アニメ番宣小説 その13
番宣小説です。
本日でアニメも終わる。
初めは、わたしを題材にしたアニメを作るなって思ったけど、終わりを迎えると思うと、少し寂しい。
1人で見ていたら、気持ちが暗くなったかもしれないが、今日もフィナとノアが来ている。
「お腹がいっぱいです。もう食べられません」
「たくさん、食べました」
ノアとフィナは満足げな表情をしている。
夕食は先週言ったとおりに海鮮鍋料理にした。
昆布出汁に、魚の切身に、貝、他にも野菜なども入れた。
こうやって好きなときに魚介類が食べられるようになって、本当によかった。苦労して、クラーケンを倒し、クリモニアとミリーラの町を繋ぎ、トンネルを掘ったかいがあったものだ。
洗い物をして、食後の休憩をすると、3人でお風呂に入る。
「今日で、みんなでお風呂に入るのも最後なんですね」
「……はい」
ノアとフィナは少し寂しそうな表情をする。
「アニメはないけど。また、泊まりに来ればいいよ」
「いいんですか?」
「いいよ。もちろん、ちゃんとクリフから許可をもらったらね」
「それでは、フィナ、また一緒にお泊まり会をしましょうね」
「はい」
二人は嬉しそうに微笑む。
毎週泊まりに来た2人が来なくなるのは、わたしも寂しい気持ちがある。だから、これからも2人が泊まってくれると嬉しい。
体と髪を洗い。さっぱりしたわたしたちは、アニメの最終回を見るために、テレビがあるわたしの部屋に移動する。
いつもどおりに、子熊化したくまゆるとくまきゅうを抱いたフィナとノアはテレビの前に座り、わたしはベッドに腰かける。
「始まりました」
テレビには、アンズが作ってくれた海鮮料理を食べるわたしが映る。そして、その料理の美味しさに感動して、アンズに「クリモニアに来てほしい」や「あなたがほしい」と言う。
「このセリフ、知っています。結婚するときに言う言葉です」
「そ、そうなんですか?」
「自分のところに来てほしいときに言う、男性の告白だと聞いたことがあります」
「よく、知っているね」
「ララから聞きました」
ララさん。ノアに何を教えているの。
でも、これはクリモニアで店を出してほしいって意味だよ。
そして、アニメでは、アトラさんがやって来て、今後のミリーラについて相談され、クリモニアの領主に手紙を届けて欲しいと頼まれる。
現実でも頼まれ、クリフとミレーヌさんをミリーラの町に連れていったのは懐かしい思いだ。
そして、クリモニアに帰ってきたわたしを、フィナが出迎えてくれる。
久しぶりに会えたわたしに、フィナは嬉しそうにしていたが、仕事があるからと聞かされると、寂しそうな表情をする。
「ああ、フィナが振られてしまいました」
「人聞きが悪い」
「ユナお姉ちゃんには、大切な仕事があるから仕方ないです」
フィナと別れたわたしは、クリフに会いに領主の家にやってくる。そこには久しぶりにノアが登場する。
「わたしです」
でも、すぐにララさんに捕まり、連れ去られていく。
現実でも、何度か見た光景だ。
「ああ、せっかく登場したのに、ララのバカ」
連れ去られるノアと別れ、わたしはクリフに会い、ミリーラの町の現状を報告する。
それを聞いたクリフだがエレゼント山脈があるため簡単に行くことができないから無理だと断る。
でも、ミリーラの町とクリモニアを繋ぐトンネルを掘ったことをクリフに伝える。
掘っては固め、掘っては固め、掘っては固め、掘っては固め、掘っては固めてトンネルを作った。
今、思い出しても、わたし、頑張ったと思うよ。
これも、ミリーラのため、何より、アンズにクリモニアに来てもらうため。クリモニアで、いつでも魚介類が食べられるようにするために頑張った。
そして、トンネルのことを知ったクリフはミレーヌさんを連れてミリーラの町に行くことになる。
ここでミレーヌさんが商業ギルドのギルドマスターってことを知ったんだよね。
なんでも、受付に座って、現場の様子を見るのが趣味だと言っていた。だから、土地代を安くしてくれたり、卵のことを領主のクリフに売らないでほしいという無茶ぶりを聞いてくれたり、お店のこともいろいろと優遇してくれることができたんだね。
今思うと、一般受付嬢じゃ、そんな権限はないよね。
クリフとミレーヌさんを乗せたくまゆるとくまきゅうはミリーラの町に出発する。
ちなみに、エンディングのキャストを見ると、ミレーヌさんとくまきゅうは同じ声優さんが演じているらしい。
つまり、自分に乗っていることになる。
そう考えると面白い組み合わせだ。
わたしたちを乗せたくまゆるとくまきゅうは、トンネルを通り、ミリーラの町にやってくる。そして、アトラさんと面会する。
これで、わたしの役目は終わったので、残りのことはアトラさんとクリフ、ミレーヌさんに押し付けようとして、この場を離れようとするが、3人に捕まり、仕事を押しつけようとする。
3人とも酷い。すでに盗賊やクラーケンを討伐し、トンネルまで掘って頑張ったのに、これ以上働かせるなんて。
そして、疲れ切ったわたしは、ようやくフィナに会いにやってくる。
きっと、見ていないところで、クリフとミレーヌさん、アトラさんの無茶ぶりに、わたしは頑張ったんだね。
そんな疲れているわたしだけど、フィナとの約束を守るため、ミリーラの町に誘う。
「ど、どうして、このとき、わたしを誘ってくれなかったんです!」
ノアが怒りだす。
どうしてだろう?
