784 クマさん、氷竜と戦う その1
「氷竜、いつやってくるかな? 明日には来てくれるかな?」
まだ、昼過ぎだ。
今日来てくれてもいい。
でも、寝ている夜だけはやめてほしい。
睡眠を邪魔されるほど、いらつくことはない。フラグじゃないよ。
「落ち着け、そんなことは氷竜本人しか分からないことじゃ」
今まで、自分から倒しに行くことはあっても、いつ来るのか分からない待ちは初めてだ。
いつもは自分から敵がいる場所に向かって解決する。
わたしの性格も待つことより行動する。待つのは性に合わない。
「カガリさんは落ちついているね」
「妾がどれほどの長い間、大蛇の復活を見守っていたか忘れたのか」
「……」
「いつ復活するか分からない大蛇を見守ってきた。今度、氷竜が現れる時間なんて、妾にとっては何日でも、さほど変わらん」
長寿のカガリさんからしたら、そうだけど。
普通の人間にとって、数日間、なにもしないで待つのは辛い。まして、凶暴な氷竜を待つから、クリモニアや和の国でまったりすることもできない。
街に遊びに行こうにも凍っているし、なにもすることがない。
わたしたちができることは、ただ待つだけだ。
「じゃが、お主の言い分にも一理ある。大蛇の場合は、すぐに復活することはなかった。復活するのも兆しがあった。でも、いつ氷竜が来るかも知れぬから、酒が飲めない」
確かに、お酒は飲めないよね。
「ちなみに、お酒を飲むと」
「この体になってから、眠くなる」
お子様だ。
そもそも、お子様はお酒は飲んじゃダメだけど。
まあ、わたしもお酒は飲んだことはないから、自分の体質がお酒に弱いか、強いか知らないけど。
わたしとカガリさんはなにもすることがないので、氷竜対策の話をすることにした。
「それで、どうやって氷竜と戦うか、考えておるのか?」
「う~ん、ちょっと、思っていたよりも厄介かも」
「まあ、氷竜を相手にするんじゃから、厄介じゃろう」
「カガリさん、わたしがクマの形をした炎を氷竜に当てたでしょう。あのクマの炎、結構強力なんだけど、ダメージを与えられた気がしないんだよね」
クマの炎が当たったのに跡しか残っていなかった。
氷が炎で溶ける。
炎が氷の弱点であるのは間違いない。
でも、温度が低くなればなるほど、それも変わってくる。
小学生のとき、氷の勉強をしたときに絶対零度というものがあった。
温度が低くなればなるほど、溶かすのは難しくなる。さらに内部から冷え続けたら、簡単に溶かすことはできない。
氷竜の皮膚がどうなっているか分からないが、竜としての皮膚の強度問題もある。
竜と言うぐらいだから、皮膚だけでも堅そうだ。
「確かに、負傷しているようには見えなかったな。だが、問題はそれだけじゃないぞ。奴は空を飛んでいるんじゃぞ。妾は飛べるが、お主は飛べぬじゃろう」
クマは飛べない。
世界の常識だ。
まあ、狐も飛べないけど、妖狐だと飛べるイメージはある。
「あの氷竜は、攻撃をしたわたしに怒っているよね。だったら、わたしに向けて攻撃を仕掛けてくると思うから、攻撃のしようはあるよ」
ただ、攻撃がどこまで通じるかはやってみないと分からないところだ。
……数時間後。
氷竜対策する話もなくなり、くまゆるとくまきゅうに寄りかかりながら、まったりとおやつのポテトチップスを食べる。
美味しい。
たまに食べたくなるんだよね。
ポリポリ。
カガリさんもポテトチップスが気に入ったのか手が止まらない。
そんなまったりしながら、ポテトチップスを食べていると、くまゆるとくまきゅうが動き出す。
わたしとカガリさんは背もたれがなくなり、床に転がる。
「くまゆる、くまきゅう?」
くまゆるとくまきゅうは窓の外を見ている。
わたしは窓を開ける。
冷気が窓から部屋の中に入ってくる。
「なんじゃ!」
玄関から出ずに、窓から外に出る。
山頂にいる氷竜が大きく翼を広げている。
「ヒトノコヨ。ワガコニナニカアレバ、テキトミナス」(※人の子よ。我が子になにかあれば、敵と見なす)
氷竜は言いたいことだけ言うと、飛び立ってしまう。
氷竜がいた場所には青白い綺麗な卵が一つあった。
「大きいのう」
いつのまにかにカガリさんとくまゆるとくまきゅうが横にいた。
「それで、氷竜はどこに行ったのじゃ?」
わたしたちは氷竜が飛んで行った方向を見る。
太陽が海に沈みかけようとしている。
その太陽に向かって飛んでいる。
「冗談じゃろう」
カガリさんは氷竜が飛んでいく先を見ながら言う。
わたしにはなにも見えない。
目を凝らして見る。
点が二つ。徐々にそれがなんなのか見えてくる。
「氷竜が二体……」
「仲間を連れて来たのか?」
「だから、引き下がった?」
いや、卑怯でしょう。
二体の氷竜はこちらに向かってきている。
その二体の氷竜に山頂の氷竜が真っ直ぐに向かう。
氷竜はそれに気づいて戦いにいった?
