物語には3種類ある
「つまりだね。なにを隠そう……いや隠しては居ないのだが、物語には3種類ある」
「ふむふむ」
「一つはこの先の展開に対する興味で引っ張る物語だ」
「ふむふむ」
「そして二つ目は展開ではなく、その中に出てくる情報に対する興味で引っ張る物語だ。つまり、サイエンスフィクションといったものだ。展開にも興味があるが、その中に出てくるガジェットや科学知識に対する興味で読み進める物だ」
「ふむふむ」
「そして三つ目は、登場人物に対する愛で読み進める物だ。これには高度な人物描写能力か、強力な設定のキャラクター創造が必要となる」
「ふむふむ」
「そして四つ目は、訳の分からない斬新さで興味を引く物だ。ストーリーの展開や中に描かれる情報への興味ではなく、小説構造そのものに対する興味で読み進める物だ」
「ふむふむ」
「そして五つ目は、とにかく読み終えた達成感を得るために読む物語だ。有名な作品やとにかく分厚い作品に多いな」
「ふむふむ」
「そして六つ目は、知人に勧められて義理でも読まなければならない物語だ。おもしろくもないのに酷評も出来ず、知人と話すときには神経をつかわなければならないのがつらいところだ」
「ふむふむ」
「そして七つ目は、評判やタイトルを当てにして新品で買ってしまったがつまらない物語だ。読まないともったいないが、読んでも時間の無駄としか思えない苦行が続く。つらいものだ」
「ふむふむ」
「そして八つ目は、最初に開いたページが大変おもしろそうだったので買ってみた物の、それ以外のところが予想以上につまらなかった物語だ。最初に開いたページだけを記憶にとどめて、そのまま本を閉じてしまった方が幸せだったと確信を持っていえるものだ」
「ふむふむ」
「そして九つ目は、全体的に大変おもしろいのだが、最後にあまりに『なにそれ』的な終わり方をしてしまう物語だ。読んでいる間は楽しいが、終わったときになぜか後悔してしまう類の物語だ」
「ふむふむ」
「そして九つ目は……」
「九つ目を二回いっているぞ」
「おっと。十個目は、読もうとしたのはいいがあまりに複雑な文章や古い文章で、読むことが大変すぎて途中で挫折した物語だ。後々、がんばって読めば良かったのか、それともそんな苦労して読んでも楽しくなかったと割り切るか、とにかく悩むことになるものだ」
「ふむふむ」
「そして11個目は、一冊完結だと思って読み始めたら実はとんでもない長編で、しかも続きを読もうかどうか悩むぎりぎりのレベルのおもしろさの物語だ。一冊完結なら最後まで読めるが、いざ長編となるとなかなか微妙な物だ」
「ふむふむ」
「そして12個目は、長編かと思って腰を据えて読み出したところで途中で終わっている物語だ。作者が死んだ場合もあれば、微妙な売れ行きで打ち切りになる場合もあるが、とにもかくにも途中で尻切れトンボになっていることに気がついて愕然とするものだ」
「ふむふむ」
「そして13個目は……え~っと、やめないか?」
「なにが?」
「くそ、やるのかよ!? え、え~っと、13個目は、比較的難解で読み始めるのに気力がいるが、入り込んでしまうとこの上もなく楽しめてしまう良作だ。ただし、難解なだけでつまらない物語も多いから、ある程度読んでみてから『やっぱりつまらない』と結論づけた時の悲しさはバカに出来ない」
「ふむふむ」
「そして14個目は、作者がへたなのか自分の読解能力が足りないのかわからないのだが、あまりに人物が薄っぺらくて読んでいて悲しくなる物語だ。どうしてこいつはこんなに浅はかでなにも考えないでパターン通りの行動をしているんだと、読みながらだんだんと怒りすら湧いてくるものだ」
「ふむふむ」
「そして15個目は……もう無理だ。さすがにもう思いつかないぞ。最初に三種類あるって言っただろ! なんで4つ目を言った時点でつっこんでくれないんだ」
「結構おもしろかったからな」
「まったく……」
このまま終わりがなく続いていく会話。
作品になりそうにないので、ここに投棄!
えいや!