「たぶん、普通に、ノアを連れて行く事を考えていなかっただけ?」
「ユナさん、それはそれで酷いです」
ノアが落ち込んだ表情をする。
初めから連れて行く気がないほうが酷い気がするんだけど。
でも、アニメのフィナもシュリも一緒だと聞かされると、残念そうにする。
「フィナはユナさんと2人だけで、行きたかったんですね」
「そうなの?」
「うぅ、違います。そんなこと思っていません」
恥ずかしそうに言うが、アニメのわたしとフィナには距離感が見える。
アニメのフィナは寂しかったのかもしれない。
そして、フィナとシュリを連れて、ミリーラに向かう。
フィナとシュリはトンネルを見て、驚き、海を見て驚き、ミリーラの町に建てた大きなクマハウスを見て驚く。
「うぅ、フィナとシュリが羨ましいです」
そして、ミリーラの町を見学していると、わたしは町の人に囲まれてしまう。
そんなわたしを寂しそうに見るフィナ。
「フィナはユナさんを取られて寂しいんですね」
ノアがド直球で言う。
「わ、わたし、そんなこと思っていないです」
フィナは否定をしながらも頬を赤くする。
確かに、現実のフィナとシュリは楽しそうだった。
それは、アニメのわたし同様に気づかなかっただけで、フィナに寂しい思いをさせていたのかもしれない。
「フィナ、ごめんね」
「うぅ、謝らないでください。本当に違うんです」
そして、ミリーラの町の見学をしたわたしたちは、クリモニアに戻ってくる。
テレビにはクマハウスが映り、ノアがやってくる。
「本日、2回目の登場です」
ノアは本当に自分が登場すると嬉しそうにする。
クマハウスに向かってわたしを呼ぶが、出てきたのは血みどろのフィナだった。
「フィナが大怪我をしています!」
「これは、解体作業をしていたからだと思います」
フィナの言うとおりに手にはナイフがある。
だけど、お客様の対応する時は、ナイフを持ち歩くのはやめようね。
ノアは勉強を終わらせ、わたしに会いに来てくれたけど、居なかったので残念そうにする。
そして、寂しそうにするフィナを気にかけるノア。
フィナはわたしとの関係をノアに話す。
「フィナは、こんなことを思っていたんだね」
わたしは後ろからフィナの頭を撫でる。
「うぅ、思っていません!」
「そんなに恥ずかしそうに言わなくても。神様もわたしたちを元にアニメを作っているって言っているし」
「……」
フィナは黙り込む。
そして、ゆっくりと口を開く。
「でも、ユナお姉ちゃんがいなくなったりしたら、寂しいと思います」
フィナが本音を話してくれる。
元の世界でも、こんなに思われたことがないので、嬉しいものだ。
「どこにも行かないよ」
「……ユナお姉ちゃん」
だって、元の世界に戻ったとしても、わたしのアニメが放映されていたんだよ。もし、知り合いに見られていたと思うと、元の世界に帰れない。
いくら引きこもりでも、これは無理だよ。
買い物だって行くし、気分転換に外に出ることだってある。
うん、無理。
「わたしも、ユナさんが居なくなったら、寂しいです。泣きます」
「ノアもありがとう」
わたしのことを気にかけてくれる人がいるってことは嬉しいかぎりだ。
フィナを心配するノアだが、わたし宛ての手紙を渡して、帰っていく。
手紙はエレローラさんからで、フローラ様が会いたがっているってことだった。
わたしはフィナを誘うが、断られる。
「それにしても、このアニメのフィナは素直じゃありません。ユナさんにはっきりと、一緒にいたいと言えばいいのに」
「いや、現実のフィナも素直じゃないよ」
「うぅ、そんなことはありません」
フィナは否定するが、抱え込むことが多い。
母親が病気のときもゲンツさんに迷惑をかけないように黙って森に薬草を採りに行ったり、生活が苦しいこともあまり顔に出していなかった。