先ほどの氷竜の卵になにかあれば敵になるって言葉は、卵を守れってこと?
信用されているのか、分からないけど、山頂から遠く離れた場所で戦われたら、わたしは戦うことはできない。今は行方を見るしかない。山頂にいた氷竜と新しい氷竜の戦いが始まる。
二対一の戦いになるかと思ったら、一体の氷竜がこちらに向かってきている。
山頂にいた氷竜が追いかけようとするが、一体の氷竜が邪魔をして、行かせない。
一体の氷竜が、山頂に向かってくる。
「来るぞ」
カガリさんが戦闘態勢に入る。
氷竜はわたしたちの前までやってくる。
大きな翼を広げ、ホバリングのように空中に止まる。
口を開く。
まずい!
氷竜の口から吹雪のような冷気が放出される。
わたしはカガリさん、くまゆる、くまきゅうの前に出ると同時に魔法を使う。
「嬢ちゃん!」
わたしたちの周りにある風魔法で作られた防壁が吹雪から守る。
間に合った。
周囲を見ると、地面は凍り、周囲を一瞬で凍らせていた。
卵は!?
後ろを見ると、大丈夫だった。
もし、卵が割れていたら、山頂の氷竜も敵に回すことになっていた。
卵の確認をしたわたしは氷竜に目を向ける。
ちょっとした油断が危険をもたらす。
氷竜の口から、怒りなのか、冷気が漏れている。
氷竜はホバリングをして、わたしたちを睨んでいる。
口からは冷気が漏れているが、攻撃を仕掛けてこない?
どうやら、連続で冷気を吐き出すことはできないみたいだ。
後手に回るのは避けたいので、今度はわたしのほうから攻撃を仕掛ける。
素材うんぬんを言っている場合ではないので、わたしはクマの炎を作りだし、放つ。
「いけ、クマ!」
氷竜は飛んでくるクマの炎を避ける。
「逃がさないよ」
やっぱり、火が苦手なのは間違いない。
ただ問題は、どこまでダメージを与えられるかだ。
クマの炎が氷竜を追いかける。
氷竜とクマの炎の追いかけっこが始まるが、わたしのクマの炎の操作外まで逃げられたら、追うことはできない。
氷竜がクマの炎から逃げる。そのときに背中を見せる。
あの背中の跡は……。
「ユナ、背中を見たか」
「うん、跡があったね。あれって、昨日わたしが魔法を放ったところだよね」
「間違いないじゃろう」
つまり、わたしたちの前にいる氷竜が昨日の氷竜ってことだ。
山頂にいた氷竜が戦っているのが応援に来た氷竜となる。
どっちが強いか知らないけど、わたしに恨みがある氷竜なのは間違いない。
だから、睨んでいたんだね。
やっぱり、昨日当てたクマの炎のダメージはないように見える。
氷竜は自分が優位である空からの攻撃を仕掛けてくる。
「やはり、知能が高いのう」
自分が有利な戦い方を知っている。
もしかすると、人と戦ったことがあるのかもしれない。
仲間を呼んでくるほどだ。
でも、氷竜だって、わたしたちに近づかなければ攻撃はできない。
遠距離攻撃である吹雪は、わたしたちを倒せないってことは理解しているはずだ。
それから、わたしたちと氷竜の本格的な戦いが始まった。
氷竜はわたしとカガリさんの火の攻撃を避けながら、攻撃を仕掛けてくる。
「妾が誘導する」
カガリさんは空に上がり、攻撃を仕掛ける。
氷竜とカガリさんの空中戦が始まる。
わたしも飛べれば、カガリさんに危険な役目をさせずにすんだけど、飛べるのはカガリさんだけだ。
カガリさんの小さい体が空中を舞う。氷竜の視界にわざと入り、自分に集中させる。氷竜も前を飛ぶカガリさんが邪魔と認識したのか、冷気を吐き、攻撃をするが、カガリさんは躱す。そして、自分をターゲットさせたカガリさんは空中を飛び回り、誘導を開始する。
カガリさんは大きく円を描くように飛び、氷竜も追いかける。
「嬢ちゃん!」
カガリさんはわたしのほうに向かって飛んでくる。そのカガリさんの後ろを追いかけるように氷竜がいる。
わたしの魔法は完成している。
無数の炎の子クマが回転をしている。
わたしは腕を突き出す。
「炎のクマのトルネード」
魔力で押し出すように発射する。
炎の子クマは回転しながら、カガリさんに向かう。
カガリさんを避け、炎のクマはカガリさんの後ろにいた氷竜に向かう。
氷竜は避けようとするが炎のクマは氷竜の翼に命中する。
だけど、クマの炎は翼に弾かれる。
命中したが接触しているのは一瞬だ。
跡が残るが、ダメージを与えられているようには見えない。
炎でダメージを与えられると思っていたけど、わたしが思っていたよりも、氷竜の体は冷たいのかもしれない。
さらに氷竜の皮膚が想像以上に強いのかもしれない。
氷竜との戦いが始まりました。
いろいろと氷と火について検索しましたが、氷が大きいと熱した鉄球でも全部は溶かすのはできないみたいですね。ゲームによっては氷の弱点は火もありますが、話として書くとなると難しいものです。
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※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。
一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。