ。欲しくても手に入らないよ。そもそも氷竜と戦おうとする人なんて、ユナお姉ちゃんぐらいだよ」


 ひどい。


「もし冒険者ギルドにでも、話が広まったりしたら大騒ぎになるよ」


 やっぱり、そうなるよね。

 黙っておこう。

 お金に困ったら、売ろう。

 そんなときが来るか分からないけど。

 王都でやった解体のイベントのときに売ったお金もあるし、クリモニアとミリーラを繋ぐトンネルの通行料のお金も入ってきているし、お金はどんどん貯まる一方だ。

 もしかして、お城とか買えるかな。

 買えるとしても、買わないけど。

 そもそも掃除が面倒そうだし、管理も面倒そう。

 使用人? 他人と一緒の生活なんて嫌だし。

 そもそも、わたしにお城暮らしなんて合わない


「それじゃ、氷竜の角なんて見せたら、大変なことになるね」

「角もあるの?」

「卵の殻もあるよ」


 その辺りの経緯も話してあげる。

 流石に角は大きいので見せてあげられないけど、卵の殻は部屋の中でも出せるので、見せてあげる。


「大きい」


 フィナは割れた氷竜の卵の殻を見る。


「この中に、氷竜の赤ちゃんが。まさか、氷竜の赤ちゃんを倒したりは……」

「わたしのことをなんだと思っているの? さっきも話したけど、氷竜の赤ちゃんが産まれたら、立ち去るって約束をしたから、なにもしてないよ」

「ユナお姉ちゃんなら、戦いそうだから」


 いや、わたしにだって、一応、そのぐらいの分別はあるよ。


「これは氷竜が立ち去ったあとに、拾ったものだよ」


 それから、フィナにいろいろと氷竜の話を聞かれた。

 やっぱり、解体がしたかったのかな?



クリモニアに帰って来ました。

いつもどおりのフィナに帰って来た報告です。


書籍20.5巻、文庫版10巻の発売が5月2日に決まりました。

20.5巻については発行部数が通常の巻と比べて、少なく(かなり)なっていますので、購入を考えている読者様がいましたら予約をしたほうがいいかもしれません。


※追記4/17、22:30

活動報告にて、20.5巻の告知をさせていただきましたので、よろしくお願いします。


【発売予定表】

【フィギュア】

フィナ、ねんどろいど 2024年1月20日発売中

KDcolle くまクマ熊ベアーぱーんち! ユナ 1/7スケール 2024年3月31日発売中


【書籍】

書籍21巻 2024年5月2日発売予定。(次巻、21巻予定、作業中)

コミカライズ11巻 2023年12月1日に発売しました。

コミカライズ外伝 2巻 2024年3月5日発売しました。

文庫版10巻 2024年5月2日発売予定。(表紙のユナとサーニャのBIGアクリルスタンドプレゼントキャンペーン応募締め切り2024年8月20日、抽選で20名様にプレゼント)


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
>「お主は面倒ごとの神に愛されているんじゃろう」 「面倒ごとの神」の名は「タールグイ」でしょうか?(笑。  ユナはタールグイから和の国に行き大蛇と戦うことになり、タールグイからヘシュラーグの町に行き…
[良い点] 「まさか、氷竜の赤ちゃんを食べちゃったりは……」 「ユナお姉ちゃんなら、食べそうだから・・」 ユナならやりかねない・・ww 「ドラゴンのシッポ焼き」ってなんか美味しそうですよね~ 「竜種…
[一言] まぁユナは行く先々で色んなのと戦ってるからねぇwフィナの評価も妥当だなw
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