だから、アニメのフィナも心の中に抱え込んでしまうところは同じかもしれない。
アニメでは、わたしとフィナはすれ違っていく。
フィナは、しばらく解体の仕事は休んで、ゲンツさんのところで勉強すると言い出す。
フィナはわたしの役に立ちたいから、解体の技術を学ぼうとしている。
アニメを見ていたら分かるが、アニメのわたしは、そんなフィナの気持ちを分かっていない。
すれ違う恋愛漫画や小説のようだ。
見ているほうが恥ずかしくなってくる。
フィナも耳を真っ赤にして、恥ずかしそうにアニメを見ている。
アニメのわたしは、自分の気持ちが分からず、商業ギルドでアンズの店の準備を頼んだり、フィナの様子を見に行ったりする。
「フィナもユナさんも、面倒くさいですね」
ノアが身も蓋もないことを言う。
でも、わたしは友達がいなかったから、アニメのわたしの気持ちも分かる。
友達がいなかったから、どう接したらいいか分からないんだと思う。
もし、フィナがわたしの元から去ったら、引き留めるだろうか。上手に口にできるか、分からない。
だって、フィナはいつも、わたしの傍にいてくれたから。
そんなわたしのところにノアがやってくる。
そして、ノアは諭すように、わたしに説明をする。
まるで、長い人生を経験をしてきたように
最後はわたしの背中を押してくれる。
「このアニメのノア、ノアっぽくないね」
「はい。ノア様らしくないです」
「2人とも酷いです。わたしは心が広いんです」
わたしがノアに諭されているとき、フィナもゲンツさんに諭されていた。
お父さんっぽい。
そして、わたしとフィナはお互いの気持ちを確かめるために話し合う。
まるで百合アニメのようだ。
わたしとフィナがお互いの気持ちを確かめ合い。お互いが大切だという気持ちを確認し合う。
恥ずかしい。
そして、エンディングに入っていく。
「な、なんですか! これでは、まるで、ユナさんとフィナが恋人同士です」
ノアが叫ぶ。
「は、恥ずかしいです」
フィナじゃないけど、これは恥ずかしい。
「ユナさんは渡しませんよ」
いや、さっきは心が広いとか言っていたよね。
アニメのノアは大人っぽかったが、現実のノアは子供っぽく抱きついてくる。
いや、アニメのノアも負けませんと言っていたし、アニメのノアも現実のノアも一緒かもしれない。
この日の夜は、寝るまで、フィナは恥ずかしそうにし、ノアはわたしから離れようとはしなかった。
数日後、最後のアニメ公式サイトを見にいく。
新しいアニメ情報も流れることもないから、これで最後になるだろう。
だが、アニメ公式サイトにつなげた瞬間、信じられないものが目に入ってきた。
『TVアニメ2期制作決定』の文字とイラストだった。
ちょ、2期?
本当に? ドッキリ? わたしを騙そうとしている?
さらにグッズもいろいろと増えている。
オフィシャルファンブック発売決定もしている。
どうやら、わたしのアニメはまだ続くらしい。
番宣小説もこれで終了です。
お付き合いありがとうございました。
今年はいろいろと大変な時期でした。
アニメが始まり、コロナの中、アフレコを見学させていただいたりしました。
(せるげい先生のアフレコ漫画がパッシュ公式サイトにて、公開されていますので、そちらもよろしくお願いします)
一年間クマに付き合いしていただき、ありがとうございました。
ブックマーク、評価をしてくださった皆様。感想、レビューを書いてくださった皆様。ありがとうございました。
後半はあまり投稿ができず、申し訳ありませんでした。
今年は、これで最後ですが、来年も投稿していきますので、クマをよろしくお願いします。
最後に誤字脱字を報告してくださっている皆様には感謝の言葉もありません。
一部修正してないところもありますが、その辺りはご了承くださればと思います。
くまなの